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2016年2月13日実技part1

2016年2月13日実技part1

part1 問題文

●設 例●
【Aさん(42歳)】
医療用機器製造業を営む非上場企業X社の二代目社長である。昨年、創業者である父Bさん(70歳、代表取締役会長)から社長の座を譲り受けた。Aさんは、5年以上専務取締役として父Bさんの経営を補佐しており、得意先・従業員ともに信望が厚い。
Aさんは、社長就任を機に、父Bさんが保有するX社株式の移転を進めてもらいたいと思っているが、どのような方法があるのか、それぞれのメリット・デメリットと併せて知りたいと考えている。
昨年、母Mさんの急逝に伴い、母Mさんの保有していたX社株式3万株をAさんが相続したが、その際に納税資金で苦労した経験から、顧問税理士に父Bさんの相続に係る相続税額を試算してもらったところ、「現状では相続税額は約3億7,000万円になる。遺産分割を含め、何らかの対策が必要である」と言われた。Aさんは、母Mさんの相続時の反省を踏まえ、父Bさんの相続に備えて、事前の相続税対策や生前贈与を実行し、兄妹間(関係は良好)で均等になるような遺産分割を望んでいる(父Bさんも同じ考えを持っている)。

【父Bさん(70歳)】
会長職を辞し、退職金をもらって引退することを考えている。今後の事業承継や遺産分割については、Aさんに一任している。父Bさんの所有財産の概要(相続税評価額、小規模宅地等の評価減適用前)は、以下のとおりである。

現預金 :2億円
X社株式:3億5,000万円
退職金 :1億5,000万円(予定額)
自宅土地(400u)  :1億2,000万円
自宅建物       :2,000万円
X社本社土地(400u):1億円
X社本社建物     :1億円(年間家賃1,000万円)
合計 10億4,000万円

【妹Cさん(39歳)】
上場企業に勤務する会社員と結婚しており、生活は安定しているものの、将来持家を取得したときのローン返済や2人の子(10歳、7歳)の教育費の負担について不安を感じている。

【妹Dさん(34歳)】
近々結婚する予定であり、その際、現在同居している父Bさんが一人暮らしになってしまうことを心配している。

【X社の概要】
資本金 :5,000万円
年商  :12億円(経常利益7,000万円)
株主構成:Aさん30%、父Bさん70%
会社規模:中会社(Lの割合:0.75)
株式の相続税評価額:類似業種比準価額4,000円/株、純資産価額8,000円/株
発行済株式総数  :10万株

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part1 ポイント解説

1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策

(1) 生命保険・金庫株の活用
(2) 自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
(3) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用
(4) 小規模宅地の特例

2. 遺産分割対策・事業承継対策

(1) 遺言の作成
(2) 遺留分に関する民法の特例の活用
(3) 相続時精算課税制度・直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度の活用
(4) 孫への教育資金贈与の非課税措置の検討
(5) 保険金やX社本社建物の賃料を原資にした代償分割

3. X社株式の長男への移転方法

Aさん所有の株式については、非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用により、税負担を抑えながら移転することが可能。
ただし、適用対象は発行済議決権株式の3分の2までのため、Bさん所有分(全体の70%)のうち、適用外の株式は、経常利益が順調なX社が金庫株として数年間にわたって買い取ることが望ましい(相続開始から3年以内にX社に譲渡した場合は、みなし配当課税は適用されず、譲渡価額と取得価額の差額が譲渡所得(所得税15%・住民税5%)となり、相続税の取得費加算も適用できるため、X社が相続開始までに取得資金を準備し、相続発生後に金庫株として買い取ることも提案可能)。

◆メリット:贈与税の納税猶予では、非上場株式の贈与に係る贈与税額の全額、相続税の納税猶予では相続税額の80%相当額が猶予される。さらに、先代経営者や後継者の死亡により、猶予された贈与税や相続税の納付が免除される。

◆デメリット:特例適用に関する経済産業大臣の認定申請手続きや、雇用の8割以上を5年間平均で維持することが必要。

4. 相続人間の平等な相続方法

(1) Aさんの相続分(X社株式と本社土地・建物の相続)
X社株式を後継者であるAさんに集中させるだけでなく、X社本社土地・建物についてもAさんに相続させることが、円滑な事業承継上重要である。
小規模宅地の特例は、特定居住用宅地で330u、特定事業用宅地で400uまで完全併用可能であり、最大730uまで80%減額可能。
本問の場合、自宅のうち330uまで特定居住用宅地を適用し、X社本社土地は特定同族会社事業用宅地等として、400uまで小規模宅地の特例の併用が可能。

(2) Cさんの相続分(金融資産と住宅・教育資金の生前贈与)
住宅取得や教育資金について不安を感じているため、相続時精算課税制度・直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度を活用し、贈与税負担を軽減しながら生前贈与を行い、相続時は金融資産を相続させる。

(3) Dさんの相続分(自宅土地建物)
小規模宅地の特例では、配偶者以外が取得する場合には、同居親族は、申告期限まで継続居住・保有が必要。
Dさんと婚約者の意向にもよるが、父Bさんとの同居を継続するのであれば、自宅土地・建物と金融資産を中心に相続させる。

以上の分割では、Aさんの相続分が多くなる可能性が高いため、Aさんを受取人とした生命保険や、X社本社建物の賃料を原資とした代償分割(相続後に分割払い)により、ある程度均等な相続が可能と思われる。

FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策や遺産分割対策、事業承継対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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