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2010年6月6日実技part2

2010年6月6日実技part2

part2 問題文

●設 例●
 首都圏近郊のK市に住むAさん(54歳)は、地元の役所に勤める公務員である。Aさんの父Bさん(82歳)は地元で代々農業を営んでいる。Aさんは長男であるが、農業を継ぐ意思はない。現在、Aさんは家族(妻と子供2人)で同居し、両親の面倒を見ている。Aさんには妹が2人いるがいずれも嫁ぎ、K市を離れて生活している。Aさんは下の妹とは意見が合わず疎遠になっている。父Bさんは5年前に脳溢血で倒れ、現在治療中であるが、重度の脳障害のため意識がなく慢性の重度意識障害状態のまま施設に入院している。父Bさんが倒れた後、農業を継続してきた母Cさん(80歳)も昨年から体調を壊し、寝たきりに近い状態であり、AさんとAさんの妻が自宅で看護している。
 この度、Bさん名義の甲土地(畑、2,600u)について、大手系列の石油会社X商事より、ガソリンスタンドとコンビニエンスストアをやりたいので期間30年の事業用定期借地権で貸してもらえないか、という申し出があった。条件は地代が月額50万円、保証金2,000万円(甲土地に求償債権保全の抵当権設定)とのことであった。現在甲土地は畑であるが、父も母も耕作できないため放置してある。Aさんは父の治療費の負担も大きく、生活費も心細いため、この土地が有効利用できればありがたいと考えている。ただ、甲土地の東側1,800uは市街化調整区域内の農地であり、18年前に相続税の納税猶予を受けており、また、西側800uは生産緑地の指定を受けているため、甲土地を一体としてガソリンスタンドやコンビニエンスストアの用地として利用することが可能かどうか、よくわからない。そこでファイナンシャルプランナーに相談することにした。

〈Aさんの相談事項〉
1.X商事からの申し出に応じてもよいか。応じるにあたっての問題点、応じた場合のメリット・デメリッ
  トは何か。
2.父親Bさん名義の土地の賃貸借契約をAさんが代わってできるのか。
3.生産緑地は農地以外に利用できるのか。生産緑地の解除は可能か。
4.市街化調整区域が多い甲土地全体で、ガソリンスタンドとコンビニエンスストアの用地としての利
  用は可能か。
5.定期借地権とはどういうものか。

 

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part2 ポイント解説

●顧客の抱える問題と解決策
1. X商事からの申し出に関わる問題点、メリット・デメリット
  問題
 甲土地の有効活用について、母Cさんがどのように希望しているか、また父Bさんが重度意識障害となる前に、何らかの意思表示をしていたか、確認する必要がある。
 また、猶予打ち切りとなった場合の相続税や、生産緑地解除後の固定資産税の負担増加にX商事の申し出で対応できるかどうか。
 相続後は甲土地が妹2人も含めた共有持分となる可能性もあるため、妹2人の希望も確認しておきたい。
  メリット
 甲土地の有効活用により、地代月額50万円を確保することができる。地代の確保により、父Bさんの治療費や今後の生活費に充当することができる。
 また、Bさんの相続財産における金融資産の割合を増大させることができるため、将来の遺産相続の際、妹2人への遺産分割を容易にすることができる。
  デメリット
 X社の申し出を受けるには、生産緑地の解除を行う必要があるが、一度解除すると2度と生産緑地の指定を受けることはできず、固定資産税負担額が重くなる
 また、甲土地に関する相続税の納税猶予を受けているが、20年の営農条件を満たしていないため、猶予打ち切りとなる可能性がある(父Bさんは重度意識障害、母Cさんが寝たきりということで、猶予継続となる可能性もある)。

2. Aさんが代理として父親Bさん名義の土地の賃貸借契約を締結すること
  問題
 Aさんが父Bさんの代理として甲土地の賃貸借契約を締結するためには、成年後見人として裁判所に選任される必要がある。
  対策
 父Bさんは重度意識障害のため、Aさんが父Bさんの同意を得て任意後見人となるのは難しいと考えられるため、裁判所の審判により選任される、法定後見人となる手続きを取る。

3. 生産緑地の農地以外の利用可否、生産緑地の解除可否
  問題
 原則として、生産緑地の農地以外への転用は認められていない。しかし、例外として以下のいずれかに該当する場合、生産緑地の解除が可能となる。
 (1) 生産緑地指定後30年経過した場合
 (2) 病気などの理由で農業に従事できなくなった場合
 (3) 本人が死亡し、相続人が農業に従事しない場合
本問では父Bさんが重度の意識障害、母Cさんが寝たきりということで、(2)に該当する可能性がある。
  対策
 生産緑地解除のために、まずは市町村に生産緑地買取請求を行う必要がある。市町村が買取請求に応じない・他者への買取斡旋が不調、となった場合に、生産緑地の解除が可能となるため、申請から解除までには数ヶ月程度を要する。

4. 甲土地全体でのガソリンスタンドとコンビニエンスストアとしての利用可否
  概要
 市街化調整区域は、市街化を抑制する地域とされており、原則開発行為は許可されないが、ガソリンスタンドやコンビニエンスストアといった、周辺地域の居住者の日常生活に必要な物品や主要道路を走行する車両に関するサービスを提供する目的であれば、許可される。

5. 定期借地権の検討
 概要
 定期借地権とは、契約の更新がなく、借地契約満了後に借主が土地を所有者に返還する制度。
 普通借地権の場合、原則として所有者は借主からの借地契約の更新を拒否できないため、一度土地を返すと戻ってこないケースが多かったため、定期借地権制度が制定された。
 本問での「事業用定期借地権」の場合、契約期間は10年以上50年未満、契約は公正証書、期間満了後土地は更地にして返還する。

●FPと関連法規
 相続・遺産分割等に関わる具体的な法律問題に関しては、弁護士を紹介し、具体的な税金の質問等に関しては、税理士を紹介すべきです。
 また、媒介や契約代理等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、不動産業者を紹介すべきです。
 本問では、顧客は土地の有効活用方法について不安を感じており、生産緑地の解除を行う際には司法書士の協力を仰ぐべきと考えます。
 また、成年後見人や、納税猶予を受けている点等、具体的な法律や税金の相談については、それぞれ弁護士・税理士の協力を仰ぐべきと考えます。

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