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2010年6月13日実技part1

2010年6月13日実技part1

part1 問題文

●設 例●
 Aさん(65歳)は、大都市近郊の土地持ち資産家である。
 不動産会社から、駐車場となっている土地に賃貸マンションを建築する提案を受けており、駅から5分と立地もよいことから採算に不安がなく乗り気になっている。
 友人から法人名義で建築するほうが相続対策として有効であるとの話を聞き、Aさん個人名義とするか法人名義にするか迷っている。法人名義にする場合は、5年前に設立した不動産管理会社である甲法人(株主構成Aさん40%・Aさんの妻30%・Aさんの長男30%)を活用する予定である。賃貸マンションの建築費は、240百万円の見込みで、安全性と採算性を考慮して、個人名義の場合は銀行借入は160百万円にとどめ、80百万円は自己資金(預金50百万円・株式売却30百万円)を投入予定である。なお、法人名義の場合も銀行借入は160百万円にとどめ、80百万円は個人よりの借入れとする計画である。
 賃貸マンションの建築が相続対策となるが、万一の場合の相続税についても心配があり、今から対策しておきたいという思いがある。
 また、金額が些細なことであるが、株式の売却による損失について、配当金収入との相殺ができるようになったと認識があり、株式譲渡ならびに配当金についての課税がどのようになるかの詳細を知りたいと思っている。
 現時点での相続税の見込み額は約153百万円(一次・二次合計)である。
 Aさんは、ファイナンシャル・プランナーであるあなたに相談することとした。

Aさんの資産、家族構成は、以下のとおりである。

T 主な保有資産(各財産の金額は相続税評価額である)
 自宅          土地  300u      50百万円(小規模宅地等の評価減適用後)
           建物  150u      10百万円
 アパート(2棟) 土地  400u    160百万円
                      建物  500u      40百万円
 駐車場           土地  500u    250百万円
 現金預金                              70百万円
 株式                                     60百万円(上場株式58百万円、甲社株式2百万円)
 合計                                   640百万円

U Aさんの家族
 Aさん(65歳)
 妻B  (60歳) 専業主婦
 長男D(38歳) 既婚  会社員   夫人は専業主婦 子供1人
 長女C(35歳) 既婚  夫は会社員   子供2人会社員

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part1 ポイント解説

● 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。
1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策
 (1) 不動産の売却
 (2) 賃貸マンションの建設

2. 遺産分割対策
 (1) 遺言の作成
 (2) 代償分割
 (3) 生命保険の活用

3. 相続対策としての賃貸マンション建築における個人・法人名義の検討
 (1) 法人名義とした場合
  ◆ メリット
    賃貸収入は法人からの役員報酬とすることにより、給与所得控除の適用による所得税負担の軽減、
    家族への所得分散
を図ることができる。
    土地の無償返還に関する届出を税務署に提出することで、相続税評価額の80%に評価額を減
    額
できる。
  ◆ デメリット
    個人の借入金はないため、短期的には税負担の軽減効果が薄い。
 (2) 個人名義とした場合
  ◆ メリット
    借入金160百万円が債務控除の対象となる。
    土地を貸家建付地として借地権・借家権割合に応じて評価額を減額できる。
    建物を貸家として借家権割合に応じて評価額を減額できる。
  ◆ デメリット
    毎年の賃貸収入と借入金の返済による、長期的な相続財産(税負担)の増加。

4. 株式譲渡ならびに配当金についての課税の詳細
 上場株式の譲渡損失は、同一年の株式の譲渡所得や申告分離課税を選択した配当所得と損益通算できる。それでも損失が上回る場合は、確定申告することで翌年以降3年間その損失額を繰り越せる
 配当所得は申告分離課税と総合課税を選択できるが、総合課税を選択した場合は、上場株式の譲渡損失との損益通算できない

● FPと職業倫理
 FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
 本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、顧客に対し金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な納税資金対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。 

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