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2013年2月2日実技part2

2013年2月2日実技part2

part2 問題文

●設 例●
首都圏内に居住するAさん(55歳)は、土地などの不動産を中心として多額の資産を保有している。家族は妻(50歳)、長男(25歳、会社員)および長女(21歳、大学生)で、全員がAさんと同居している。家族は、自宅(Aさんと妻の共有)を除き不動産を所有していない。
Aさんは、某株式会社に勤務しながら、Aさん所有の賃貸不動産の管理業務を行うX社(株主・役員はAさんと妻。現在の預金残高は3,500万円)を運営している。賃貸不動産は好立地条件に所在するものが多く、賃貸事業は好調で、年間賃貸収入は1億円ほどである。
しかしAさんは、賃貸不動産の物件数が多いため、将来、自分に相続が開始した際にスムーズな遺産分割ができるか心配している。また、現在、AさんがX社に支払う管理料は、賃貸収入の6%相当額程度で、その引上げは税務上、困難であることもあって、Aさんの所得税等の負担も重くなっている。
そこで、先日、不動産関係に詳しい知人に相談したところ「X社が賃貸不動産を所有すれば、相続対策や税金対策として有効ではないか」というアドバイスを受けた。
Aさんは、「X社は、商号は変更せずに、Aさんの賃貸不動産の管理業務を行う不動産管理会社から、賃貸不動産を所有して賃貸事業を営む不動産所有会社へと移行させる。手始めとして下記甲アパート(建物とその敷地たる土地)をX社に売買によって移転する」というプランを立て、このプランについてファイナンシャル・プランナーに相談することにした。

〈Aさんの相談事項〉
1.賃貸不動産をX社に移転することのメリット・デメリットは何か。
2.甲アパートをX社に売買によって移転する場合における留意点と対応策について、税務面を中心に具体的に教えてほしい。
3.あなたは、このプランを推進すべきだと思うか。また、税金対策等として、X社への賃貸不動産の移転以外によい方法があれば教えてほしい。

 

敷地(宅地・280u)の取得価額は不明である。その敷地上の建物(アパート)は、建設してから十数年経過しており、建築費は60,000千円、簿価は30,000千円(適切な償却後簿価)である。当地は、借地権の取引慣行のある地域内にある。

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part2 ポイント解説

 顧客の抱える問題と解決策
1. 賃貸不動産をX社に移転するメリット・デメリット
◆メリット
・賃貸収入は法人のものとなるため、法人税の比例税率と所得分散による所得税軽減効果有り。
・相続発生の際、不動産ではなく株式の相続となるため、純資産価額方式による評価となっても相続税負担の軽減効果有り。またより分割しやすい資産となるため、スムーズな遺産分割効果有り。
◆デメリット
・法人側には不動産取得による登録免許税・不動産取得税、オーナー側には保有不動産の法人への譲渡による譲渡所得税の負担有り。
株式の散逸により不動産の帰属が曖昧になる可能性有り。
・賃貸収入は法人のものとなるため、オーナーが自由に使えるお金に制限がかかるようになる(役員報酬の範囲内)。

2. 甲アパートをX社に売買し移転する際の留意点と対応策
法人とその役員間の取引となるため、資産の売買価額が時価と大きな乖離があると、差額に対して税負担が生じることになる。
時価よりも安い価格で法人に譲渡すると、法人側では時価が取得価額となり、時価と売買価額の差額が受贈益として取り扱われ、役員側では、売買価額が時価の2分の1未満だと、差額がみなし譲渡所得として課税される。
よって、不動産鑑定士に土地価格の適正な時価算定を依頼 することが必要となる。

3. X社を不動産保有会社に移行するプランの是非と他の方策の提案
◆X社の不動産保有会社への移行プランの是非
個人で所有している賃貸不動産の土地と建物を、法人に時価で譲渡しようとすると、法人側には大きな購入資金負担が発生し、預金で賄えなければ借り入れコストも発生する。また、オーナー側には多額の譲渡所得に伴う大きな税負担が発生する。
Aさんの55歳という年齢を考慮すると、まだまだ相続発生までは時間的余裕を見込めるため、現時点では、デメリットに目をつぶってまで不動産の法人への移転を急ぐ必要性は薄いと思われる。

◆他の方策の提案
土地の名義は個人のままとし、建物のみ法人に譲渡することで、賃貸収入のみ法人に移行する方法を提案する。
法人は個人の土地を借りる形となるため、税務署に「土地の無償返還に関する届出書」を提出することで、借地権の認定課税を避けることができる。さらに、土地は貸宅地となり、相続時には自用地価額の80%相当額として評価されるため、相続税対策にもなる。
法人からは個人に地代を支払うが、家賃収入に比べれば低額であり、多くの所得を法人に移行することが可能。
建物のみであれば法人の資金負担も少なく、簿価が時価と大きな乖離がなければ、簿価で譲渡することで個人側にも譲渡所得が発生しない。

 FPと関連法規
不動産取引に係る具体的な税金の質問等に関しては、税理士を、土地価格の算定は不動産鑑定士を紹介すべきです。
本問では、所有する不動産による賃貸収入等に対する税負担が大きな焦点であるため、具体的な検討を行う際には、税理士や不動産鑑定士の協力を仰ぐべきと考えます。

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