2010年1月30日実技part2
2010年1月30日実技part2
part2 問題文
●設
例●
元会社員のAさん(75歳)は、先代から引き継いだ都市近郊の土地(自宅敷地、貸宅地)を保有している。Aさんは10年前に妻を亡くし、現在は長男家族と同居している。他に子どもが2人いるが、いずれも独立した生計を営んでいる。Aさんには、公的年金と貸宅地の地代収入があり、日常生活費は比較的余裕がある。
貸宅地はいずれも当初、30年以上前に契約した賃貸借契約で、その契約以来、書面による契約更新は一度も行っていない。また、地代は当初の面積で収受している。貸宅地間の境界は必ずしも明確ではないが、これまで特に問題がなかったので測量は行っていない。
この度、貸宅地g(契約面積330u)の借地人Gさん(67歳)から、「歯科医をしている息子が今度この場所で医院を開業したいので家屋を建て直したい」という申し出があった。
また、先月には、貸宅地h(契約面積165u)の借地人Hさん(78歳)から、「夫を亡くして一人暮らしをしているが、高齢のため娘と同居したい。ついては、借地権を知り合いの人に売ることにしたので承諾してほしい」との申し出を受けている。
Aさんは、そろそろ自身の相続への準備を始めたいと考えていた。相続税についてはすでに知り合いの税理士に試算してもらっており、現時点で、Aさんの遺産総額は手元の現預金5,000万円と不動産の合計で約4億5,000万円、相続税額はおよそ1億円とのことであった。
Aさんはこのままでは相続税の納税資金が不足しているので何か対策を考えたいと思っている。場合によっては、物納制度も利用したいと思っているが、制度に関する知識が乏しく、事前にどのような準備を行えばよいかもわからない。
〈Aさんの相談事項〉
1.相続対策も考えたとき、Gさん・Hさんの申し出にどのように応えたらよいか。
2.相続税の物納制度を利用するための要件を教えてほしい。
3.土地を物納に充てると仮定した場合、事前にどのような準備が必要か。
〈Aさんの不動産〉(下図参照)
(1)
貸宅地は現在8カ所で、借主はそれぞれ建物(居住用)を建てている(旧法による借地)。
(2)
地域区分は普通住宅地、借地権割合は60%・借家権割合は30%である。地域の借地権慣行として、更新料は更地価格の5%、条件変更承諾料は更地価格の5〜10%である。
(3)
地代は総額で年間約250万円、固定資産税等公租公課は総額で年間100万円である。
part2 ポイント解説
●顧客の抱える問題と解決策
1. 相続税も考えた上でのGさんHさんへの対応
問題
借地人GさんHさんの申し出をそのまま受けても、相続税の納税資金不足は解決できない。
対策
(1) 貸宅地gの借地権と底地の等価交換
(2) 借地人Gさんへの底地の売却
(3) 借地人Hさんとの借地権と底地の共同売却
2. 相続税の物納制度の検討
問題
相続で取得した財産の大部分が、土地や建物等の換金が難しいもののため、相続税を現金で納付することが難しい場合、まず延納を検討し、それでも納税することが難しい場合には、税務署長の許可を得た上で、物納を選択することができる。
対策
物納は、相続税の申告期限までに物納申請書を税務署長に提出し、税務当局の調査を受けた上で、物納許可が下りれば可能となる。
3. 土地を物納する場合の事前準備
問題
土地を物納する際は、以下の点について準備しておく必要がある。
(1) 境界の明示
(2) 道路の確保
(3) 担保の抹消
対策
Aさんの貸宅地は全て道路に面しており、担保についても言及が無いため、まずは境界の明示を行っておく必要がある。
そのため、土地家屋調査士に物納予定の貸宅地について、測量を行い、境界の明示を依頼する
必要がある。
● FPと関連法規
相続・遺産分割等に関わる具体的な法律問題に関しては、弁護士を紹介し、具体的な税金の質問等に関しては、税理士を紹介すべきです。
また、土地の境界を確定するためには土地家屋調査士を紹介し測量を依頼すべきです。
本問では、顧客は相続税の納税資金不足による物納と、借地人との対応について不安を感じており、具体的な検討を行う際には特に税理士・土地家屋調査士の協力を仰ぐべきと考えます。
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