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2016年2月14日実技part1

2016年2月14日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(70歳)は、個人で不動産賃貸業を営んでおり、毎年の不動産所得の金額は1,000万円前後で推移している。Aさんは家族の仲は良いと感じているものの、相応の財産があることから、いざ相続が起こった際に遺産分割で家族がもめることのないようにしたいと思っている。Aさんは遺言書を作成しようと思っているが、どのような遺言書にしたらよいのかわからず、アドバイスを求めたいと思っている。最近、将来の相続税について税理士に試算してもらったところ、一次・二次ともに法定相続分どおりに相続した場合の相続税の総額は、一次相続では約1億8,000万円(配偶者の税額軽減適用前)、二次相続では約6,400万円であるとのことであった(一次・二次ともに小規模宅地等の評価減適用前の税額であり、妻Bさんに固有の財産はないものとする)。
Aさんは、現在、二世帯住宅の1階に妻Bさんおよび二女Eさんとともに暮らしており、2階には長男Cさん家族が住んでいる。Aさんは、独身である二女Eさんの将来を心配している。また、長女Dさんは会社員の夫、子2人とともに社宅で暮らしているが、そろそろ住宅を購入したいと思っている。しかし、今後の教育費の負担や住宅ローンの返済等を考え、住宅購入をためらっている。
なお、Aさんは、これまでにも上場株式などで資産運用をしてきたが、最近は金投資にいても興味を持っている。

【Aさんの家族構成】
妻Bさん(65歳) :Aさん、二女Eさんと二世帯住宅の1階で同居している。
長男Cさん(42歳):地方公務員。妻、子2人と二世帯住宅の2階で暮らしている。
長女Dさん(40歳):専業主婦。夫、子2人と社宅で暮らしている。
二女Eさん(38歳):会社員。Aさん、妻Bさんと二世帯住宅の1階で同居している。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
1.現預金 : 7,000万円
2.上場株式: 1億円
3.X社株式(非上場):1億円※
4.賃貸マンション
 (1)土地(400u):1億5,000万円
 (2)建物: 1億円
5.自宅(二世帯住宅)
 (1)土地(330u):1億円
 (2)建物:4,000万円    
合計 :6億6,000万円

※X社はAさんの兄が経営しており、同社株式は発行済株式総数10万株で、Aさんの兄が9万株所有している。X社からはAさんが保有しているX社株式を1億円で買い取りたいとの提案を受けている。

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part1 ポイント解説

1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策

(1) 生命保険・金庫株の活用
(2) 小規模宅地の特例

2. 遺産分割対策・事業承継対策

(1) 遺言の作成
(2) 相続時精算課税制度・直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度の活用
(3) 孫への教育資金贈与の非課税措置の検討

3. X社株式の]社への移転方法

企業が自社株式を相続人から買い取ることにより、相続人はその買い取り額を相続税の納税資金とすることが出来る。ただし、特定の者から買い受ける場合には株主総会の特別決議が必要であり、取得額は分配可能額の範囲内という制限がある。
譲渡価額と資本金等の額の差額についてはみなし配当所得として総合課税で最高43.6%の税負担、資本金等の額と取得価額の差額については譲渡所得として申告分離課税で所得税15%・住民税5%となる。ただし、相続開始から3年以内にX社に譲渡した場合は、みなし配当課税は適用されず、譲渡価額と取得価額の差額が譲渡所得(所得税15%・住民税5%)となり、相続税の取得費加算も適用できる。
X社(Aさんの兄)の同意が得られれば、相続発生後にX社に譲渡する方が税負担を軽減できると思われる。

4. 相続人間の平等な相続方法

(1) Bさん・Cさんの相続分(X社株式と自宅土地・建物の相続)
まず、妻BさんについてはAさんの相続発生後も確実な住まい確保のため、自宅土地・建物を相続させる。
小規模宅地の特例は、特定居住用宅地で330u、特定事業用宅地で400uまで完全併用可能であり、最大730uまで80%減額可能。
また、二世帯住宅については、内部が独立していても適用可能
CさんにはX社株式を相続後にX社に譲渡させ、二次相続時には自宅を相続させる。なお、小規模宅地の特例では、配偶者以外が取得する場合には、同居親族は、申告期限まで継続居住・保有が必要。

(2) Dさんの相続分(金融資産と住宅・教育資金の生前贈与)
住宅取得や教育資金について不安を感じているため、相続時精算課税制度・直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度を活用し、贈与税負担を軽減しながら生前贈与を行い、相続時は金融資産を相続させる。

(3) Eさんの相続分(賃貸マンション)
独身であり将来的なリスクを軽減するため、賃貸マンションを相続させる。小規模宅地の特例を適用した場合、貸付用宅地として200uまで50%減額可能。ただし、特定居住用との完全併用はできないため、本問では自宅に特定居住用として適用した方が、減額効果は高い。

以上の分割では、Eさんの相続分が多くなる可能性が高いため、CさんやDさんを受取人とした生命保険や、賃貸マンションの賃料を原資とした代償分割(相続後に分割払い)により、ある程度均等な相続が可能と思われる

5. 金投資の概要

金は安全資産や希少価値といった面から、経済危機や政情不安等のリスク対策として有効である。ただし、金自体の価格変動リスクに加え、金取引が米ドルで行われることから為替変動リスクもあり、また、原則として利息や配当が発生しない
金取引には大きなレバレッジを効かせられる商品先物取引以外にも、少額から投資可能な純金積立や金ETF、投資信託もあるため、まずはこれらの金融商品から投資を始めることを提案する。

FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策や遺産分割対策、事業承継対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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