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2023年9月23日実技part1

2023年9月23日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(75歳)は、地方中核都市で機械部品製造業を営むX株式会社(非上場会社)の代表取締役社長である。X社は、47年前にAさんと取締役副社長である友人のEさん(75歳)が共同で設立した会社であり、Aさんが70%、Eさんが30%のX社株式を所有している。

【事業承継について】
X社では、Aさんの息子であるCさん(47歳)が管理本部長を務め、Eさんの息子であるFさん(46歳)が生産本部長を務めている。いずれも社内外からの信頼が厚く、十分に経験を積んだことから、AさんとEさんは話し合い、3年後の創立50周年を機に、それぞれの子に地位と所有するX社株式を譲り、退任することを決めた。CさんとFさんは、幼少の頃より家族同然の付き合いで、関係は良好であり、それぞれの親の立場を承継することに納得し
ている。
AさんとEさんは、所有するX社株式の移転をどのように進めればよいか、その手法や課税関係について確認しておきたいと思っている。
また、Aさんは、それぞれの子への事業承継が最善と思っているが、昨今、中小企業の事業承継においてよく耳にするM&Aについても、1つの選択肢として検討しておきたいと考えている。
Aさんは、X社の経営方針として、相応の利益確保を優先するため、役員報酬は抑えめにし、利益が出た場合は配当金により還元してきた。また、この間、経営状態は比較的良好であるが、目下のところ、不良在庫の処理と慢性的な労働者不足に苦慮している。先日、金融機関担当者から、人材確保にあたって福利厚生の一環として「iDeCo+」(イデコプラス)の導入を提案され、Aさんはその仕組みについて知りたいと思っている。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
1.現預金 : 8,000万円(役員退職金は考慮していない)
2.X社株式 : 5,600万円
3.自宅
(1)土地(200u) : 5,000万円
(2)建物(築40年) : 2,000万円
合計 : 2億600万円
※Aさんの相続に係る相続税額は、約2,900万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

【X社の概要】
資本金 :1,000万円
会社規模:大会社
従業員数:70人
配当  :毎期500円/株
売上高 :15億円
経常利益:3,000万円
純資産 :1億6,000万円
株主構成(発行済株式総数2万株):Aさん70%、Eさん30%
株式の相続税評価額:
類似業種比準価額4,000円/株
純資産価額8,000円/株
配当還元価額5,000円/株

【Aさんの家族構成】
妻Bさん(73歳) :専業主婦。Aさんと自宅で同居している。
長男Cさん(47歳):X社の管理本部長。妻と子の3人で持家に住んでいる。
長女Dさん(45歳):専業主婦。会社員の夫と子の3人で夫所有の持家に住んでいる。

【親族関係図】

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part1 ポイント解説

1. 相続税・所得税の軽減対策

(1) 生命保険・金庫株の活用
(2) 役員退職金支払い(法人税の低減、退職所得控除による所得税低減効果も有り)
(3) 自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
(4) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度の活用

本問では相続税は配偶者の税額軽減・小規模宅地の特例適用前で2,900万円であり、納税資金の確保にそれほど必要性はないと思われるが、基本的な対策として、上記の方法の活用は検討すべきである。
特に不良在庫を処分することで、自社株式の評価要素の1つである、純資産の引下げにつながるため、自社株式の評価額の引下げ効果がある。

2. 遺産分割対策・資産承継対策

(1) 遺言の作成
(2) 遺留分に関する民法の特例の活用
(3) 相続時精算課税制度の活用
(4) 孫への教育資金贈与の非課税措置の検討

3. 事業承継税制の特例の活用の留意点

X社株式については、AさんからCさんへの承継については非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度の活用により、全株式を税負担なく移転可能(納税猶予割合100%)

ただし、非上場株式等についての贈与税の納税猶予・免除を受けるには、会社・後継者(経営承継受贈者)それぞれの適用要件を満たした上で2024年3月31日までに特例承継計画を都道府県知事に提出して確認を受け、経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の認定を受けることが必要(株式の贈与は2027年12月31日までに実施)。
なお、後継者は贈与時には役員就任期間が3年以上、相続発生時に役員であることが必要。

本問の場合、役員就任期間の要件を満たすことや特例承継計画の提出期限まで時間が無いことから、早めに特例適用の準備を進めていくことを提案する。ただし、本特例はたびたび期限延長もされているため、法改正の情報収集も同時に実施していくことも提案する。

また、雇用の8割以上を5年間平均で維持することが必要(下回ると理由を記載した報告書の提出が必要)であり、税務署への特例適用の継続届出書の未提出等により納税猶予取消となった場合、猶予されている税額と利子税を納付する必要がある。
本問では慢性的な労働者不足に苦慮しており、特例適用後の退職や新規採用の見込み数を十分に検討しておくことも必要。

4. 同族株主以外の株主の株式承継

事業承継税制の特例は贈与者や受贈者が会社の代表者であることが要件の1つとなっており、恐らく代表権が無いEさんとFさんは適用対象外となると思われる。そのため、まずは後継者であるFさんを役員に就任させ、利益還元方法を配当金から役員報酬の増額に切り替え、後継者が株式を買い取れるだけの資力を蓄積できるようにしておくことが必要である。

また、同族会社の同族株主以外の株主等の場合は、特例的評価方式として、会社規模に関わらず配当還元方式で評価されることから、Fさんの株式も配当還元価額で評価することになる。
配当還元方式による株価算定の際、記念配当や特別配当は除かれるため、配当金については記念配当に切り替えることで配当還元価額を抑えることが可能。

なお、個人が非上場株式を他者に譲渡した場合、株式等の譲渡所得として20.315%(復興特別所得税含む)の申告分離課税の対象となる。

5. M&Aのメリット・デメリットと課税関係

M&Aの場合、株式売却による創業者利益を享受できるメリットがあるが、現時点での会社や事業の価値の精査(デューデリジェンス)や適切な売却先の選定など、必要な事務負担も多くなるデメリットがある。

株式譲渡によるM&Aでは、譲渡代金から必要経費を差し引いた額が株主個人の譲渡所得として、税率20.315%の申告分離課税となる。ただし、M&Aにおける譲渡価額は、将来の収益見込みや信用力等を評価する「のれん(営業権)」が上乗せされるため、一般的に相続税評価額より高くなる

6.iDeco+(イデコプラス)の仕組み

確定拠出年金の中小事業主掛金納付制度「iDeCo+」(イデコプラス)により、企業型年金や確定給付企業年金を実施していない従業員数100人以下の中小企業は、従業員の個人型年金の掛金に、事業主が追加して拠出可能となる。
中小企業にとっては、事業主分の掛金は企業側が決定・変更できるため、業績の状況によって掛金負担を柔軟に調整しながら、従業員の老後資金を準備することができるのがメリットである。

また、「iDeCo+(イデコプラス)」における事業主掛金は、加入者側では拠出時点では課税されず、払出時に退職所得や公的年金等の雑所得の収入金額となるが、事業主側では企業が負担する支出として、全額損金算入可能

●FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、法令の遵守(コンプライアンスの徹底)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)、能力の啓発の6つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・資産承継対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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