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2012年6月3日実技part1

2012年6月3日実技part1

part1 問題文

●設 例●
 Aさん(70歳)は、都内で個人事業主の形態で内科の診療所を経営している。開業以来地域に根付いた診療を心がけ、順調に業績を伸ばしている。昨年の診療報酬が社会保険診療を中心に120百万円、必要経費を除いた所得が60百万円もあり、多額の所得税負担に頭を悩ませている。
 またAさんは、昨年、知人の税理士に相続税について相談したところ、Aさんの財産は下記のとおり正味1,310百万円、現時点での相続税の総額(各種特例適用前)は、一次、二次合わせて437百万円であると試算された。Aさんは近い将来、長男に診療所を継がせたいと思っているので、多額な相続税負担が事業承継にも支障を来たすことを心配している。
 そのような折、Aさんは、所得税負担軽減と事業承継対策に効果が期待できそうだとして医療法人を設立した知人の話を聞きつけた。知人が設立した医療法人は基金拠出型と呼ばれる形態で、持分の定めがないのだという。Aさんは、自身の医療法人化も前向きに検討し始めたが、その場合、現在はいずれもAさん所有である診療所の土地・建物はどのような所有形態にしたらよいかが気になっている。なお、診療所の建物は老朽化が進んでいるため、早晩建替えが必要な状態にある。
 Aさんの家族構成は下記のとおりである。長男は現在、Aさんと同居し大学病院に勤務医として勤めているが、将来はAさんの診療所を継ぐ意向である。長女は嫁いでいるが、夫の勤務先の会社は業績が低迷しており、将来の生活について不安を感じている。そのためAさんは、将来、長男と長女が遺産をめぐって紛争を起こさないかと危惧しており、円満に財産分割するためのアドバイスがほしいと考えている。母親は、賃貸用不動産を所有しており生活には困っていないが、認知症になったときのことを考え、Aさんは、たまたま耳にした成年後見人制度について知りたいと思っている。
 またAさんは、以前から余裕資金の運用目的で金を保有しており、最近の値上がりを受けて、金を売却した場合の税金について知りたいと思っている。

〈Aさんの家族構成〉
Aさん (70歳):内科開業医        妻 (68歳):専業主婦
長男  (38歳):私立病院勤務医・既婚  長女(42歳):会社員の妻・専業主婦
Aさん母(95歳):賃貸用不動産所有

〈Aさんの財産の概要〉※Aさんの母親から相続する部分も含む
診療所建物      50百万円      銀行借入金 45百万円
診療所土地     400百万円
その他診療所資産  200百万円
自宅(土地・建物) 450百万円
現預金       110百万円
金(金地金)     85百万円
賃貸用マンション   60百万円
(母親から相続予定)                                              
資産合計      1,355百万円         負債合計 45百万円

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part1 ポイント解説

● 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。
1. 納税資金の不足・所得税と相続税の軽減対策
(1) 医療法人の設立(法人税の比例税率と所得分散による所得税低減効果有り)
(2) 生命保険の活用
(3) 医療法人の設立後の役員退職金支払い(法人税の低減、退職所得控除による所得税低減効果も有り)
(4) 医療法人の設立後の前向きな設備投資(診療所の建替え等による法人税の低減効果)

2. 遺産分割・事業承継対策
(1) 遺言の作成
(2) 代償分割
(3) 長女への賃貸用マンションの生前贈与(相続時精算課税の2段階活用(Aさん母→Aさん→長女)

3. 基金拠出型医療法人の概要と診療所の土地・建物の所有形態の検討
基金拠出型医療法人とは、「基金制度」により資金調達を行う、持分の定めのない医療法人(持分の定めがない=出資比率による責任・分配の規定がない)で、平成19年4月1日以降に設立許可が下りる医療法人は、全て持分の定めのない医療法人となる。
個人医院を基金拠出型医療法人に移行させる場合、「個人医院の資産」⇒「医療法人の資産」となり、オーナーは所有していた個人医院の資産を、基金として医療法人に対する債権(利息なしの貸付金)で保有する形態に移行する。これにより、医療法人の資産が利益の蓄積により増加したとしても、基金の価値は増加せず、相続時は基金のみが相続税の課税対象となる(利益の蓄積(利益剰余金)は相続税の課税対象外)。
◆ メリット
  ・医療法人の内部留保が相続税課税の対象外
◆ デメリット
  ・都道府県に対する手続きが必要
  ・解散時の残余財産が国庫等に帰属

本件の場合、診療所の土地・建物を医療法人の資産とすることで、老朽化した診療所の建替え時には、減価償却による長期的な法人税の低減効果が期待できる。診療所の土地・建物を医療法人に貸し付けることも可能だが、賃貸収入の蓄積により、相続税の課税対象額も増加してしまう。
また、基金拠出型医療法人を長男に承継する際には、Aさんの個人資産の承継が不要となるため、事業承継が容易となる(個人医院の場合、個々の資産を後継者に譲渡することが必要)。
 
4. 円満な財産分割のアドバイス
Aさんの相続財産の大半は、自宅と医業用資産のため、長男への医業承継を進めると、遺言を作成したとしても、長女の遺留分を侵害してしまい、将来の紛争のもととなる可能性がある。
長女は現在の生活に不安を感じていることから、賃貸マンションに加えて、現預金や金地金の一部も相続させることで、遺留分相当額を相続させることにより、長女による遺留分減殺請求権の行使を抑制 することが可能。

5. 成年後見制度の説明
成年後見制度は、認知症などで判断能力が低下した場合に、財産管理や契約締結の支援を行う制度
法定後見制度と任意後見制度の2つがあり、法定後見制度では家庭裁判所で後見人を選任するのに対し、任意後見制度では本人の判断能力が十分なうちに、あらかじめ後見人を選任しておくことができる。
いずれの制度も、複数人を後見人として選任することや、法人を後見人として選任することが可能。
一般的には親族が後見人となることが多いが、AさんやAさん母の考え方によっては、成年後見のノウハウのある社会福祉法人等を後見人として選任することも可能。

6. 金売却時の税金の説明
金地金を売却した場合の譲渡益は、総合課税の譲渡所得として所得税・住民税の課税対象 となる。

 FPと職業倫理
FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、顧客に対し金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な納税資金対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」 ということになるかと思います。

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