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2010年2月7日実技part1

2010年2月7日実技part1

part1 問題文

●設 例●
 Aさん(60歳)は15年前に、他界した父親から和風レストランの経営を引き継いだ。
 Aさんの家族構成、収入支出・財産の状況は以下のとおりである。Aさんの長男は上場企業に勤めており事業を承継する意思はない。長女は他家に嫁いでいる。
 Aさんは、自分に万一のことがあった場合の相続税額を算出してもらったところ、相続税の総額は約82百万円であるとのことであった(小規模宅地等の評価減を適用していない場合)。
 Aさんは、相続税の納税資金や、遺産分割、独身の長男のことで悩んでいる。

T:Aさんの収入支出・財産の状況
 (1)収入支出の状況
 Aさんのレストランの年間売上は約60百万円で、必要経費差引き後の所得は約20百万円である。従業員は3人で他にアルバイトを4名雇っている。

 (2)財産の状況
 (各財産の金額は相続税評価額である:小規模宅地等の評価減適用前の金額)
 (1) 自宅の土地240u            : 96百万円
 (2) 自宅の建物                  : 20百万円
 (3) レストラン敷地400u                 : 80百万円
 (4) レストラン建物                          : 40百万円
 (5) 土地(長女の自宅の敷地)200u : 80百万円(建物は長女所有)
 (6) 預貯金                                    : 30百万円
 (7) 上場株式                                 : 40百万円
 (8) 非上場N社株式                        : 10,000株
 (友人がN社を創業する時に出資したものであり、株式保有割合は4%でAさんはN社の同族株主以外の株主である。N社は、毎期2割配当をしており、Aさんの出資した金額は5百万円である。)
 (9) 生命保険金(定期保険で死亡保険金20百万円)に加入している。
 (10) 住宅ローンの残債が30百万円ある(残り期間15年、団体信用生命保険付き)。

(3)(5)の土地は、無償で長女に貸しており、将来長女に贈与したいと思っている。

U:Aさんの家族構成 (長女を除き、家族は全員同居している。)
Aさん(60歳):レストラン経営   長女(38歳):主婦
妻   (58歳):専業主婦       長男(36歳):会社員(独身)

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part1 ポイント解説

● 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。
1.  相続税の軽減対策
(1) 不動産の売却
(2) 小規模宅地の評価減の特例適用(2.参照)
(3) 長女の自宅敷地を貸地とする評価額の引下げ

2. 小規模宅地の評価減の特例の適用方法
 小規模宅地の評価減の特例には、特定居住用・特定事業用・貸付用のそれぞれの宅地で評価減の適用対象面積や減額割合が異なる。
(1) 特定居住用宅地
 適用対象面積:240u、減額割合:80%
 適用条件:被相続人の配偶者や同居していた親族が取得する場合等。
     (親族の場合は相続税の申告期限まで引き続き居住。)
(2) 特定事業用宅地
 適用対象面積:400u、減額割合:80%
 適用条件:被相続人の親族が事業を引き継ぎ、申告期限まで事業継続し、取得する場合等。
(3) 不動産貸付業の宅地
 適用対象面積:200u、減額割合:50%
 適用条件:親族が取得し、申告期限まで引き続き所有し、貸付する場合等。
        (相当の対価を得て貸し付けている必要有。)

3. 遺産分割対策
(1) 遺言の作成
(2) 長女の自宅敷地贈与に関する相続時精算課税制度の適用
(3) 代償分割・換価分割
(4) 生命保険の活用

4. 和風レストランの事業承継・売却等の検討
(1) 法人化による経営権譲渡
和風レストランを法人化し、会社の経営のみ他人に委任する。
● メリット
  事業を継続できるため、経営者としての責任を果たすことができる。
● デメリット
  現状では後継者として経営を委任する者がいない。
  法人化までの事務負担の増加。
(2) 事業の売却
和風レストラン事業(土地・建物含む)を第3者に売却する。
●メリット
  事業を継続できるため、経営者としての責任を果たすことができる。
  土地・建物を金融資産に変えることができる。
(3) 和風レストランの土地・建物の賃貸
和風レストランの土地・建物を第3者に賃貸する。
●メリット
  事業を継続できるため、経営者としての責任を果たすことができる。
  土地・建物からの賃貸収入を期待でき、貸家建付地・貸家として相続税の評価額の引下げを図ることが出来る。
●デメリット
  現状では土地・建物を賃貸しながら事業を承継する者がいない。

● FPと職業倫理
FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、顧客に対し金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な納税資金対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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