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2010年1月31日実技part2

2010年1月31日実技part2

part2 問題文

●設 例●
 Aさん(65歳)は、家業(小売店)と墓や祭祀の承継を条件に、甲土地(父母の代からの自宅兼店舗)を単独で相続し、木造2階建アパート付きの乙土地を姉弟と共有で相続した。
 乙土地の持分は、Aさん20%、姉と弟がそれぞれ40%である。両土地とも、都心から電車で30分、最寄駅から歩いて5分程度の商住混在地にある。
 アパートは老朽化が進み、6室のうち2室が空室になって久しく、残りの4室はいずれも1年半後に普通借家契約が期間満了になる。
 このたび会社を経営する弟から、「2年後に工場の設備資金が必要なので、乙土地を売却するか抵当に入れたいので協力してほしい」との申し入れがあった。
 Aさんは、老後に備え、自宅をバリアフリー住宅に建替えか改築したいと考えている。また、もっと収益の得られる資産も持ちたいとも思っている。しかし、資金が不足するので、弟の申し入れのとおり、乙土地の売却はやむを得ないと考えている。
 だが姉は、今の賃料収入には不満があるものの、思い出のある土地だということで処分には消極的であり、「弟は自分の持分だけを売却や抵当に入れればよいのでは」と言っている。
 そんな折、Aさんは、アパート管理の委託先である不動産業者が、「開発するなら、乙土地単独よりも甲土地と一体のほうが有効性が高まりますよ」と言っていたことを思い出した。
 Aさんは、甲土地と乙土地をどのようにするべきかについて、知り合いのファイナンシャル・プランナーに相談することにした。

〈Aさんの相談事項〉
1.乙土地と建物について、弟の持分だけの売却や抵当権設定はできるのか。仮に、弟に協力し、土地・建物全体に抵当権を設定した場合でも将来売却することは可能か。
2.不動産業者が「甲土地と乙土地一体開発したほうが有効性が高まる」と言った理由は何か。また、3人のニーズを一度に満たせるような土地活用方法があったら教えてほしい。
3.1年半後の契約期間満了時に、アパートの住人には退去してもらいたいが、どのような手続きをとればよいか。また、現在空いている2室をそれまでの期間賃貸したいが、確実に退去してもらえる契約の方法はないか。

 

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part2 ポイント解説

●顧客の抱える問題と解決策
1. 弟の持分だけの売却や抵当権設定の可否、乙土地・建物全体に抵当権を設定した場合の将来売却の可否。
  問題
 共有持分となっている不動産について、持分だけの売却や抵当権設定は可能。Aさんの弟が自身の持分について売却したり、抵当権を設定することについて、Aさんや姉は拒否することは出来ない。
また、土地・建物全体に抵当権を設定した場合でも、将来売却することは可能。
  対策
 弟は、Aさんに乙土地・建物全体について売却・抵当権設定の協力を依頼しているが、持分のみの売却・抵当権設定では不足なのかを確認する必要有。
また、土地・建物全体に抵当権を設定した場合、将来売却時に弟が債務を完済できない場合、土地・建物が競売にかけられることになるため、注意が必要。

2. 甲・乙土地を一体開発したほうが有効性が高まる理由と、3人のニーズを一度に満たすことができる土地活用方法。
  一体活用で有効性が高まる理由
 甲・乙土地を一体活用することで、建ぺい率・容積率・路線価・用途地域いずれについてもより有利な甲土地の方の規制を適用できるため、建築物の自由度・評価額が高くなるため。
 (1) 建ぺい率・容積率…前面道路が幅員10mとなり、角地となるため緩和される。
 (2) 路線価…乙単独だと400,000円/u(400C)だが、一体活用で800,000円/u(800C)となる。
 (3) 用途地域…複数の用途地域にまたがる土地の場合、過半の属する土地の用途地域が適用される。
  西側道路から20mまでの部分(商業地域)⇒20m×25m=500u
  西側道路から20mを超の部分(第2種中高層住居専用地域)⇒19m×25m=475u

 3人のニーズを満たす土地活用方法
 等価交換方式による賃貸マンション建設が提案可能。
 Aさんには自宅の建替え・改築資金が無いが、等価交換方式によりデベロッパーが賃貸マンションを建設し、各持分に応じたマンションの専有部分を得ることで、Aさんは資金負担無しにバリアフリー化した自宅を入手できる。
 また、弟は持分に応じたマンションの専有部分について売却・抵当権設定を行うことで、工場の設備投資資金を得ることが出来る。
 さらに、姉は思い出の土地を処分せずに、より多くの賃料収入を得ることが出来る可能性が高い。
 また、当該地域が既成市街地等およびそれに準じる地域であれば、地上3階建て以上で耐火構造の賃貸マンションを建設する場合、立体買い換えの特例の適用を受けることにより、不動産の譲渡益に関する課税を繰り延べることもできる。

3. アパートの住人には退去してもらうための手続きと、2室の期間賃貸につき、確実に退去してもらえる契約の方法。
  アパートの住人に退去してもらう手続き
 各入居者ごとに、現在の普通借家契約満了時に、退去の意思を確認する。ただし、入居者が希望すれば現契約を更新できるため、入居者に相応の立退き料を支払って退去してもらう必要がある。
  空き2室の期間賃貸後確実に退去してもらう契約方法
 定期借家契約が提案可能。
 契約期間は自由で、原則として契約の更新は無いため、期間満了後借主は退去する必要がある。
 ただし、貸主は契約時に書面により、契約に更新が無い旨を説明する義務があり、契約期間が1年以上の場合は、期間満了の1年前から6ヶ月前までに、借主に期間満了の通知を行う必要がある。

● FPと関連法規
 土地の有効活用に関する、具体的な税金の質問等に関しては、税理士を紹介すべきです。
 また、媒介や契約代理等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、不動産業者を紹介すべきです。
 本問では、顧客は土地の有効活用方法について不安を感じており、税金の相談については税理士に、定期借家契約等については不動産業者の協力を仰ぐべきと考えます。

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