2012年1月29日実技part2
2012年1月29日実技part2
part2 問題文
●設
例●
Aさん(53歳)は、地方都市P市(人口約5万人)に住む会社員である。奥さんと大学生の子供2人と暮らしており、健康状態は良好である。先般、父親の死去に伴って、金融資産(預貯金・株式等)を相続した。相続税支払後でも、約3億円は手元に残る見込みである。
Aさんは、預貯金等に比べ、収益不動産(賃貸マンション等)の利回りが高いと考え、知り合いの不動産業者に複数の物件を紹介してもらった。
業者が紹介した物件のなかで、Aさんが検討したいと考えた物件は次の2件である。
物件]:
東京23区内にある、築17年の賃貸ワンルームマンション。
RC(鉄筋コンクリート)造りで、部屋数は12室。一部屋ごとにバラ貸ししている。利便性に富むので、満室状態が続いている。物件価格2億円(税込)、単純利回り8%。P市から物件までは、飛行機等を乗り継いで3時間程度を要する。
物件Y:
P市にある、築5年の学生用アパート。
S(鉄骨)造りで、部屋数16室。業者が一括借りしている。物件価格1億円(税込)、単純利回り10%。P市には大学が複数あり、現在のところ、いずれも撤退の噂はない。
Aさんはこの投資案件について証券投資経験のある友人に話してみたところ、「実物不動産投資はリスクが高いと聞いているので、J−REITも検討してはどうか。J−REITも不動産投資の一種だし、利回りも預貯金より高いらしい」と、J−REITの一覧が掲載されているインターネットサイトを紹介された。
Aさんは、そのサイトを見たところ、次のJ−REITに興味を持った。
投資法人Z:
住居特化型REITで、予想分配利回り7.02%、時価総額約420億円。
Aさんは、実物不動産投資では、物件Yが自分の目の届くところにあり入居者の質もよく、利回りも高いことから、最有力候補だと考えているが、物件Xにも興味がある。また、JREITについても、もっと詳しく知る必要があると考えている。
そこで、ファイナンシャル・プランナーに相談することにした。
〈Aさんの相談事項〉
1.物件Xと物件Yに投資する際の「単純利回り」とはどういうものか、不動産に関する投資判断指標として、信頼できるものか。信頼できないとしたら、どういう指標を使うべきか。
2.3件の投資先候補について、それぞれどのようなリスクに気をつけるべきか。
3.実物不動産への投資には、税制面のメリットがあるということだが、内容を教えてほしい。
4.2億円程度を不動産で運用する場合、物件X、物件Y、投資法人Zのどれに投資すべきか。
part2 ポイント解説
●顧客の抱える問題と解決策
1. 不動産に関する投資判断指標の説明
◆ 「単純利回り」の説明
単純利回りは、表面利回りやグロス利回りとも言われるもので、
単純利回り(%)=家賃収入÷物件価格×100 で、計算できる。
従って、満室時の家賃収入が不明な場合、単純利回りと物件価格が分かれば、家賃収入を割り出すことが可能。
◆ 投資判断に有効な指標の説明
単純利回りは、不動産投資における諸経費(固定資産税・維持管理費等)を考慮していないため、投資判断に有効とは言いがたい。
従って、不動産の投資判断には、諸経費を考慮した純利回り(実質利回り・ネット利回りとも言う)が有効。
純利回り(%)=(家賃収入−諸経費)÷総投資額×100
2. 3件の投資先候補のリスク
◆ 物件Xのリスク
築17年とそれなりに築年数が経過しているため、そろそろ大きなリフォームが必要となってくる可能性が高い。
これまでの物件管理状況によっては、購入後数年で多額のリフォーム費用が必要となるリスクがある。
また、飛行機乗り継ぎで3時間程度を要するため、物件状況や周辺の賃貸状況の変化が掴みづらく、対策が後手に回るリスクがある。
◆ 物件Yのリスク
「業者が一括借り」=サブリース契約をしていると考えられるため、そのままサブリース契約を継続した場合、Aさん自身が物件管理するよりも、家賃収入は少なくなり利回りは低下するリスクがある。
また、サブリース契約の解除を希望する場合でも、現在のサブリース業者が解約に同意するか・同意する場合の解約条件等について、契約内容によってはAさんに不利となるリスクがある。
◆ 投資法人Zのリスク
J−REITの場合、株式市場に上場されているため、投資法人の投資先の状況とは別に、株式市場の騰落状況の影響を受けるリスクがある。
また、通常の株式投資信託と異なり、解約請求や買取請求ができない(クローズド・エンド型)ため、換金の際は市場での売却が必要となる。このため、場合によっては売却したいときに買い手がなく、売却できない事態も有り得る。
3. 実物不動産への投資による税制面のメリット
実物不動産への投資による収益は不動産所得となるが、不動産所得の赤字は、他の所得と損益通算可能であるため、Aさんの場合、諸経費が家賃収入を上回る場合には、給与所得から源泉徴収された所得税・住民税の還付が受けられる。
また、相続の際、不動産の相続税評価額は路線価・固定資産税評価額となるが、時価よりも低い価額となるケースが多く、時価評価となる預貯金・有価証券よりも有利となる。
4. 2億円の投資資金の投資先選定
各物件それぞれにリスクはあり、現時点の情報だけでは判断が難しいものの、投資資金2億円とすると、物件Xでは全額投資することになり、不動産投資経験の無いAさんには、他の物件に比べてリスクが高いと考えられる(万一のリフォーム資金も不足)。
実物投資を希望するのであれば、投資先は物件Yとし、残額は余裕資金とするか、別の実物不動産を探すか、J−REITを検討しても良いと考える。
J−REITに関しては、実物不動産とは異なり、少額から購入することもできるため、一度に購入せずに、ドルコスト平均法で少しずつ購入し価格変動の影響を抑えることも検討に値する。
● FPと関連法規
相続や不動産投資に関わる具体的な税金の質問等に関しては、税理士を紹介すべきです。
また、媒介や契約代理等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、不動産業者を紹介すべきです。
本問では、顧客は不動産投資を検討しており、実物不動産については顧客の知り合いの不動産業者とは別の不動産業者の協力を仰ぐことも検討に値します。
また、J−REITについては、投資助言・代理業の登録をしていないFPは、特定の有価証券に係る動向や投資判断についての助言を行うことはできないため、一般的な商品特性の説明までに止めます。
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