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2014年6月14日実技part1

2014年6月14日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(64歳)は、上場企業に40年近く勤務していたが、来年、定年退職を迎えることとなった。退職金の予定額は約3,000万円で、この金額内で一時払個人年金保険に加入するつもりであるが、そのメリット・デメリットを改めて確認したいと思っている。また、Aさんは不動産貸付業も営んでおり、不動産収入が年間2,000万円ほどある。
Aさんは、定年退職を契機に、自身の相続についても考えてみようと思っている。
Aさんの推定相続人は、妻Bさん(60歳・Aさんと同居)、長女Cさん(40歳)、二女Dさん(35歳・独身・Aさんと同居)の3人である。長女Cさんおよび二女Dさんの状況は、以下のとおりである。

(1)長女Cさんには夫と2人の子(15歳と13歳)がおり、現在は夫の社宅住まいである。そろそろ住宅を購入したいと思っているが、今後の教育費の負担や住宅ローンの返済を考え、住宅購入をためらっている。
(2)二女Dさんは、自宅の最寄り駅前にあるAさんの土地・建物を無償で借りて、アクセサリーショップを営んでいる。立地条件の良さもあり、店の年商は700万円ほどあり、原材料費や光熱費等を引くと400万円くらいの利益になる。ただし、Aさんに地代や家賃は払っていない。

Aさんは、顧問税理士にAさんの予想相続税額を試算してもらったところ、約2億2,600万円(小規模宅地等の評価減適用前・配偶者の税額軽減適用前)であることはわかった。
二女Dさんの店については、今後、できる限りの支援をしたいと思っているが、そのことを顧問税理士に話すと、「それならば、Aさんが法人を設立して、そこで店を経営させればよい。所得税・住民税の軽減だけでなく、相続税の軽減、特に小規模宅地等の評価減について、特定居住用宅地等と特定同族会社事業用宅地等の両方限度面積まで使える可能性がある」と言われたが、その意味や、法人設立のメリット・デメリット等がよくわからない。
また、長女Cさんにも資金援助をしたいと思っているが、どのような方法がよいか相談したいと思っている。
Aさんの所有財産の概要は、以下のとおりである。

〈Aさんの所有財産(相続税評価額)〉(土地評価はすべて小規模宅地等の評価減適用前)
自宅      敷地(400u)        7,000万円
        家屋(築45年木造)       500万円
アパート    敷地(500u)          1億円
        建物(築15年軽量鉄骨造)   2,000万円(年間家賃収入1,300万円)
駐車場(一部店舗)
        敷地(1,000u)     4億5,000万円(年間駐車場収入700万円)
        店舗建物(築10年木造平屋)   200万円(年間家賃収入なし)
現預金                    8,000万円
終身保険(受取人・妻B)           5,000万円 
合 計                  7億7,700万円

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part1 ポイント解説

 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。

1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策

(1)生命保険の活用
(2)小規模宅地の特例の活用
(3)法人の設立(法人税の比例税率と所得分散による所得税・相続税低減効果有り)
(4)法人の設立後の役員退職金支払い(法人税の低減、退職所得控除による所得税低減効果も有り)

2.遺産分割対策・事業承継対策

(1)遺言の作成
(2)遺留分に関する民法の特例の活用
(3)相続時精算課税制度による生前贈与の活用
(4)子への住宅資金贈与・孫への教育資金贈与の非課税措置の検討

3.小規模宅地の特例の活用方法

平成25年度税制改正により、小規模宅地の特例は、特定居住用宅地の適用面積が240uから330uに拡大され、居住用宅地と事業用宅地の併用も可能となり、最大730uまで80%減額が可能となった(平成27年1月1日以降の相続・遺贈より)。
本問の場合、自宅敷地は特定居住用宅地とし、一部店舗である駐車場敷地はAさん名義のまま、設立した法人に貸し付ける「特定同族会社事業用宅地等」とすることで、特例適用が可能となる。
ただし、貸付に際しては使用貸借ではなく、法人から相当の地代・賃料を徴収することが必要。また、特定同族会社事業用宅地等には駐車場は含まれない(賃貸事業の敷地は貸付事業用宅地となる)ため、本問の場合は法人の店舗敷地部分のみが特例適用対象となる。

4.法人設立のメリット・デメリット

 ○メリット
   ・ 社会的信用の向上(法人会計による適正な財務管理)
   ・ 法人税の比例税率による所得税負担の軽減
   ・ 親族を役員にすることによる所得分散効果
   ・ 役員退職時の役員退職金の損金算入 等

 ○デメリット
   ・ 法人会計による決算業務等の事務負担の増加 等

⇒法人設立による所得税負担の軽減は、個人所得が900万円程度以上ないと十分なメリットを享受できないが、Aさんの所得は多額であり、税負担のメリットを享受できると思われる。
ただし、設立する法人の業務が不動産貸付業のみでは、特定同族会社事業用宅地等の対象外となってしまうため、二女Dのアクセサリー販売業も事業に加える。また、Aさんの相続発生後申告期限までに、承継者が役員に就任し土地保有を継続することも必要。

5.長女への資金援助方法

(1)住宅取得費負担の軽減
直系尊属からの住宅取得資金の贈与の非課税特例により、父母や祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合、省エネ住宅は1,000万円、省エネ住宅以外なら500万円まで贈与税が非課税となる。
また、相続時精算課税と併用することで、最大3,500万円まで非課税で生前贈与が可能。

(2)教育費負担の軽減
教育資金の非課税特例により、直系尊属から教育資金を一括贈与された場合、受贈者ごとに1,500万円まで非課税となる(学校等に直接支払われる入学金や授業料等ついては1,500万円まで、学校等以外の者に支払われる金銭については500万円まで)。

 FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、顧客への金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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