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2015年6月14日実技part1

2015年6月14日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(65歳)は、地元でも名家で知られる農家の15代目当主である。ただし、Aさんの自宅等のある地域は先々代から都市化が進んできたため、農地を徐々に売却・転用等し、現在農地はすべて賃貸アパートの敷地となっている。
Aさんはアパート経営のほかに、雑貨店(有限会社X社)を営んでいたが、赤字経営が続いたため、3年前に雑貨店をやめている(有限会社X社はまだ解散手続をしていない)。現在の収入は、賃貸アパートの家賃収入のみであるが、所得税・住民税等の負担が大きいため、その対策として、休眠している有限会社X社をどうにか利用できないかと考えている。
Aさんの家族構成は、再婚相手の妻Bさん(60歳・Aさんと同居)、亡き前妻との間にできた長男Cさん(35歳・会社員・すでに結婚し、妻と子2人の4人暮らし)、妻Bさんの前夫との子Dさん(33歳・近隣の町に住んでいるが、生活が苦しいようなので、Aさんが毎年100万円程度の生活費を援助している。Aさんとは養子縁組はしていない)である。
Aさんの所有財産の概要は、以下のとおりである。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
1.自宅土地(600u) :8,000万円
2.自宅建物(築40年) :100万円
3.アパートA
 (1)敷地(600u):6,000万円
 (2)建物(12部屋):1,000万円(年間収入900万円)
4.アパートB
 (1)敷地(450u):4,000万円
 (2)建物(10部屋):1,500万円(年間収入1,000万円)
5.雑貨店跡地(更地100u):4,000万円
6.現預金:8,000万円
7.出資金(有限会社X社):100万円
合計:3億2,700万円
※現在の相続税試算額は、約8,000万円(配偶者の税額軽減適用前)と見積もられている。

Aさんは、そろそろ自分の相続が心配になってきたが、代々続く自宅の敷地は直系卑属である長男Cさんに相続させたいと希望しており、相続後も長男Cさんには地元の名家として売却しないでほしいと願っている。他方、妻Bさんの住む場所として自宅部分を相続させたいとも考えているが、自宅の敷地まで相続させた場合、将来的に子Dさんが自宅の敷地を相続しないか心配している。Aさんは、子Dさんの生活資金援助等については継続する意向であるが、自宅の敷地だけは相続してほしくないと思っており、FPに相談したところ家族信託の制度を利用することを検討したらどうかとアドバイスされた。
また、Aさんは、借家暮らしの長男一家のために自宅の敷地内に新居を建築してあげてもよいと考えており、加えて8歳と5歳になる長男Cさんの子(Aさんの孫)のために教育費の援助もしてあげたいと思っている。さらに、Aさんは、上場不動産投資信託(J-REIT)の購入を考えており、そのメリット・デメリットについて教えてほしいと思っている。

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part1 ポイント解説

 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。

1. 相続税、所得税・住民税の軽減対策

(1)生命保険の活用
(2)小規模宅地の特例の活用
(3)賃貸アパートのX社への売却

2.遺産分割対策

(1)遺言の作成
(2)相続時精算課税制度による生前贈与の活用
(3)直系尊属からの住宅取得資金贈与の非課税の活用
(4)孫への教育資金贈与の非課税措置の検討

3.X社を利用した所得税・住民税の軽減対策の詳細

X社の持分を長男に譲渡し、長男を代表取締役とする不動産管理会社とする。土地は個人所有のまま、管理会社に建物を売却し、管理会社が個人に地代を支払うことで、建物の所有権の移転手続きや不動産取得税等の移転コストがかかるが、全ての家賃収入が管理会社に入るため、所得移転効果が高くなる
◆ メリット
・ 社会的信用の向上(法人会計による適正な財務管理)
・ 法人税の比例税率による所得税負担の軽減
・ 親族を役員にすることによる所得分散効果
・ 役員退職時の役員退職金の損金算入 等

◆ デメリット
・ 法人会計による決算業務等の事務負担の増加 等

⇒不動産管理会社設立による所得税負担の軽減は、個人所得が900万円程度以上ないと十分なメリットを享受できないが、Aさんの賃貸収入は多額であり、税負担のメリットを享受できると思われる。
ただし、長男を代表取締役とすることが会社の「兼業禁止」規程に抵触する場合には、Aさんが役員のままとするか、妻Bや長男の妻を代表取締役とすることも検討に値する。

4.家族信託を利用した自宅相続

家族信託とは、家族・親族への資産承継や、高齢者・障害者のための財産管理のため、家族に自身の財産を信託する制度。財産を預ける委託者と、財産を預かる受託者(家族や信託銀行等)が信託契約を締結し、委託者は存命中は財産の実質的な所有者である受益者となり、死亡後は家族が受益権を取得するといったことが可能となる。
通常の遺言では、自身の死亡後に発生した相続についてまで財産の承継者を指定できないが、信託であれば自身の死後に発生した相続であっても、指定の財産の受益権を承継する者を指定しておくことが可能となる。
本問の場合、家族信託を利用し、自宅敷地の受益権の承継者を長男Cに指定することにより、確実に長男Cおよび孫2人に自宅敷地を相続させることが可能。

5.教育資金贈与の非課税措置の説明

教育資金の非課税特例では、直系尊属から教育資金を一括贈与された場合、受贈者ごとに1,500万円まで非課税となる(学校等に直接支払われる入学金や授業料等ついては1,500万円まで、学校等以外の者に支払われる金銭については500万円まで)。
教育資金として、信託銀行等の取扱い金融機関に預け入れ、教育資金管理契約を締結することが必要なほか、受贈者が30歳になると教育資金管理契約が終了し、終了時に非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額がある場合(非課税口座にお金が残っている場合)には、その残額はその年の贈与税の課税価格に算入(贈与税が課税)される。
資金の使用使途が限定されており、自由度は低くなるが、贈与後3年以内に贈与者が死亡した場合でも、相続税の課税財産に加算されないため、確実に教育資金として贈与することが可能。

6.上場不動産投資信託(J-REIT)に関する説明

◆メリット
実物不動産とは異なり、少額から購入することもできるため、一度に購入せずに、ドルコスト平均法で少しずつ購入し価格変動の影響を抑えることも可能。
また、少しずつ売却することもできるため、資金流動性が高い

◆デメリット
株式市場に上場されているため、投資法人の投資先の状況とは別に、株式市場の騰落状況の影響を受けるリスクがある。
また、通常の株式投資信託と異なり、解約請求や買取請求ができない(クローズド・エンド型)ため、換金の際は市場での売却が必要となる。このため、場合によっては売却したいときに買い手がなく、売却できない事態も有り得る。

 FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、J-REITに関しても金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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