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2011年1月29日実技part1

2011年1月29日実技part1

part1 問題文

●設 例●
 Aさん(74歳)は、X社の創業者である。X社は地域に強い地盤を持つ有力建設会社で、最近、近隣に地下鉄が開通したこともあり当該地域の建築ニーズが依然高いことから、今後とも順調な業績が見込まれている。X社の直前期の年間売上高は28億円、経常利益は2億7,000万円である。
 Aさんは65歳のときに社長を長男に譲り、自身は引退している。ただし、現在でもX社株式を55%所有している。顧問税理士に相談したところ、X社株式の評価が高く、評価引下げができないか悩んでいる。また、X社株式の承継および将来の相続税の納税についても心配している。
 Aさんの家族構成は、下記のとおりであり、長男に株式を中心にX社に関する財産を相続させたいと考えている。二男は大学病院の勤務医で、将来は独立開業する意向であり、会社の経営にはまったく関心がない。長男と二男の仲は悪くないが、二男が金銭にシビアーなため将来の遺産分割においてスムーズにいかないのではないかと心配している。Aさんは、会社の業績が今後とも伸びることが予想されること、および、少しでも会社関連資産を減らしたいと考えていることから、保有するX社株式の一部を長男に贈与したいと考えている。顧問税理士から「遺留分に関する民法の特例」が創設されたとの話を聞き、内容を詳しく知りたいと思っている。また、金庫株についても検討している。
 現状でのAさんの相続財産は約13.1億円、現時点での相続税の見積額は、一次相続と二次相続を合わせて約4億6200万円である。

〈Aさんの家族構成〉
Aさん (74歳):元X社社長          妻 (72歳):専業主婦
長男  (48歳):X社社長・既婚   二男(46歳):勤務医・既婚

〈X社の概要〉
  株主構成 :Aさん 110万株(55%)   妻   10万株(5%)
                :長男 70万株(35%)      二男10万株(5%)
  資本金    :100百万円        発行済株式総数 :200万株
  従業員数 :56人       株式評価上の会社規模 :「大会社」
  類似業種比準価額は520円であり、純資産価額は980円である。

〈Aさんの財産の概要〉(いずれも相続税評価額)
  現金・預金                        200百万円
  自宅(土地・建物)                      90百万円 *小規模宅地等の評価減適用後
  二男自宅(土地・建物)               60百万円
  資材置き場(土地・建物)           180百万円 *会社に賃貸
  従業員寮(1棟)                       100百万円
  賃貸マンション2棟(土地・建物)  110百万円
  X社株式                                  572百万円 *現在の評価額
  合   計                                  1,312百万円

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part1 ポイント解説

● 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。
1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策
 (1) 株式の公開(上場)
 (2) 生命保険・金庫株の活用
 (3) 自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
 (4) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用

2. 遺産分割・事業承継対策
 (1) 遺言の作成
 (2) 遺留分に関する民法の特例の活用
 (3) 代償分割
 (4) 長男へのX社株式の譲渡

3. 遺留分に関する民法の特例の検討
 Aさんが長男に贈与した]社の株式について、遺留分算定基礎財産価額に算入しない「除外合意」や算入額を固定する「固定合意」により、]社株式に関わる遺留分減殺請求を回避することができる。
 ただし、推定相続人全員の合意が必要なほか、経済産業大臣の確認等、適用を受ける要件がある。

4. 金庫株の検討
 企業が自社株式を相続人から買い取ることにより、相続人はその買い取り額を相続税の納税資金とすることが出来る。ただし、特定の者から買い受ける場合には株主総会の特別決議が必要であり、取得額は分配可能額の範囲内という制限がある。
 譲渡価額と資本金等の額の差額についてはみなし配当所得として総合課税で最高43.6%の税負担、資本金等の額と取得価額の差額については譲渡所得として申告分離課税で所得税15%・住民税5%となる。ただし、相続開始から3年以内にX社に譲渡した場合は、みなし配当課税は適用されず、譲渡価額と取得価額の差額が譲渡所得(所得税15%・住民税5%)となり、相続税の取得費加算も適用できる。

● FPと職業倫理
 FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
 本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、顧客に対し金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な納税資金対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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