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2016年2月7日実技part1

2016年2月7日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(68歳)は精密部品の加工業を営む非上場企業X社の代表取締役社長であったが、先月心臓病により急死した。Aさんの相続人は、妻Bさん(64歳)、長男Cさん(40歳)、二男Dさん(37歳)の3人である。長男Cさんは、Aさんの後継者として大学卒業後、X社に入社し、専務取締役としてAさんを補佐し、X社の業績を向上させてきた。他方、二男Dさんは、大学卒業後、公務員となり、現在は他県に住んでいる。
Aさんは、持病もなく、健康にも自信があり、家族もこのような事態になるとは考えていなかったため、自己の財産に関する遺言書を作成していなかったとのことである。X社は、技術力を背景に業績は順調に推移しており、この2〜3年は経常利益を3,000万円程度計上している。顧問税理士によれば、Aさんの退職金予定額5,000万円を支払ったとしても、余剰資金は十分にあるとのことである。
妻Bさんは、X社のことは長男Cさんが事業を承継するため心配していないが、Aさんの財産をどのように分割すればよいのかわからないでいる。特に、長男Cさんと二男Dさんは関係が悪く、二男Dさんは以前からAさんの相続が発生したら、長男Cさんと均等に相続しなければ納得できないと言っているため、相続税の申告期限までに遺産分割協議がまとまるかどうか不安である。仮に、遺産分割協議がまとまらなかった場合、相続税の納税額にどのような影響があるか知りたいと思っている。

【Aさんの相続人】
妻Bさん(64歳) :専業主婦。Aさんと同居していた。
長男Cさん(40歳):X社専務取締役。X社社長に就任予定であり、妻と子2人とAさんの自宅近くの賃貸マンションに住んでいる。
二男Dさん(37歳):地方公務員。他県で妻と子2人と賃貸マンションに住んでいる。

【Aさんの相続財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
現預金      :5,000万円
X社株式     :3億円(発行済株式総数の100%・退職金計上後)
死亡退職金    :5,000万円(妻Bさんへ支給予定)
自宅土地(330u):1億2,000万円
自宅建物     :3,000万円
駐車場(400u) :5,000万円(年間収入200万円)
合計       :6億円

※Aさんの相続に係る相続税額は、約1億6,700万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

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part1 ポイント解説

1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策

(1) 金庫株の活用(X社はこの2〜3年は3,000万程度の経常利益計上)
(2) 小規模宅地の特例の活用
(3) 非上場株式の相続税の納税猶予制度の活用
(4) 配偶者の税額軽減の活用(法定相続分である最大2分の1まで非課税であるため、小規模宅地の特例適用前でも3億円まで非課税となる)

2. 遺産分割対策

(1) 遺言の作成(妻Bの相続発生時に二男Dにより多くの遺産を相続させる)
(2) 金庫株を用いた長男Cから二男Dへの代償分割
(3) 妻Bが相続した金融資産について、二男Dへの住宅資金贈与、孫への教育資金贈与、結婚・子育て資金贈与の非課税措置の検討

3. 二男Dが納得する遺産分割対策

円滑な事業承継と今後の確実な事業運営のためには、後継者である長男Cが全ての株式を相続することが望ましいが、相続税評価額が3億円と高額であるため、二男Dの主張である長男Cとの均等な相続は難しい。
従って、まずは二男Dには遺留分を上回る遺産として預貯金と駐車場を相続させ、自宅土地・建物と死亡退職金を相続した妻Bの相続発生時(二次相続時)に、二男Dにより多くの遺産を相続させることである程度均等な相続が実現できる。
その他、妻Bが相続した金融資産については、二男Dへの住宅取得や孫の教育・結婚・子育て資金贈与の特例を活用して贈与することで、実質的に均等な相続を目指すことが可能(遺産分割協議の中でこれらを記した公正証書遺言や贈与契約書の内容を検討することが望ましい)。

4. 遺産分割協議がまとまらない場合の納税額への影響

(1) 一旦法定相続分に従って納付(配偶者の税額軽減は無し)
相続税の申告と納税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内が期限だが、遺産分割協議がまとまらない場合には、一旦法定相続分を相続したものとして申告し、各相続人が申告期限内に相続税を納付することが必要。
また、配偶者の相続税額軽減は、配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産を基に計算されるため、相続税の申告期限までに配偶者に分割されていない財産は税額軽減の対象外(小規模宅地の特例も同様)

ただし、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して申告期限から3年以内に分割した場合や、やむを得ない事情があり、税務署長の承認を受けて、その事情がなくなった日の翌日から4か月以内に分割された場合には、税額軽減の対象(小規模宅地の特例も同様)

相続税は現金一括納付が原則であるが、困難な場合は延納や物納を検討することになるが、遺産分割協議がまとまっていないとそれも難しいことが多い。

本問の場合、仮に遺産分割協議が申告期限までにまとまらない場合、相続人それぞれに多額の納税資金が必要となるため、遺産分割協議に当たってはできるだけ長期化しないようにすることを助言する。

(2) 申告後3年以内であれば更生の請求により還付可能
一旦法定相続分で相続税を納付後、3年以内に遺産分割協議がまとまった場合には、配偶者の相続税額軽減や小規模宅地の特例が適用された税額で再計算され、払い過ぎた相続税の還付を受けることが可能。

FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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