2010年2月6日実技part2
2010年2月6日実技part2
part2 問題文
●設
例●
中国地方の政令指定都市、X市に住んでいるAさん(60歳)は、代々酒屋を経営しており資産家として知られている。現在では、賃貸ビルや賃貸マンションも経営し、酒屋からの収益をはるかに上回っている。暫定利用の青空駐車場も何箇所か保有している。2人の娘はそれぞれ独立して、長男が酒屋を実質的に仕切っている。現在は夫婦2人で生活している。
個人で所有する不動産のうち、甲土地は幹線道路沿いにあり駐車場として利用されている。駐車場は自走式(鉄骨造)の70台収容のもので、近くのスーパーが一括で借りている。駐車場の周囲はマンション等が建ち、駐車場としての利用を継続してよいものかを考えている。
地元の有力Y銀行から、銀行系列のZ不動産と等価交換方式でマンションを建てるか、Y銀行が融資するので賃貸マンションを建てないかと提案があった。Aさんは、三大都市圏では等価交換事業が盛んなことは知っているが、X市でも可能であるとの認識は持っていなかったので、その点は腑に落ちないが、Y銀行の提案なので間違いはないとの思いもあり、その提案には大いに興味を持った。
そこでAさんは、Y銀行からの二つの土地利用案について、日頃の相談相手であるファイナンシャル・プランナーに相談することにした。
〈Aさんの相談事項〉
1.X市で、税制上の特例を利用した等価交換方式による事業は可能なのか。三大都市圏の等価交換事業と同じなのか。
2.銀行からの100%借入れにより自己建設方式で事業を行うことは、昨今の経済情勢でどのように考えるべきか。
3.現状の駐車場経営はどのように判断するか。
4.それぞれの事業方式のメリット・デメリットにはどのようなものがあるのか。どちらを選択すべきか。
〈自走式駐車場が位置する地域の概況等〉
〈駐車場の概要〉
・自走式二階建てで70台収容 ・賃料:月600千円(年7,200千円)
・設備耐用年数:15年
・スーパーとは10年契約で、1度更新済み
・対路線価利回り:2.4%
〈その他〉
・幹線道路沿いは、商業地域であるが繁華性にはやや乏しい地域である。
・市役所等、業務地区には徒歩20分程度であるが、バスも頻繁に運行している。
part2 ポイント解説
●顧客の抱える問題と解決策
1. X市での税制上の特例を利用した等価交換事業の可否、三大都市圏との差異
概要
スーパーとの10年間の賃貸借契約を一度更新しており、所有期間10年超であると推定できるため、「特定の事業用資産の買換えの特例」の適用が可能。
特例適用により、土地の譲渡益に関する課税を80%まで繰り延べることが可能。
また、三大都市圏の既成市街地等およびそれに準じる地域であれば、地上3階建て以上で耐火構造の賃貸マンションを建設する場合、立体買い換えの特例の適用を受けることにより、不動産の譲渡益に関する課税を100%繰り延べることもできるが、本件は「中国地方の政令指定都市」であるため、適用されない。
なお、Aさんは保有の暫定利用の青空駐車場については、特別な施設を設けていない空閑地として扱われるため、買換えを行うような場合でも「特定の事業用資産の買換えの特例」は適用されない。
2. 銀行からの100%借入れによる自己建設方式で事業を行うこと
問題
バブル期以前は土地を担保にしておけば、将来の値上がり益が期待できたため、金融機関としても積極的に土地を担保に融資を行っていたが、現在は土地が長期下落傾向にあることから、賃貸による毎年の純収益が重視されている。
仮に甲土地を担保に100%借入れにより賃貸マンションを建設し、思うような賃貸収入を得られず賃貸マンション経営に失敗した場合、担保となった甲土地を手放すことになる可能性がある。
3. 現状の駐車場経営はどのように判断するか
問題
路線価利回りは、昨今の低金利状況では著しく低い利回りともいえないが、高収益・高利回りといえるほどでもない。
2階建ての駐車場のため、容積率を上限まで使い切っておらず、有効活用の余地が残されている。
また、駐車場の設備耐用年数は15年で、スーパーとの10年契約を一度更新していることから、今後数年以内に耐用限度を迎えるため、新たな設備投資が必要になる。
対策
賃貸・分譲マンションの市場性等も検討の上で、高利回りが見込めるようであれば、マンション建設を検討。
4. 等価交換方式と自己建設方式のメリット・デメリットと望ましい方式
等価交換方式
等価交換方式とは、土地の所有権者や借地権者がその権利の一部または全部をデベロッパーに譲渡し、代わりにデベロッパーが建てたマンション等の一部を取得するもの。
土地の所有権者や借地権者は、資金負担無しで建物を取得できるメリットがある。
また、借地関係が複雑な場合にそれを整理し、建物の専有部分を複数取得することで、遺産分割対策としてもメリットがある。
ただし、土地・建物の所有権はデベロッパー等との共有になるため、その後の土地・建物の活用等については共有者全員の同意が必要となるデメリットがある。
自己建設方式
自己建設方式とは、土地の所有権者や借地権者が自己資金または自身が融資を受けた資金等で、マンション等を建設し、土地の有効活用を図るもの。
土地の所有権者や借地権者は、所有権や借地権を譲渡することなく、建物を取得できるメリットがある。
ただし、大きな資金負担が必要になるデメリットがある。
本件で顧客に提案する方式
Aさんは資産家であり、例えば甲土地を担保に借入れによる自己建設方式によるマンション建設も可能と思われるが、昨今の経済情勢やAさんの年齢を考えると、資金負担なく建物を取得できる等価交換方式が望ましいと思われる。
●FPと関連法規
不動産の買い換え・交換の各種特例に関わる、具体的な税金の質問等に関しては、税理士を紹介すべきです。
また、等価交換等における権利割合については不動産鑑定士、建築可能な建物等については建築士を紹介すべきです。
本問では、顧客は主に土地の有効活用方法(等価交換事業)について不安を感じており、Y銀行やZ不動産との交渉次第で、各専門家の協力を仰ぐべきと考えます。
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