TOP > 実技過去問ポイント解説 > 2023年2月1日実技 > 2023年6月11日実技part2

2023年6月11日実技part2

2023年6月11日実技part2

part2 問題文

●設 例●
大手企業で役員を務めているAさん(57歳)は、首都圏近郊のK市内の自宅で両親と同居していたが、5年前に母親が、2年前に父親が亡くなり、現在は妻(55歳)と子(27歳)との3人で暮らしている。
Aさんの自宅(木造2階建て、延べ面積180u、築30年)は、もともと祖父が所有していた甲土地(地積1,200u)上に父親が30年前に建てた入母屋造りの住宅である。現在も建物はしっかりしており、不具合は見られない。実業家として財を成した父親は、その当時から、敷地内に息子たちの家を建てて一緒に住むことを望んでいた。そのため、自宅は、北側に寄せて建築し、南側は庭として空けていた。
その後、父親は、二男Bさん(54歳)、三男Cさん(52歳)がそれぞれ結婚して所帯を持ったときに、甲土地上にそれぞれの家族が暮らすための住宅を建築した(Bさん自宅:木造2階建て、延べ面積116u、築24年、Cさん自宅:木造2階建て、延べ面積110u、築16年)。
2年前の父親の相続時、金融資産はAさん、Bさん、Cさんの3人で均等に分割し、甲土地は3人の共有とした。また、建物については、それぞれが住んでいた家屋を相続し、それぞれの名義に変更した。
Aさんは、先日、Bさん、Cさんから、「当面はこのまま住み続けたいと思っているが、将来的には転居も考えているため、売却しやすいように甲土地を分割しておいたほうがよいのではないか」と相談された。Aさんも、甲土地の共有状態については気になっており、3人で話し合った結果、下記の希望を満たすように甲土地について共有物の分割をすることにした。なお、3人とも、父親からの相続もあり、それなりの資金負担力を有している。

【甲土地の分割に関する希望】
1.甲土地内に道路を新設する。
2.ほぼ等価になるように3等分したい。
3.それぞれが取得した土地を将来2区画(整形地)に分割して使用できるようにしたい。
4.費用は3人で均等に負担する。

そこで、Aさんは、K市主催の不動産鑑定士の無料相談会に参加し、甲土地の実測図を見せながら相談したところ、担当の不動産鑑定士から「分割案1」を提示された。この分割であれば、分割後の3区画はほぼ等価になるとの説明であった。しかし、この案を持ち帰ってBさん、Cさんと検討したところ、Cさんの自宅が新設道路にはみ出ることがわかった。その後、Cさんから、自ら作成したという「分割案2」が提示された。Aさんは、甲土地をどのように分割するのが3人にとって望ましいのか、FPであるあなたにアドバイスを求めている。

(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)Aさんから直接聞いて確認する情報
(2)FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.あなたはAさんに「分割案1」と「分割案2」のどちらを勧めますか。その理由とともに教えてください。
3.甲土地上に建築基準法上の道路を新設するには、どのような方法がありますか。
4.共有物分割の手続と課税関係について教えてください。
5.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

【甲土地および建物現況図】



※分割案1による分割後の地積は、Aさん:420u、Bさん:323u、Cさん:323u
※分割案2による分割後の地積は、Aさん:420u、Bさん:325u、Cさん:319u

ページトップへ戻る

part2 ポイント解説

1. アドバイスに当たって必要な情報

(1) Aさんから直接聞いて確認する情報
甲土地は相続で取得しているが、相続により財産を取得した場合、その取得日・取得費を引き継ぐことから、当時の状況の詳細が分かる資料があるかという確認が必要。
また、現況では甲土地南側に車庫が設置されているが、分割後はそれぞれの土地に各自駐車スペースを設けることを想定しているかを確認しておきたい。さらに、新設道路は共有もしくは分筆するのか、分割案(2)とした場合にAさん取得分の土地は将来2区画(整形地)に分割して使用することが難しくなることを想定しているかも確認しておきたい。

(2) FP自身が調べて確認する情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地・建物の物理的状況を、実際に確認することが必要。
また、用途地域・地方自治体の都市計画等を確認し、今後の開発予定・環境変化を把握することが必要である。
本問の場合甲土地に道路を新設することになるが、K市の建築安全条例等における路地状部分の長さ・幅の規制を確認する。また、現況では上下水道やガス管等のインフラ設備をCさんと共有しており、分割後に新たな引き込み工事等が必要になる可能性があるため、現地確認や水道局・ガス会社への確認が重要となる。

2. 分割案(1)と分割案(2)のいずれかを勧める理由

分割案(2)の場合、Aさん取得分の土地は将来2区画(整形地)に分割しても、接道義務を果たした上で分割することが難しい。新設する私道に接して接道義務を果たすとすると、間口7mで奥行25mの利用しづらい細長い2区画となってしまい、売却額も低くなってしまう可能性が高い。
また、既に水道管やガス管が埋設されている土地上に新たに道路を新設する関係上、事故防止措置等で工事費用が割高になる可能性があると思われる。

分割案(1)の場合、将来的な2区画(整形地)への分割に問題はないが、Cさんの自宅が新設道路にはみ出てしまうため、移築工事が必要となる。また、現況では上下水道やガス管をAさんとCさんで共同利用しているが、土地分割後はAさんはCさんの土地を経由して水道管やガス管を利用させてもらうという状態となる。
兄弟間であれば大きな問題にはならないかも知れないが、将来それぞれ2区画(整形地)に分割して売却した際には土地の使用料といった問題が発生する可能性があり、またAさん取得分の土地を2区画(整形地)に分割すると、西側部分には水道管やガス管を新たに引き込む工事が必要となる。
従って、将来的なことを考量すれば道路新設時に水道管やガス管を新たにAさん自宅部分に引き込む工事を実施した方が良いと思われる。

よって、土地分割の費用は3人で均等に負担するとしているが、Cさん宅の移築費用(工事中の一時転居費用含む)やAさんの自宅への水道・ガス管の引き込み工事の費用も含めて等分した上で、分割案(1)を採用することを提案する。

3. 土地上に建築基準法上の道路を新設する方法

都市計画区域内・準都市計画区域内では、建築物の敷地は、建築基準法に規定する幅員4m以上の道路に2m以上接している必要がある(接道義務)ため、甲土地の分割に当たっては私道を新設することになる。
私道を新たに造って建築基準法上の道路とする場合、政令の基準に適合する幅員4m以上の道とし、特定行政庁から位置指定を受けることで位置指定道路として建築基準法上の道路とすることが可能であるが、市街化区域で開発行為をする場合、1,000u以上の開発(三大都市圏の一定区域は500u以上)では、都市計画法に定める都道府県知事等の開発許可が必要

本問の場合、接道義務の関係上私道を造る必要があるAさん取得分の地積と私道部分の合計で500u以上となるため、道路位置指定の手続きではなく、都市計画法に定める都道府県知事等の開発許可が必要となると思われる。なお、道路法・都市計画法等により新設・変更計画がある道路の場合、建築基準法上の道路とするには、2年以内に事業執行される予定として特定行政庁により指定されることが必要。

4. 共有物分割の手続と課税関係

一筆の土地を現物分割する場合、まず土地を法務局で分筆登記する。
分筆された土地は各共有持分者による共有のままのため、それぞれ持分全部移転登記することで、それぞれ単独所有の土地二筆とすることができる。
※つまり、文筆した後もそれぞれの土地にお互いの所有権(持分)が残ったままなので、持分全部移転登記でお互いの所有権(持分)を解消することが必要。

また、現物分割の場合、共有持分に応じて現物分割すると、資産の譲渡や贈与に該当せず、課税されない(土地のように、効用を一にする一個の共有資産の場合)。
共有持分に応じた分割として、土地であれば面積を基準にした分割だけでなく、価額に応じて分割面積を定めても、面積算定が合理的なものであれば、認められる

本問の場合各自の共有分は明示されていないが、均等であったとした場合、分割後の各自の取得部分の面積は異なるものの、奥行きのある土地となるAさんの土地がBさん・Cさんの取得分と相応の価額であれば持分に応じた分割とされると思われる。

5. 関与すべき専門職業家

甲土地を分割する際における、正確な測量と境界の明示および登記については土地家屋調査士測量結果に基づく適正な不動産価格の算定は、不動産鑑定士土地の所有権移転登記等については司法書士、不動産所得の課税上の取扱いに関する具体的な税務相談については税理士、将来2区画に分割使用する際の不動産売買の媒介等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、宅地建物取引士が適当。
また、本問では土地建物の権利交渉が重要な要素であるため、法律判断に基づく交渉代行については弁護士が適当。

ページトップへ戻る

FP対策講座

<FP対策通信講座>

●LECのFP講座(キーワード検索欄で「1級」と検索) ⇒ FP(ファイナンシャル・プランナー)サイトはこちら

●1級FP技能士(学科試験対策)のWEB講座 ⇒ 1級FP技能士資格対策講座(資格対策ドットコム)

●通勤中に音声学習するなら ⇒ FP 通勤講座

●社労士・宅建・中小企業診断士等も受けるなら ⇒ 月額定額サービス【ウケホーダイ】

ページトップへ戻る

Sponsored Link

実施サービス

Sponsored Link

メインメニュー

Sponsored Link

サイト内検索

Sponsored Link

Copyright(C) 1級FP過去問解説 All Rights Reserved.