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2016年6月4日実技part2

2016年6月4日実技part2

part2 問題文

●設 例●
首都圏近郊のK市に住むAさん(72歳)は、35年前に、すでに相続で取得していた甲土地(宅地・1,575u)に自動車修理工場を建て、経営してきた。最近は、売上が減少しており体力の衰えも目立ってきたことから、廃業を予定している。Aさんは、修理工場近くの戸建て住宅(自己所有)で妻Bさん(68歳)と2人暮らしである。住宅ローンを含め、借入れはない。子どもは息子が2人いるが、各々独立して東京で暮らしており、K市に戻る予定もない。
甲土地に隣接する乙土地は、長年、地元の建設会社Y社の社員寮の敷地として使用されてきたが、3カ月前、この土地と建物が回転寿司店を展開するX社に売却された。X社は、建物を取り壊し、新規店舗を建築して秋口には「X寿司 KインターQ号線店」をオープンさせる予定とのことである。
甲土地と乙土地の間には、公図上、幅約0.9m、長さ約65mの里道(りどう、通称:赤道(あかみち))が存する。無番地で測量図もない。この赤道は、「旧法定外公共物」であり、平成17年4月以降も国が所有している。この赤道は、国道Q号線が作られ、周辺の道路整備が行われた後は道路として使用されることはなく、甲土地と同じ状態で草むらであった。Aさんが甲土地で自動車修理工場を始めた35年前は、赤道とは知らず、甲土地と一体として舗装のうえ、駐車場および通路の一部として、現在まで使用している。現時点では、外見上、赤道の存在は確認できない。Aさんは、その後赤道の存在を知ったが、そのまま使用している。この件に関し、これまでどこからも異議申立ては受けていない。このような折、Aさんのもとに、M信託銀行K支店の行員が訪問してきた。彼らの用件は、以下の2つであった。

ア.X社の依頼事項で、X社と協力して赤道を整理したうえで、甲土地のa部分の土地230uと乙土地のb部分の土地230uを交換して、互いの土地を整形しませんか。

イ.赤道の問題が解消され、交換ができたら、甲土地に物流倉庫を建てませんか。大手コンビニチェーンZ社が当地域に専用の自社用倉庫を探しており、甲土地に倉庫が確保できれば、長期で借りたいと申し出ている。建築費は、全額Z社が負担するとのこと。

Aさんは、アの交換については、可能であれば、整形地にしておきたいと思っている。また、イの有効活用については、検討してみたいと思っている。

(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報(確認)が必要ですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)甲土地の維持、管理、活用(処分を含む)等に対する意向について、Aさんから具体的に確認したいと思いますが、どのようなことを確認しますか。
(2)FPであるあなたはK市役所でどのような点を中心に、何を確認しますか。
2.赤道を整理(解消・移設)するには、どのような方法が考えられますか。
3. 甲土地のa部分と乙土地のb部分を交換した場合の課税上の取扱いを教えてください。
4.赤道の整理および交換が終了した後、Aさんが甲土地をZ社に貸すために、倉庫を建築する場合、建築基準法上(特に用途制限上)、どのようなことに留意しなければならないですか。
5.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

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part2 ポイント解説

1. アドバイスに当たって必要な情報

(1) Aさんから直接聞いて確認する情報
Aさんは経営している自動車修理工場の廃業を予定しているが、廃業後の甲土地をどのようにするのか、具体的な意向を確認することが必要。その際、将来的な相続発生時には、不動産は分割しにくい資産であるため、処分して金融資産とするか、土地活用する場合にはその他の資産で円満な遺産分割が可能であるか等、相続を見据えた意向確認が重要である。

(2) FP自身が調べて確認する情報
赤道(里道)は小さな路地や農道・山道のことで、道路法上の道路ではない。赤道という通称は、以前は公図において赤線で記載されたことに由来するが、法定外公共物として国や市町村に所有権がある。
道路としての機能を喪失している場合には国所有となるため、赤道(里道)を整理するには、現に公共の用に供されているかどうかを、事前に市町村への照会・確認が必要。

2. 赤道を整理(解消・移設)する方法

(1)赤道を解消する方法
道路として機能しておらず、国が所有する赤道を解消するには、財務省に売払(払下げ)申請を提出し、許可を得て払い下げてもらうことが必要。

(2) 赤道を移設する方法
敷地内を横切る赤道(里道)を、別の場所に付け替えて寄附する(代替施設の設置)ことにより、不要になった赤道部分の譲与を受けることが可能。

いずれも、境界確定手続きや用途廃止の手続きが必要になるため、整理には相当の時間を要することに注意が必要。

3. 甲土地のa部分と乙土地のb部分を交換した場合の課税上の取扱い

甲土地と乙土地の一部を交換する場合、固定資産の交換の特例を適用することで、譲渡が無かったものとして課税を避けることが可能。ただし、特例適用の要件として、譲渡資産は1年以上保有していたものであること、取得資産は交換の相手が1年以上保有し、かつ交換のために取得したものでないことが必要。
固定資産の交換の特例は、土地や建物などの固定資産を同じ種類の固定資産と交換したときは、譲渡がなかったものとする特例

本問の場合、X社はAさんが取得する乙土地を3ヶ月ほど前に取得したばかりであるため、特例を適用するには1年を経過するまで取引を待つ必要があるが、赤道の整理にも相当の時間を要するため、問題はないと思われる。

また、国道に面した甲土地のa部分と、乙土地の奥側のb部分では、時価で比較した場合に大きな差がある可能性もあるため、事前確認が必要。差がある場合、固定資産の交換の特例は、交換する譲渡資産と取得資産の差額が、高い方の資産の時価の20%以内であることが必要。

4. 土地の交換後における倉庫建築時の建築基準法上の留意点

建築物の敷地が異なる用途地域にわたる場合、その敷地全体に対して、過半の属する用途地域の用途制限が適用される。従って、赤道(里道)を整理し土地の一部を交換後の甲土地は、第一種住居地域の用途制限が適用される。
第一種住居地域では、倉庫業を営む倉庫は建築できないため、Aさん自身が倉庫業を営むことを目的とした倉庫建築はできない。
M信託銀行の提案では、倉庫の建築費は全額Z社が負担するということであるため、Z社が倉庫を建築・所有し、Aさんは甲土地を事業用定期借地権で賃貸する方法が適当であると思われる。

5. 関与すべき専門職業家

赤道の整理に関する売払(払下げ)申請の代理は土地家屋調査士、土地の交換に関する土地価格の算定については不動産鑑定士が適当。
また、甲土地・乙土地の一部交換による課税上の取扱いに関する具体的な税務相談については税理士、所有権の移転登記について司法書士が適当。

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