2010年2月6日実技part1
2010年2月6日実技part1
part1 問題文
●設
例●
Aさん(72歳)は、3代続いている業歴のある精密部品製造会社甲社のオーナー社長である。甲社は業界でも屈指の技術力に加え、特許も数件保有し今後とも順調な業績伸展が見込まれている。甲社の直前期の年間売上高は38億円、経常利益は3億6,000万円である。Aさんは72歳となり、友人が経営している同業他社乙社に勤務している長男に、そろそろ事業を承継しようと思っているが、甲社は自社株の評価が高く、将来の相続税の納付および自社株の承継について心配している。甲社の株式のうち80%をAさんが所有している。
Aさんの家族構成は、下記のとおりであり、長男に自社株を中心とした甲社に関する財産を相続させたいと考えている。二男は商社に勤務し、何不自由ない生活をしており、甲社の経営にはまったく関心がない。ただし、最近、自宅建設を計画しており、Aさんは将来の財産分与を視野にいれ4,000万円程度の支援をしようと考えている。長女は他家に嫁いでおり、会社員である夫の実家が資産家でもあることから、将来の生活設計には不安はない。
また、Aさんは余剰資金の運用手段として、知人から紹介された投資信託の購入を検討しようと思っているが、内容についてはよくわからない。
現状でのAさんの相続財産は約14億円、現時点での相続税の見積額は、一次相続と二次相続を合わせて約4億5,900万円である。
〈Aさんの家族構成〉
Aさん (72歳): 甲社社長 妻 (67歳)
長男 (41歳):
同業他社勤務・既婚 二男 (39歳):既婚
長女 (36歳): 専業主婦
〈甲社の概要〉
株主構成 :Aさん 128万株(80%) 妻 16万株(10%) 長男 16万株(10%)
資本金
:80百万円
発行済株式総数 : 160万株
従業員数 :85人
株式評価上の会社規模 :「大会社」
類似業種比準価額は540円であり、純資産価額は1,160円である。
〈Aさんの財産の概要〉
現金・預金
280百万円
自宅(土地・建物)
80百万円
*小規模宅地等の評価減適用後
駐車場(土地)
150百万円
*会社に賃貸
従業員社宅2棟
80百万円
賃貸マンション2棟(土地・建物)
120百万円
甲社株式
691百万円
*現在の評価額
合計
1,401百万円
part1 ポイント解説
● 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。
1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策
(1) 株式の公開(上場)
(2) 生命保険・金庫株の活用
(3) 自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
(4) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用
2. 遺産分割・事業承継対策
(1) 遺言の作成
(2) 遺留分に関する民法の特例の活用
(3) 代償分割
(4) 長男への甲社株式の譲渡
3. 自宅資金援助方法
直系尊属からの住宅取得等資金贈与に関する贈与税の非課税制度の特例の活用を提案。
4. 知人から紹介された投資信託の検討
投資信託は、多数の投資家から資金を集め、資産運用の専門家が債券や株式などで運用し、得られた収益を投資家に分配する金融商品。
元本保証ではなく、購入時や解約時の手数料や信託報酬といったコストがかかる場合もある。また、日経225やTOPIXといった一定のベンチマークに連動した成績を目指すパッシブ運用型と、ベンチマークを上回る成績を目指すアクティブ運用型があり、一般的にアクティブ運用型の方が信託報酬等のコストが高いことに注意が必要。
● FPと職業倫理
FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、投資信託は知人からの紹介であることから、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、顧客に対し金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうです。よって一番重要なのは、様々な納税資金対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。
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