2010年6月12日実技part1
2010年6月12日実技part1
part1 問題文
●設
例●
Aさん(68歳)は、中小企業X社のオーナー社長である。X社は電子機械を製作している、年商50億円の自他ともに認める優良企業である。
Aさんの家族構成は、妻と子供3人であるが、長男はX社の次期社長の予定で、現在は専務取締役として活躍している。他の子供2人は、それぞれ家庭を持ち幸せに暮らしているが、将来は最低限、遺留分相当の財産は要求するつもりとのことである。
X社には、利益剰余金が10億円あり、5億円ほどをAさんの所有資産の購入に充てるだけの余力がある。
Aさんの相続税額は、税理士の試算によると、一次相続では相続税の総額が約9億円(配偶者の税額軽減前)、一次相続で配偶者が法定相続分を取得したとして、二次相続では、相続税の総額が約4億円となる。
Aさんは事業承継と財産分割、相続税納税資金の問題についてどうすべきか、よいアドバイスを求めている。
また、金融資産の運用についてもアドバイスを受けたいと思っている。
Aさんの資産、家族構成は、以下のとおりである。
T
Aさんの資産
(いずれも相続税評価額。宅地については、小規模宅地等の評価減適用前)。
X社株式(Aさんが100%所有)
:12億円
X社の本社(建物および敷地) :
5億円
X社の駐車場用地
: 2億円
X社の社宅(建物および敷地) :
2億円
金融資産
: 1億円
自宅(家屋および敷地)
: 2億円
合計
24億円
U
Aさんの家族構成
Aさん(68歳)
妻(62歳) :専業主婦
長男(34歳):X社の専務取締役
二男(32歳):上場会社勤務 長女(29歳):専業主婦
part1 ポイント解説
● 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。
1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策
(1) 株式の公開(上場)
(2) 生命保険・金庫株の活用
(3) 自社株式評価の引き下げ
(4) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用
2. 遺産分割・事業承継対策
(1) 遺言の作成
(2) 遺留分に関する民法の特例の活用
(3) 代償分割
(4) 長男へのX社株式の譲渡
3. X社の利益剰余金による、5億円程度のAさん所有財産の購入
(1) 金庫株の活用
(2) Aさん所有のX社本社(建物・敷地 5億円)の購入
4. 金融資産の運用方法の検討
(1) 個人向け国債
(2) 生命保険
Aさんは68歳と高齢であり、金融資産は退職後の生活費及び相続開始後の配偶者の生活資金としても重要であることから、出来るだけ低リスクでの運用をすべき。よって、満期までの期間が短く発行から1年経過後には中途換金可能な固定3年の個人向け国債での運用を提案する。
ただし、中途換金の場合、直前2回分の各利子相当額の8割が差し引かれる。
また、金融資産の一部で定期の生命保険に加入し、相続開始時の納税資金や遺産分割の資金として活用することも提案できる。
●FPと職業倫理
FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、顧客に対し金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な納税資金対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。
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