2012年2月5日実技part1
2012年2月5日実技part1
part1 問題文
●設
例●
Aさん(70歳)は、精密機器の製造・販売を行う中小企業X社の創業者であり、現在も代表取締役社長を務めている。X社の状況は下記のとおりで、業績はこれまで堅調に推移しており、特殊な技術を持っているため、今後も好調を持続するものと予想されている。
Aさんの家族には、妻B(65歳)のほか、長男C(42歳)、長女D(34歳)および二男E(32歳)がいる。このうち長男Cは独身で、大学卒業以来X社に勤務しており、現在はX社の専務取締役であるが、同社の業務に精通しており、取引先や部下からの信頼も厚い。Aさんは最近、自身の体調面に不安を抱えていることもあり、できるだけ早期に長男CにX社の経営を承継したいと考えているが、このことについて、まだ誰にも相談していない。
長女Dは、現在は独身でAさん夫妻と同居中であるが、来年早々に結婚することが決まっており、Aさんは長女Dの新居に関連した援助をしてやりたいと思っている。ただ長女D自身は、Aさんの財産に対して関心はなく、結婚後もAさん夫妻との同居を望んでいる。
二男Eには、配偶者F(33歳)と子G(6歳)がおり、以前は商社に勤務していたが、Aさんの強い反対を押し切り、5年前に退社し飲食店を開業した。それ以来、Aさんと二男Eとは絶縁状態であるが、妻Bによれば、飲食店は経営不振のようである。妻Bの心配にもかかわらず、Aさんは二男Eに対して資金援助も財産を相続させるつもりもないとのことだが、配偶者Fと子Gの生活について内心では心配しているようである。
二男Eとの関係を除き、Aさん一家の家族関係は良好であり、妻Bおよび長女Dは、長男CがいずれはX社の後継者となることを期待している。なお、妻Bは父母から相続した預貯金をおよそ100百万円保有している。また、Aさん夫妻に係る相続税の総額(小規模宅地等の評価減適用前)は、一次・二次相続合計で約470百万円と見込まれている。
<X社(設立:昭和50年)の状況>
発行済株式総数 :10万株(所有割合:Aさん80%、長男C20%)
評価上の会社規模:大会社(資本金150百万円)
株価
:類似業種比準価額12,000円、純資産価額40,000円
余剰資金
:350百万円(当面、重要な設備投資の予定はない)
<Aさんの親族関係図>
<Aさんの財産状況(相続税評価額)>
預貯金等の金融資産 :
240百万円
X社株式 :
****円
自宅土地(200u) : 120百万円※
〃
建物 : 60百万円
※小規模宅地等の評価減適用前
part1 ポイント解説
● 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。
1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策
(1) 生命保険・金庫株の活用
(2) 小規模宅地等の評価減の特例の活用
(3) 自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
(4) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用
2. 遺産分割・事業承継対策
(1) 遺言の作成
(2) 遺留分に関する民法の特例の活用
(3) 代償分割
(4) 長男へのX社株式の譲渡
3. 遺留分に関する民法の特例の検討
Aさんが長男に贈与した]社の株式について、遺留分算定基礎財産価額に算入しない「除外合意」や算入額を固定する「固定合意」により、]社株式に関わる遺留分減殺請求を回避することができる。
ただし、推定相続人全員の合意が必要なほか、経済産業大臣の確認等、適用を受ける要件がある。
4. 小規模宅地の特例の改正に関する説明
小規模宅地の特例では、特定居住用宅地は240uを上限に、80%減額となる。
ただし、特定居住用宅地は、配偶者以外が取得する場合には、取得する別居親族は、相続開始前3年以内に自宅を所有していないことと、相続開始からの申告期限まで継続保有すること等が必要。
本問では、長女は結婚前からAさん夫妻と同居しているため、相続発生後に自宅を妻と長女が共同相続した場合、長女の持分に小規模宅地の特例が適用されるためには、申告期限まで継続居住・保有が必要となる。
5. 遺産分割方法の提案
まず、相続税の軽減対策として、自宅土地・建物については、妻と長女のいずれかに相続、または共同相続させることで小規模宅地の特例を受けることができる。
ここで、自宅を妻のみ相続、または妻と長女との共同相続とした場合、将来の二次相続発生時に、長女にとっては自身が居住中の自宅が遺産分割の対象となってしまうため、これを避けるために、長女の意向を確認した上で、長女のみに相続させることも検討に値する(妻自身には1億円の預貯金があり、結婚後も長女と同居が可能であれば将来の不安は薄い)。
長男に対しては、事業承継の関係上X社株式を相続させることが望ましいが、非上場株式の贈与税の納税猶予制度を活用し、生前贈与することで相続税の軽減を図ることができる。
また、非上場株式の贈与税の納税猶予制度では、後継者が取得できるのは発行済議決権総数の3分の2までのため、一部の株式は余剰資金のあるX社に金庫株として買取ってもらうことで、納税資金の大半を捻出できる。
なお、絶縁状態にある二男については、長男にX社株式を相続・贈与した場合、二男の遺留分を侵害する可能性が高いため、関係修復した後、遺留分に関する民法の特例を活用することが望ましい(「孫の教育資金として」等の名目で、二男にX社株式を除外した法定相続分または遺留分相当額の預貯金を相続させれば、二男の理解も得やすいのではないか)。
絶縁状態にある親族に対して関係修復を図るには、家事調停(裁判官と調停委員で構成される調停委員会に、紛争の仲介・あっせんを依頼した上で、自主的解決を図る制度)を利用する手もある。
● FPと職業倫理
FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、顧客に対し金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な納税資金対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。
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