2012年6月3日実技part2
2012年6月3日実技part2
part2 問題文
●設
例●
Aさん(66歳)は長年勤務していた会社を昨年退職し、年金と貸宅地(底地)の地代収入で生活している。底地(甲、乙、丙)は親から相続したもので、大都市近郊で駅から徒歩5分、賃貸マンションの需要が高い住宅地にある。現在は奥さんと2人で暮らしており、子供は長女家族が近隣に住み、長男家族は海外に赴任中である。
Aさんは、処分しづらい底地を一部だけでも更地にし、いつでも処分できる状態にしておきたいと考えている。また、アパート経営にも興味がある。ただしその場合でも、現在4,000万円保有している預金については、なるべく維持したいと考えている。
底地および借地権者の状況は下記のとおりである。
甲土地:300u
借地人Bさん(65歳)は親の代から酒店を営み、店舗(築40年)と自宅(築10年)の2棟の建物を敷地内に所有している。10年前に近隣にチェーン店の酒屋ができてから商売は芳しくなく、国民年金が出たのを機会に酒店を閉店するつもりである。閉店後は商売の収入がなくなり地代の支払いも厳しくなるので、知り合いの不動産会社に相談したところ、相続税路線価に基づく借地権割合で借地権と底地を交換し、自宅部分を所有権にして残すのがよいと言われ、先日、そのことをAさんに申し入れた。
乙土地:130u
借地人Cさん(45歳)は、5年前に親から相続した自宅に居住している。借地期間更新時期まであと2年で、建物が老朽化してきたことから建て替えたいと思っており、資金の余裕もあるため、できれば底地を買い取りたいと思っている。
丙土地:130u
借地人Dさん(77歳)は、2年前に夫に先立たれ、現在は自宅(築後約50年の木造住宅)に1人住まいしている女性である。今後は娘と一緒に住みたいと思っており、借地権を売却したいと言ってきた。
〈Aさんの相談事項〉
1.底地状態を解消するにはどういう方法があるのか。
2.甲土地について、底地と借地を交換した場合、税金はどうなるのか。交換比率はどう決めればよいのか。
3.甲土地・乙土地・丙土地につき、どのように交渉を進めればよいか。
part2 ポイント解説
●顧客の抱える問題と解決策
1. 底地状態を解消する方法
(1) 借地権の買い取り
(2) 底地の売却
(3) 底地と借地権の等価交換
(4) 借地人との借地権と底地の共同売却
2. 甲土地の底地と借地を交換した場合の課税関係と交換比率の決定方法
甲土地の底地と借地を交換した場合の課税関係
底地と借地権を交換した場合、固定資産の交換の特例を適用することができれば、譲渡がなかったものとすることができる。
(固定資産の交換の特例では、交換する資産は土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産であることが必要となるが、借地権は土地の種類に含まれる。)
交換比率の決定方法
固定資産の交換の特例では、互いの交換する固定資産の差額が、時価の高い方の固定資産の20%以内であることが必要。
ただし、土地の通常の取引価格と、当事者間の合意した価格が異なっていたとしても、交換をするに至った事情等に照らし合理的に算定されたものであれば、当事者間の合意価格が認められる。
よって、基本的には特例適用を前提に、価格差20%相当額以内での交換比率とすることを提案する。
3. 甲土地・乙土地・丙土地の交渉の進め方
甲土地
借地人からの底地と借地権の交換の申し入れには、基本的に了承できるものと思われるが、廃業予定の酒屋店舗については、更地にするための取り壊し費用が必要となる。
よって、まずは借地契約解除時には借地人に原状回復義務(更地にして返す義務)があることをBさんに伝えることから交渉を開始する。
なお、普通借地権の存続期間満了後、契約の更新がない場合、借地人は地主に建物等の時価での買い取りを請求可能(建物買取請求権)であるため、Bさんから買取請求された場合には、木造住宅のような非堅固な建物の場合、存続期間は30年とされているため、築40年の酒屋店舗の残存価値は0円となることから、建物の取り壊し費用と相殺し、0円での借地契約解除を提案する。
ただし、Aさんが取り壊し費用の負担に難色を示すようであれば、特例適用の範囲内で(価格差20%)、取り壊し費用も含めて交換比率を調整することを提案する。
乙土地・丙土地
(1) 乙土地の底地を売却し、丙土地の借地権を買い取る
乙土地の底地をBさんに売却し、その売却代金を丙土地の借地権の買取資金に充当する。
基本的に借地人の希望通りとなるため、借地人との交渉には大きな問題は生じないと考えられ、またAさんの預金も維持できるものと思われる(接道義務の点から、丙土地の借地権よりも、乙土地の底地の方が高い価格と想定できる)。
ただし、丙土地は前面道路に1.8mしか接しておらず、接道義務を果たしていないことから、アパート等は建築できず、小型車用の駐車場等で活用する程度となる。
(2) 乙土地・丙土地の一体活用(マンション等の建築)
乙土地・丙土地を一体活用することで、マンション等の建築により、より大きな収益を目指す。
乙土地・丙土地の借地人とAさんが、デベロッパーとの等価交換事業によりアパート・マンション等を建築し、借地人は建築されたマンション等の借地権価格相当部分を取得する。
借地人Cさんはそのまま自宅として使用し、借地人Dさんは取得したマンションの一部を賃貸・売却することも可能となる。
一体活用による土地利用は収益性が高いが、借地人の合意や信頼できるデベロッパーの選定が必要になるため、まずは借地人の希望をより詳細に確認していくことを提案する。
FPと関連法規
不動産取引に係る具体的な税金の質問等に関しては、税理士を紹介すべきです。
また、等価交換等における権利割合については不動産鑑定士、土地活用等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、不動産業者やデベロッパーを紹介すべきです。
本問では、顧客は主に土地の処分・有効活用方法について不安を感じており、借地人との交渉次第で、各専門家の協力を仰ぐべきと考えます。
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