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2016年2月7日実技part2

2016年2月7日実技part2

part2 問題文

●設 例●
Aさん(35歳)および妻Bさん(30歳)は、ともに会社員として働いており、職場に近い都心の賃貸マンションで暮らしている。現在、Bさんは第1子を妊娠中であり、将来の育児と仕事との両立を考慮して、首都圏近郊のM市内に住むBさんの両親(父59歳、母58歳)の自宅に近いところに、転居することを考えている。
Aさん夫妻は、転居先として庭付きの戸建て住宅を希望しており、具体的には、M市内に所在する中古の戸建て住宅である甲物件を購入することを検討している。
甲物件を紹介した不動産業者X社からは、キッチンや内装などのリフォームの提案を受けており、その見積額は300万円程度である。

【甲物件の概要】
土地面積:120u        建物延床面積:110u
間取り :2階建て(4LDK) 販売価格  :4,500万円
築年数 :10年(瑕疵保険制度の「保険付保証明書」を取得している)

Aさん夫妻の預貯金は800万円(Aさん500万円・Bさん300万円)であり、世帯収入の金額は900万円(Aさん500万円・Bさん400万円)である。Aさん夫妻の住宅の取得についての資金計画は、以下のとおりである。

(1)預貯金から自己資金として300万円(Aさん200万円、Bさん100万円)を準備する。
(2)Aさんの父親(68歳)から1,000万円、Bさんの父親から2,000万円の贈与を受ける。
(3)残りの必要な金額について金融機関から借入(住宅ローン)を行う。

取得する甲物件の持ち分は、AさんとBさんそれぞれ50%とする予定である。
会社役員をしているBさんの父親は、金融資産を8,000万円程度保有しており、娘や生まれてくる孫のために資金援助を惜しまない旨の話をしている。Aさんの父親は、老後の生活資金のために用意している金融資産の一部から、可能な範囲内で援助を行うことに同意している。
Aさん夫妻は、親からの資金援助に係る税制や、中古住宅を購入する際の問題点についてFPに相談することにした。

(FPへの質問事項)
1.Aさん夫妻に対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)Aさん夫妻から直接聞いて確認する情報
(2)FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.中古住宅を購入するにあたって、建物部分について気をつけなければならない点について挙げてください。
3.それぞれの親から資金援助を受ける場合の税制を考慮し、Aさん夫妻の資金プランについてアドバイスしてください。
4.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

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part2 ポイント解説

1. アドバイスに当たって必要な情報

(1) Aさん夫妻から直接聞いて確認する情報
将来にわたった大きな選択に対するアドバイスであるため、検討している中古住宅は甲物件のみか、また検討に当たっては複数の物件を比較検討し、お互いの希望条件を明確にしているかを確認することが必要。
また、自宅の持分やローン名義も50%ずつとするか等の共働き家庭における住宅取得資金プランは、妻の出産後の働き方(保育園に入れるか、フルタイム・パートタイム等)や希望する子供の数により大きく異なるため、ある程度確認しておくことが必要。

(2) FP自身が調べて確認する情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、甲物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地・建物の物理的状況を、実際に確認することが必要。

2. 中古住宅を購入する際の建物部分の留意点

(1)住宅診断の実施
中古住宅の場合、外観や内見時は問題ないように見えても、床下や天井、水回り付近に水漏れ・シロアリ被害が発生していることがある。
買主が事前にすべてをチェックすることは難しいため、構造躯体の確認も含め、住宅診断の専門家(ホームインスペクター)に事前診断を依頼することが望ましい。
本問の甲物件の場合、住宅に各種の欠陥があった場合に補償される瑕疵保険に加入しているが、購入前に可能な限り確認しておくことが望ましい。

(2)耐震基準への適合状態の確認
建築物の耐震基準は、1981年と2000年に大きく改訂されており、中古住宅の場合はこれらの基準に適合しているか、もしくは耐震診断や耐震補強がなされているかを確認することが必要。
本問の甲物件の場合、各種の住宅取得減税制度の適用を受ける際に必要である「耐震基準を満たすことの証明書類」として利用できる瑕疵保険制度の「保険付保証明書」を取得しており、耐震基準については問題ないと思われる。

3. 親からの資金援助を受ける場合の税制を考慮した住宅取得資金プラン

(1)直系尊属からの住宅取得等資金の非課税制度の活用
直系尊属からの住宅取得資金の贈与の非課税限度額は、平成28年中の贈与・住宅取得の場合、受贈者1人につき、省エネや免震等の良質住宅であれば1,200万円、良質住宅以外であれば700万円まで。
また、購入する家屋が中古の場合、耐火建築物で取得日以前25年以内に建築されたものか、耐火建築物でない場合は一定の耐震基準に適合するものであることが必要。
さらに、贈与税の暦年課税の基礎控除110万円、相続時精算課税に係る贈与税の特別控除2,500万円のいずれとも併用可能

従って、夫婦それぞれで、親からの贈与に非課税特例と相続時精算課税または暦年課税の基礎控除を組み合わせることで、贈与税の負担無しで資金援助を受けることが可能。
妻に関しては今後も多くの資金援助を受ける可能性があるため、相続時精算課税が良いと思われるが、夫に関してはそこまで多額の贈与が予想されないのであれば、暦年課税(直系尊属からの贈与は特例税率で優遇される)でもよいと思われる。

(2)持分を50%ずつとするための住宅ローンの割合
自宅を夫婦共有名義にするためには、夫婦それぞれが負担する金額の割合(頭金と住宅ローンの合計)で持分を決めることが必要。
共有名義とした自宅の持分の割合と、夫婦それぞれが実際に負担した金額の割合が異なる場合、実際の負担額と共有名義とした分の金額の差額が贈与税の課税対象となる。

本問の場合、夫Aさんの負担額は、自己資金200万円+贈与1,000万円で1,200万円、妻Bさんの負担額は、自己資金100万円+贈与2,000万円で2,100万円。
物件価格4,500万円に届かない1,200万円を住宅ローンとし、夫婦間の贈与税負担無しに持分50%ずつにするためには、夫Aさんの住宅ローンは1,000万円、妻Bさんの住宅ローンは100万円とすることが必要。

4. 関与すべき専門職業家

甲物件の建物に関する、構造躯体・床下・天井等についての事前の住宅診断には住宅診断士(ホームインスペクター)が適当。
また、住宅取得資金の贈与税の非課税特例や住宅ローン控除における具体的な税務相談については税理士、甲土地建物の所有権の保存登記について司法書士が適当。

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