2015年2月8日実技part2
2015年2月8日実技part2
part2 問題文
●設 例●
首都圏近郊に住んでいるAさん(74歳)は、2年前に夫を亡くし,現在は、夫から相続した自宅(甲土地および甲土地上の建物)に、会社員の長男Bさん(独身・45歳)と2人で暮らしている。長女Cさん(40歳)は公務員の夫と結婚し、子と3人で地方都市に暮らしている。
自宅はAさんの夫が平成17年4月に購入したもので、その時から自宅として使用しており、現在はAさん2分の1、長男Bさん4分の1、長女Cさん4分の1の持分割合で共有となっている。
Aさんは、自宅のほかに、夫から相続した現預金6,000万円と上場不動産投資信託(JREIT)3,000万円を有している(相続税は納付済)。
今般、長男Bさんが海外赴任することになり、Aさんと、これまでAさんの身の回りの世話をしてきた長男Bさんは困惑したが、長女Cさん夫妻からは、「それなら」と、長女Cさん宅でのAさんとの同居を申し出る旨の連絡があった。
Aさんの自宅は交通の便が悪く、建物も古くなっている。Aさんは、自身の年齢を考えると、これから1人で生活をしていくことには不安がある。長男Bさんの海外赴任や長女Cさん夫妻からの申出を踏まえ、Aさんは、自宅の売却を考え始めたが、自宅の売却に関する長男Bさんと長女Cさんの意向は、まだ確認していない。また、近所の人の話によれば、自宅の接面道路は私道であるという。Aさん家族は道路の持分を持っているとのことであるが、Aさんは、不動産に関する知識もないことから、ファイナンシャル・プランナーに相談することにした。
〈Aさんの相談内容〉
1.共有状態となっている自宅の売却について、問題点はないか教えてほしい。
2.接面道路の私道について、問題点はないか教えてほしい。
3.自宅を売却した場合の税制上の特例があればアドバイスしてほしい。
part2 ポイント解説
設例で示された情報以外に必要な情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、甲土地及びAさんの自宅の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地の物理的状況を、実際に確認することが必要。
顧客の抱える問題と解決策
1. 共有状態となっている自宅の売却に関する問題点
共有不動産の場合、その不動産全体の売却等には共有者全員の合意が必要となる。従って、海外赴任する長男Bさんが将来の帰国も考えて自宅を残しておきたい希望はないか等、持分を持つ長男Bさんと長女Cさんの意向を確認することが必要。
なお、海外赴任する長男Bさんの場合、既に海外に居住開始してから持分の売却益が発生した場合でも確定申告が必要となる。さらに、将来Aさんの相続が発生しその時点で長男Bさんが海外在住であっても、相続する国内財産(預貯金・J-REITの一部)は相続税の課税対象となる。
2.接面道路の私道に関する問題点
共有持分となっている不動産について、持分だけの売却や抵当権設定は可能。よって、自宅売却時に、接面道路の持分も含めて売却することは可能(他の共有持分者の合意は不要)。
ただし、位置指定道路の共有パターンは複数あるため、登記簿等で権利状態を事前に良く確認しておくことが必要。
●分筆せずに道路全体を一筆の土地として持分に応じて共有するパターン
●区画数で割り分筆して一筆ごとに所有するパターン(トラブル発生防止のため、お互いに自宅に面していない部分を所有する場合も有り)
3.自宅を売却した場合の税制上の特例
●3,000万円の特別控除
共有不動産を売却した場合、特例の適用可否は共有者ごとに判定され、共有者1人につき最高3,000万円の控除が可能。
●軽減税率の特例
贈与・相続により財産を取得した場合、その取得日・取得費を引き継ぐため、Aさんの夫が平成17年4月に購入した自宅は、平成28年1月以降に売却する場合には所有期間10年超となり(譲渡年の1月1日時点で判断)、軽減税率の特例が適用可能。
●相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例
相続で取得した土地・建物や株式等を、相続税の申告期限の翌日以後3年以内(相続開始後3年10ヶ月以内)に売却すると、納付した相続税のうち一定額を取得費に加算できる特例。
なお、上記特例については、要件を満たせば併用可能。
FPと関連法規
自宅売却による所得税額等、具体的な税金の質問等に関しては、税理士を紹介すべきです。
また、甲土地の正確な測量と境界の明示・接面道路の持分登記については土地家屋調査士、測量結果に基づいた適正な不動産価格の算定は、不動産鑑定士を紹介すべきです。
さらに、不動産取引にあたっては、媒介や契約代理等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、不動産業者を紹介すべきです。
本問では、顧客は主に共有状態の自宅売却時における不動産取引に不安を感じており、具体的なプランの実施について検討する際は、各専門家の協力を仰ぐべきと考えます。
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