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2012年2月4日実技part1

2012年2月4日実技part1

part1 問題文

●設 例●
 Aさん(72歳)は、三代続いている業歴のある汎用機械製造会社X社のオーナー社長である。X社は、業界でも有数の技術力と優良な得意先をもち、ここ10年間で業容が大幅に拡大し、今後も安定的な収益が見込まれている。X社の直前期の年間売上高は4,000百万円、経常利益は160百万円である。現在は、長男(48歳)が専務として営業全般を取り仕切っており、Aさんはそろそろ長男に事業を承継しようと思っている。
 最近、Aさんは病気を患って手術を受け、医者からも無理をしないようにと言われたため、次の定時株主総会において長男に社長を譲り、Aさんは取締役を退任して相談役として週に2日程度の出勤としたいと考えている。同業他社の会長である知人に相談したところ、役員退職金をもらえばその後に株価が下がるので、Aさんから長男へX社株式の一部を譲渡または贈与してはどうかとのアドバイスを受けたが、具体的にどうしたらよいかわからず、その他の方法も含めて長男への事業承継全般について専門家に相談したいと思っている。
 Aさんは取締役在位年数46年であり、X社内規によると役員退職金は現時点で180百万円となる。また、長男はすでに取締役在位年数22年で、自己資金を60百万円保有しており、株価次第ではできる限りX社株式を取得したいと考えている。
 Aさんの二男は銀行勤務で収入は安定しているが、最近自宅の建設を計画しており、Aさんは将来の財産分与を視野に入れ、30百万円程度の支援をするつもりである。
 また、Aさんは余剰資金の運用手段として、円高という情勢を考慮して外貨建てMMFの購入に関心があるが、内容についてはよくわからない。
 現状のAさんの相続財産は1,100百万円、現時点での相続税の見積額は一次・二次相続を合わせて約350百万円である。

<Aさんの家族構成>
 Aさん(72歳):X社社長           妻 (70歳):専業主婦
 長男 (48歳):X社専務、既婚・子2人 二男(45歳):銀行勤務、既婚・子2人

<X社の概要>
 株主構成:Aさん90万株(90%)、長男10万株(10%)
 資本金  :50百万円    発行済株式総数    :100万株
 従業員数:110人     株式評価上の会社規模:「大会社」
 類似業種比準価額は889円、純資産価額は1,200円である。なお、X社が役員退職金180百万円を支給し、法人税法上の所得が0となった場合の類似業種比準価額は132円である。

<Aさんの財産の概要>
 現金・預金      130百万円
 自宅(土地・建物) 120百万円 *小規模宅地等の評価減適用後
 上場株式        50百万円
 X社株式        800百万円 *現在の評価額

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part1 ポイント解説

● 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。
1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策
 (1) 生命保険・金庫株の活用
 (2) 役員退職金の支給
 (3) 自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
 (4) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用

2. 遺産分割・事業承継対策
 (1) 遺言の作成
 (2) 遺留分に関する民法の特例の活用
 (3) 二男への住宅取得資金援助(贈与税の非課税制度・相続時精算課税を適用)
 (4) 長男へのX社株式の譲渡

3. 長男への事業承継対策の詳細
◆役員退職金の支給による株式評価額の引き下げ
  X社は株式評価上「大会社」であるため、株式評価は類似業種比準方式と純資産価額方式のいずれかを選択できる。
  類似業種比準方式は、配当・利益・純資産の3要素をもとに算出するため、役員退職金の支給することで、法人の利益・純資産を減少させ、評価額を引き下げる効果がある。
◆非上場株式の贈与税の納税猶予制度の活用
 非上場株式の贈与税の納税猶予制度を活用することで、後継者である長男が先代経営者であるAさんから株式を生前贈与された場合、課税価格の100%に対応する贈与税について、Aさんが死亡するまで納税の猶予を受けることが出来る。
 ただし、後継者が贈与前から所有していた分を含め、発行済議決権株式等の総数の3分の2までが適用対象であるため、対象外となる分は長男が自己資金で買い取るか、X社が金庫株として買い取り、対価を納税資金とすることもできる。

4. 二男への自宅資金援助方法
◆住宅取得等資金の贈与税の非課税制度の特例の活用
 直系尊属からの住宅取得資金贈与については、平成24年以降以下の通り適用要件が変更される予定(※)。
 直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合、平成24年中は、省エネ・耐震性住宅は1,500万円まで、それ以外の住宅は1,000万円まで非課税措置の適用を受けられる。
 また、この非課税措置は暦年課税の基礎控除110万円や、相続時精算課税の特別控除2500万円とも併用可能
(※)平成24年3月30日に平成24年度税制改正が可決されたため、大綱通りに施行。

5. 外貨建てMMFの検討
 外貨建てMMFは、高格付けの国債・地方債・社債・コマーシャルペーパーなどを投資対象とする公社債投資信託。分配金は20%の源泉分離課税で、売却時の為替差益は非課税となる。
 また、国内の証券会社に預託した外貨建てMMFであれば、投資者保護基金の補償対象となり、証券会社破綻時も1,000万円まで補償される。
 安全性の高い金融商品ではあるが、元本保証は無く、特に為替変動リスクが収益に大きな影響を及ぼすため、為替の円高・円安状況に注意が必要。

● FPと職業倫理
 FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
 本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、外貨建てMMFに関しても金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な納税資金対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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