問49 2011年1月基礎
問49 問題文
Aさんは,自己の所有する宅地(200u)に4階建ての建物を建て,その建物の1〜2階は賃貸し,3階は空室(賃貸募集はしていない),4階はAさん夫婦の居住用として利用していた。また,長男は5年前に自宅を取得し,両親とは別に自分の家族と自宅で生活を営んでいた。ところが,Aさんが平成22年12月に死亡したため,この宅地と建物は妻と長男が相続することになった。当該宅地および建物の相続にあたっては,宅地および建物全体を妻4:長男1の割合で共有分割し,1〜2階は引き続き賃貸し,満室である。
この場合において,「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」(以下,「本特例」という)の適用を受けたときの当該宅地の相続税評価額として,最も適切なものは次のうちどれか。なお,Aさんの所有する土地は当該宅地のみとし,ほかの条件は考慮しないものとする。また,本特例の適用を受けるために必要とされるほかの要件等は,すべて満たしているものとする。
・所有者:宅地および建物ともにAさん
・路線価(自用地価額):400千円/u
・借地権割合:70%
・借家権割合:30%
1) 16,000千円
2) 37,000千円
3) 43,000千円
4) 80,000千円
問49 解答・解説
「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」に関する問題です。
この特例は平成22年改正により、自宅兼賃貸マンションの場合には自宅部分は240uを上限に80%減額、賃貸部分は200uを上限に50%減額、賃貸募集していない空室は減額ゼロとなりました。
(改正前は、敷地全てが80%減額対象)
また、妻と子の共有持分で相続するといった共同相続の場合、特例対象は継続居住・事業継続する相続人の持分のみとなり、継続居住・事業継続しない相続人の持分については、対象外となりました。(改正前は、相続人のうち誰か1人が継続居住・事業継続すれば全て減額対象)
まず、敷地200uに4階建てのマンションが建っていますので、1階層当たりの敷地面積は200u÷4=50u です。
よって、自宅・空室・賃貸部分それぞれに対応する敷地面積は、
自宅部分50u・空室部分50u・賃貸部分50u×2となり、それぞれの評価額は、
自宅部分…400千円×50u=20,000千円(自用地評価額)
空室部分…400千円×50u=20,000千円(自用地評価額)
賃貸部分…400千円×50u×2×(1−70%×30%)=31,600千円(貸家建付地評価額)
共同相続で宅地と建物全体を妻4:長男1の割合で共有分割しますので、各持分は、
自宅部分…妻:16,000千円、子4,000千円
空室部分…妻:16,000千円、子4,000千円
賃貸部分…妻:25,280千円、子6,320千円
本特例により、妻の持分は、自宅部分は80%減額、賃貸部分は50%減額されるため、
妻自宅部分…16,000千円−16,000千円×80%=
3,200千円
妻賃貸部分…25,280千円−25,280千円×50%=12,640千円
また、長男は継続居住しないため自宅部分は減額されず、事業継続する賃貸部分だけ50%減額されるため、
長男賃貸部分…6,320千円−6,320千円×50%=3,160千円
従って、特例適用後の相続税評価額(各持分)は、
妻 :自宅3,200+賃貸12,640+空室16,000=31,840
長男:自宅4,000+賃貸
3,160+空室 4,000=11,160
よって、特例適用後の相続税評価額(合計額)=妻31,840+長男11,160=43,000
正解は3)
43,000千円。
なお、この問題では敷地面積が特例適用の上限である200u以下ですので、単純に自宅部分と賃貸部分に分けて減額するだけでしたが、200uを超えると調整計算が必要となります。
つまり、本特例の上限面積は、それぞれ合計して利用できるものではなく、例えば自宅部分の適用上限240uと賃貸部分の適用上限200uの合計480uまで利用可能とはなりません。
従って、例えば敷地面積300uの4階建て自宅兼マンション(1〜3階賃貸、4階自宅)の場合、
自宅部分75uを80%減額した後、賃貸部分225uのうち200u上限一杯まで50%減額することは出来ず、調整計算が必要となります。
具体的には、自宅部分の適用枠のうち31.25%(75u÷240u)まで利用しているため、賃貸部分では上限200uのうち、68.75%までしか適用できないということです。
つまり、200u×68.75%=137.5uが減額対象面積となります。
1級FP試験でここまでのレベルの問題が出るかは分かりませんが、FPとして原理の理解だけはしておきたいところです。
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