問12 2024年5月基礎
問12 問題文
居住者であるAさん(65歳)は、2023年中に下記の生命保険の年金および解約返戻金を受け取った。当該生命保険の課税関係に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、Aさんは給与所得者ではなく、Aさんが2023年中に受け取った下記の年金および解約返戻金以外の収入は、老齢基礎年金および老齢厚生年金の合計350万円のみである。
(1)個人年金保険(10年確定年金)の年金
契約年月日 : 1992年4月1日
契約者(=保険料負担者) : Aさん
年金受取人 : Aさん
年金額(年額) : 100万円
正味払込保険料(累計額) : 450万円
(2)一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金
契約年月日 : 2016年10月1日
契約者(=保険料負担者) : Aさん
解約返戻金額 : 1,100万円
正味払込保険料 : 1,000万円
(3)一時払外貨建養老保険の解約返戻金
契約年月日 : 2020年10月1日
契約者(=保険料負担者) : Aさん
解約返戻金額 : 700万円
正味払込保険料 : 500万円
1) Aさんが個人年金保険(10年確定年金)から受け取る年金は、年金額から当該年金額に対応する正味払込保険料の額を控除した金額に20.315%の税率を乗じて計算した金額に相当する税額が源泉徴収等される。
2) Aさんが一時払変額個人年金保険(10年確定年金)を解約して受け取った解約返戻金は、一時所得の収入金額として総合課税の対象となる。
3) Aさんが一時払外貨建養老保険を解約して受け取った解約返戻金は、金融類似商品として源泉分離課税の対象となる。
4) Aさんは、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円を超えるため、2023年分の所得税について確定申告をしなければならない。
問12 解答・解説
個人の生命保険の税務に関する問題です。
1) は、不適切。契約者と年金受取人が同じである個人年金の場合、受け取った年金額から対応する払込保険料を差し引いた額が25万円以上になると、所得税と復興特別所得税として10.21%が源泉徴収されます。
(契約者と年金受取人が異なる場合は、贈与税の課税対象となるため、年金支払時に所得税は源泉徴収されません。)
2) は、適切。一時払の養老保険や個人年金保険・変額個人年金などを契約から5年以内に解約した場合、金融類似商品として受取差益に20.315%の源泉分離課税となります(復興特別所得税を含む)。
本問の場合、一時払変額個人年金保険は2016年の契約から5年超の期間を経ているため、解約返戻金は、通常の保険と同様に一時所得として総合課税の対象です。
3) は、適切。一時払の養老保険や個人年金保険・変額個人年金などを契約から5年以内に解約した場合、金融類似商品として受取差益に20.315%の源泉分離課税となります。
本問の場合、一時払外貨建養老保険は2020年の契約から5年未満しか経過していないため、解約返戻金は金融類似商品として受取差益に20.315%の源泉分離課税の対象です。
4) は、適切。公的年金の年収400万円以下で、公的年金の雑所得以外の所得金額が20万円以下の場合は、確定申告不要です。
Aさんの年金収入は350万円ですが、受け取った保険金等の収支を計算すると以下の通りです。
(1)個人年金保険(10年確定年金)の年金は、年金額が100万円で、対応する払込保険料が累計払込保険料450万円÷10年=45万円ですから、差し引き55万円。
(2)一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金は、解約返戻金1,100万円−払込保険料1,000万円=100万円となり、契約から5年超の期間を経ているため、解約返戻金は、通常の保険と同様に一時所得として総合課税の対象。
(3)一時払外貨建養老保険の解約返戻金は、解約返戻金700万円−払込保険料500万円=200万円となりますが、契約から5年未満しか経過していないため、解約返戻金は金融類似商品として受取差益に20.315%の源泉分離課税の対象となることから申告不要。
よって(1)の雑所得と(2)の一時所得で確定申告の要否を判断しますが、一時所得は総所得金額を計算する際に、その2分の1が合算対象のため、確定申告の要否も2分の1が20万円を超えるかで判断します。
よって雑所得55万円と、一時所得100万円×1/2=50万円で20万円超となるため、Aさんは確定申告が必要です。
よって正解は、1
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