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2023年6月17日実技part2

2023年6月17日実技part2

part2 問題文

●設 例●
上場企業に勤務しているAさん(58歳)は、大都市圏近郊のS市内にある甲土地(地積255u)と甲土地の北側に隣接する乙土地(地積120u)を所有し、甲土地上の自宅(甲建物)で妻Bさん(56歳)、長女Cさん(28歳)と暮らしている。Aさんは、自宅で両親と同居していたが、8年前に母親が、5年前に父親が亡くなり、1人息子であったAさんがこれらの土地建物を相続した。
乙土地は、月極駐車場として利用しているが、もともとは借地人が飲食店兼居宅の敷地として利用していた。10年前にその借地人から「自分もいい年になったので故郷に戻ろうと思っている。借地権を買い取ってもらえないか」と要望され、父親が借地権を3,000万円で買い取った経緯がある。
現在、乙土地は、その全部が都市計画道路予定地として指定されている(4年前に都市計画事業決定)。先月、買収を担当するS市建設局街路課の担当者から、「乙土地の買収価格は9,000万円です。来年3月までの予算で対応したいので協力いただきたい」との申入れを受けた。Aさんは、乙土地の売却資金で新たな不動産投資をしたいと考え、地元で評判のよいX社に相談したところ、自宅の近所にある賃貸アパート(価格8,000万円、地積120u、延べ面積140u、築7年、1Kタイプ6戸、満室時ネット利回り5.5%)を紹介された。この賃貸アパートはX社が管理している物件で、所有者に相続が起こり、相続税の支払のために売却予定とのことである。Aさんは、十分な投資利回りが期待できると考え、購入を前向きに検討したいと思っている。

一方、甲土地・乙土地の西側に隣接する丙土地(更地)は、以前は食品スーパーが営業していたが、現在は不動産会社Y社が開発用地として所有している。先日、Y社の開発担当者がAさん宅を訪れ、等価交換で共同事業に参加してほしいと申し入れてきた。Y社は、丙−1土地部分に甲土地が加わることを前提に、ファミリータイプマンション総戸数38戸を企画しており、「甲土地の評価額は1億9,000万円で、Aさんには専有床合計290uを渡せます。また、Aさんが希望すれば、最上階に100u程度の部屋をAさん居宅として作ることも可能です」とのことである。
Aさんは、甲建物(延べ面積170u)が築45年と古くなり、建て替えようと思っていた矢先であり、見晴らしのよいマンションの上階に暮らすのも悪くないと考えている。
このような状況のもと、AさんからFPであるあなたに相談があった。

(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)Aさんから直接聞いて確認する情報
(2)FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.都市計画道路事業による乙土地の売却資金で紹介された賃貸アパートを購入する場合、譲渡所得の金額の計算上、どのような特例の適用が考えられますか。
3.Y社が甲土地を取り込んで、マンション共同開発を望む理由は何でしょうか。また、Y社による甲土地の評価が適正かどうか、どのように判断したらよいでしょうか。
4.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

【甲土地、乙土地、丙土地の概要】

※近隣商業地域、指定建蔽率80%、指定容積率400%、準防火地域
※都市計画道路の事業決定
・市道の拡幅予定幅7m→15m、南側に8m拡幅予定
・乙土地の買取価格(対価補償金):9,000万円
・特定行政庁が2年以内に事業が執行されるものとして指定した建築基準法第42条第1項第4号の道路(道路予定部分をあらかじめ道路としてみなしてくれる)

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part2 ポイント解説

1. アドバイスに当たって必要な情報

(1) Aさんから直接聞いて確認する情報
Aさんは相続で甲土地・乙土地を取得しているが、大規模な不動産投資の経験の有無や、希望する利回り、引き受け可能なリスクについて、確認することが必要。
特に、都市計画道路として収用される場合には、当初見込んだ利回りに届かない可能性もあるため、事前の確認が重要となる。
また、甲土地・乙土地の取得費や取得日が分かる資料の有無や、土地に関する書類・図面の有無(甲土地・乙土地の境界確認の参考資料)も確認したい。

(2) FP自身が調べて確認する情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地・建物の物理的状況を、実際に確認することが必要。
また、用途地域・地方自治体の都市計画等を確認し、今後の開発予定・環境変化を把握することが必要である。
本件の場合、特に甲土地周辺の今後の開発予定・環境変化について、不動産業者等の協力を仰ぎながら確認することが必要。

2. 乙土地の売却資金で賃貸アパートを購入する場合の譲渡所得への特例適用

「収用に伴う譲渡課税の特例」は、公共事業などの収用により資産を譲渡した場合、その補償金で代替資産を購入したときには、譲渡した資産の取得費を代替資産に引き継ぎ、将来に課税を繰り延べる(課税繰延べの特例)ことや、譲渡所得の計算の際、補償金から特別控除5,000万円を差し引く(5,000万円の特別控除)ことができる特例。

<特例適用のポイント>
課税繰延べの特例の適用を受けるためには、原則として収用等のあった日から2年以内に代替資産を取得することが必要(ただし、収用等のあった日より前に先行取得したものであっても、一定の要件に該当すれば代替資産として認められる。)。
5,000万円特別控除の特例の適用を受けるためには、公共事業施行者から買取り等の申出を受けた者(その相続人を含む)が、申出があった日から原則6カ月以内に土地建物等を譲渡することが必要。
「課税繰延べの特例」と「5,000万円特別控除の特例」は選択適用(併用不可)。

3. Y社が甲土地を取り込んでマンション共同開発を望む理由と甲土地評価の判断

Y社が丙-1土地の隣地である甲土地を買収する際にあたって、どちらも同じ道路に面しており、容積率の緩和や利用しやすい整形地の取得といった理由は見受けられない。このため、丙-2土地の収用により得た補償金を他の不動産開発資金に投じるよりも、丙-1土地の隣地である甲土地を買収することで、より大規模なマンション開発を実施した方が資金効率がよいと判断したと思われる(別の土地で不動産開発すると、新たに共同部分の設備費用が必要となるが、隣地買収で大規模マンションを建築するのであれば丙-2土地のみで開発する場合と費用は大きく変わらない)。

また、Y社による甲土地の評価については、前面道路の路線価図600Cであることから、路線価は600千円×255u=1億5,300万円となる。相続税路線価は、公示価格の約80%程度が目安であるため、公示地価ベースであれば1億5,300万円÷80%=1億9,125万円となる。
また、乙土地の路線価は600千円×120u=7,200万円であり、公示地価ベースであれば7,200万円÷80%=9,000万円であるため、S市の対価補償金に一致する。従って、Y社の甲土地評価も公示地価ベースであると思われる。

甲土地を更地で売却する場合は甲建物の取壊し費用が必要となることから、Y社の評価額1億9,000万円は妥当なものと思われる。

4. 関与すべき専門職業家

甲土地と乙土地を売却する際における、正確な測量と境界の明示および登記については土地家屋調査士測量結果に基づく適正な不動産価格の算定は、不動産鑑定士土地の所有権移転登記等については司法書士、不動産取引上の課税上の取扱いに関する具体的な税務相談については税理士、不動産売買の媒介等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、宅地建物取引士が適当。

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