2024年2月18日実技part2
2024年2月18日実技part2
part2 問題文
●設 例●
Aさん(65歳)と弟Bさん(63歳)は、父Cさんから引き継いだS市内のディスカウントストア(甲土地600u、甲建物300u、私鉄急行停車駅であるS駅から徒歩5分)を共同で経営している。甲建物は、Aさんが代表取締役、弟Bさんが専務取締役を務める同族会社(X社、株式持分はAさん50%、弟Bさん50%)が所有している。
X社は、甲建物が竣工した1982年に法人登記され、当時の甲土地所有者である父Cさんと甲土地の賃貸借契約を締結し、「土地の無償返還に関する届出書」を所轄税務署に提出した。地代は公租公課と同額を現在に至るまで支払っている。父Cさんは10年前に亡くなり、現在、Aさんと弟Bさんが各2分の1の持分で甲土地を共有している。
X社のディスカウントストア事業は、5年前、近隣の工場跡地に大型の競合店が進出した影響で売上が低迷し、直近3年間は赤字経営となっている。Aさんと弟Bさんは、今後の収支改善は厳しく、甲建物が老朽化し始めていることもあり、内部留保金約5,000万円があるうちに安定収益が得られる事業に切り替えたいと考え、地元の不動産会社Y社に相談した。Y社からは、立地的に甲土地は商業性がさほどなく、新たな店舗出店者は見込みづらいため、賃貸アパートの企画が一番有効であると下記の提案を受けた。
【Y社からの提案内容】
近年、単身者向け住戸(専有面積20u前後)の空室が増加しており、ファミリー向け住戸(専有面積40〜50u)のほうが需要がある。また、3階建ては重量鉄骨造となって建築費が軽量鉄骨造よりも20%程度高くなるので、軽量鉄骨造2階建て、延べ面積720u、総戸数16戸(専有面積平均45u)、建築費総額1億8,000万円(25万円/u)の賃貸アパート建築を提案したい。このプランで満室時月額賃料176万円(11万円×16室)を見込めると考えている。
Aさんは、Y社からの提案内容は魅力的であるが、1億8,000万円の建築費にためらいを感じている。建築費の大半は銀行からの借入れで賄う予定だが、借入額が半分程度になればこの提案を前向きに考えたいと思っている。また、甲土地について、このまま弟Bさんとの共有状態を続けていてよいのか気になっている。Y社によれば、周辺相場から、100u程度の整形地であれば戸建て住宅用地として2,700万円で取引可能とのことである。
このような状況のもと、AさんからFPであるあなたに相談があった。
(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)Aさんから直接聞いて確認する情報
(2)FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.X社は「土地の無償返還に関する届出書」を所轄税務署に提出していますが、この手続にはどのような意味がありますか。
3.甲土地の有効活用にあたって、Aさんが希望する建築費借入額(Y社提案額の半分程度)に抑えるためには、どのような方法が考えられますか。また、Aさん、弟Bさんの共有状態を解消するために、どのようなアドバイスをしますか。
4.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。
【甲土地・甲建物の概要】
※第一種住居地域、指定建蔽率60%、指定容積率150%、準防火地域
part2 ポイント解説
1. アドバイスに当たって必要な情報
(1) Aさんから直接聞いて確認する情報
甲土地・建物は相続で取得しているが、相続により財産を取得した場合、その取得日・取得費を引き継ぐことから、当時の状況の詳細が分かる資料があるかという確認が必要。
また、提案されている土地活用はこれまでのディスカウントストア事業とは大きく異なるものであるため、大規模な不動産投資の経験の有無や、希望する利回り、引き受け可能なリスクについて、確認することが必要。
(2) FP自身が調べて確認する情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地・建物の物理的状況を、実際に確認することが必要。
また、用途地域・地方自治体の都市計画等を確認し、今後の開発予定・環境変化を把握することが必要である。
本問の場合、特に土地活用による安定的な収益を得ることを希望していることから、土地活用方法やY社の評判等についてあらかじめ地元の不動産業者と接触して周辺事情を把握しておくことが必要。
2. 土地の無償返還に関する届出書に関する説明
法人が役員保有の土地を建物の所有を目的として賃借する場合、法人から役員へ権利金や相当の地代の支払がないときでも(通常の地代のみの支払いを含む)、「土地の無償返還に関する届出書」を提出すれば、法人側では借地権の認定課税がないことから、相続税評価額も自用地として評価される。
また、地代の支払いが固定資産税程度であれば、土地の使用貸借とみなされるため、本問のように公租公課程度の支払いであれば使用貸借とされるものの、土地の無償返還に関する届出書が提出されているため、借地権の認定課税は回避できると思われる。
なお、権利金や相当の地代を支払う賃貸借契約では、貸宅地について「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている場合は、借地権割合を20%として、その土地の相続税評価額を算出(自用地価額×80%)することになる。
3. 建築費借入額を半分に抑える方法と共有状態解消のためのアドバイス
◆借入額を半分に抑える方法
100u程度の整形地であれば戸建て住宅用地として2,700万円で取引可能ということなので、甲土地の半分程度(300u)を生計地として売却すると、残りの面積で賃貸アパート建築を進めれば建築規模もより小さく建築費用も抑えられると思われるため、借り入れ金額も半分程度に抑えられる可能性がある。
ただし、当然月額賃料も規模減少に伴って少なくなると思われるため、戸建て住宅用地の売却代金を別途資産運用する等の対策も必要となる。
◆共有状態解消のためのアドバイス
共有不動産の場合、持分だけの売却や抵当権設定は可能であり、その不動産全体の売却等には共有者全員の合意が必要である。
従って現状の共有状態を継続した場合、共有持分の第三者への売却が発生したり、共有者全員の合意が得られずに土地の有効活用が進まないといったトラブルが発生する可能性がある。また、共有物を使用する共有者は、他の共有者に対し使用の対価を支払う義務を負う(無償使用の合意がある場合の除く)ことにも注意が必要。
以上のことから、不動産の共有状態は解消しておくことが望ましい。
一筆の土地を現物分割する場合、まず土地を法務局で分筆登記する。
分筆された土地は各共有持分者による共有のままのため、それぞれ持分全部移転登記することで、それぞれ単独所有の土地二筆とすることができる。
※つまり、分筆した後もそれぞれの土地にお互いの所有権(持分)が残ったままなので、持分全部移転登記でお互いの所有権(持分)を解消することが必要。
また、現物分割の場合、共有持分に応じて現物分割すると、資産の譲渡や贈与に該当せず、課税されない(土地のように、効用を一にする一個の共有資産の場合)。
共有持分に応じた分割として、土地であれば面積を基準にした分割だけでなく、価額に応じて分割面積を定めても、面積算定が合理的なものであれば、認められる。
共有不動産の分割方法には、ほかにも区分建物建設に伴う等価交換や底地と借地権の共同売却といった方法もあり、例えば甲土地の半分を売却した代金は等分し、残った土地のアパートを同室数ずつ保有する方法も考えられるため、甲土地の活用法に応じて選択するよう提案するべきと思われる。
4. 関与すべき専門職業家
甲土地の有効活用における、正確な測量と境界の明示および登記については土地家屋調査士、測量結果に基づく適正な不動産価格・地代、賃料の算定は、不動産鑑定士、課税上の取扱いに関する具体的な税務相談については税理士、不動産賃貸・売買の媒介等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、宅地建物取引士が適当。
◆この試験問題の公開体験談
【【note】りりぃ FP1級 実技 (2024.2.18 partII)
【note】fullmoon FP1級実技試験。2024年2月18日パート2
【note】ハイボールおじさん FP1級実技試験PART2
【note】蜜柑 FP1級実技 体験記(2024年2月18日 Part2)
【note】ヒヨコロ FP1級実技試験体験記(Part2 2024.2.18)
【note】かこ FP1級実技PART2体験記(2024年2月18日)
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