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2016年6月5日実技part1

2016年6月5日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(68歳)は、老舗和菓子店を営むX社の代表取締役社長(2代目)である。X社は都心にある本店のほか、都内を中心に10店舗ほど出店している。業績は順調であり、内部留保も多い。Aさんは、3年前に妻を亡くし、昨年には自身が体調を崩し、入退院を繰り返したこともあり、創業50周年を迎える2年後を目途に長男Bさん(45歳)に社長の座を譲りたいと思っている(退職金予定額1億円)。Aさんは、事業承継にあたり、X社株式について、どのように移転するのがよいのか悩んでいる。
Aさんには、長男Bさん以外に2人の娘がいる。長女Cさん(42歳)は、会社員の夫と結婚後、長男(10歳)を授かったが、2年前に離婚した。現在は長男とともに、X社が保有する社宅でAさんと同居し、Aさんの身の回りの世話をしている。二女Dさん(38歳)は、公務員の夫と結婚し、現在は都心の賃貸マンションに住んでいる。
Aさんは、相続財産のうち、長男BさんにX社株式を承継し、それ以外の財産については長女Cさん・二女Dさんに相続させようと考えている。特に、離婚後、同居している長女Cさんと孫の将来の生活を心配しており、現在住んでいるX社の社宅を将来も長女Cさんが住居として利用できないかと考えている。また、友人から教育資金贈与制度やジュニアNISAを活用し、孫たちへ生前贈与を行ってはどうかと助言されているが、その内容がよくわからない。生前贈与を行った場合、相続税を支払うことができるのか不安に思っている。
なお、Aさんの相続に係る相続税額は、約2億6,700万円(小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

【Aさんの家族構成】
長男Bさん(45歳):X社専務取締役。妻と子2人で戸建て(持家)に住んでいる。現預金を5,000万円程度保有している。
長女Cさん(42歳):離婚後、長男とともに、Aさんと同居している。
二女Dさん(38歳):公務員の夫と賃貸マンションに住んでいる。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
現預金 :1億7,000万円(退職金予定額1億円を含む)
上場株式:5,000万円
X社株式:4億円(現時点の価額)
X社への貸付金:1億円
賃貸アパート :1億円(土地(250u)6,000万円、建物4,000万円)
合計 : 8億2,000万円

【X社の概要】
資本金 :2,000万円
株主構成:Aさん100%
従業員数:50人
株式評価上の会社規模 :中会社の大
社宅の概要
土地:帳簿価額1億5,000万円、時価1億円、面積330u
建物:帳簿価額3,000万円、時価3,000万円

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part1 ポイント解説

1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策

(1) 金庫株の活用(X社はこの2〜3年は3,000万程度の経常利益計上)
(2) 小規模宅地の特例の活用
(3) 非上場株式の相続税の納税猶予制度の活用
(4) 配偶者の税額軽減の活用(法定相続分である最大2分の1まで非課税であるため、小規模宅地の特例適用前でも3億円まで非課税となる)

2. 遺産分割対策

(1) 遺言の作成
(2) 遺留分に関する民法の特例の活用
(3) 長男Bの現預金5,000万円による長女C・二女Dへの代償分割
(4) 相続時精算課税制度による生前贈与・住宅資金贈与、孫への教育資金贈与、結婚・子育て資金贈与の非課税措置の検討

3. X社株式の長男への移転方法

Aさん所有の株式については、非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用により、税負担を抑えながら移転することが可能。
ただし、適用対象は発行済議決権株式の3分の2までのため、Aさん所有分(全体の100%)のうち、適用外の株式は、長男への譲渡や金庫株とする必要がある。

4. X社の社宅を長女Cが住居利用継続する方法

借地権や借家権といった賃借権も相続対象であり、適正な家賃負担をしていれば、相続発生後も同居していた長女Cは社宅に居住可能と思われる。
ただし、より確実な方法として、役員退職金として社宅を現物支給し(建物分3,000万円は貸付金と相殺)、遺言で長女Cに相続させることも提案可能(社宅は貸家建付地として減額評価対象であり、小規模宅地の特例適用も狙えるため、現預金よりも相続税負担が軽減される)。

5. ジュニアNISAの説明

ジュニアNISAは、未成年者が口座開設者となり、原則として、その親権者等が未成年者を代理して運用管理を行うことで、ジュニアNISA口座内の上場株式や投信等の配当金や譲渡益が非課税になる制度。
ジュニアNISA口座の利用限度額(非課税枠)は、一人年間80万円までで、口座開設者が3月31日時点で18歳となる年の前年の12月31日までは、口座外に払い出すことはできない
なお、親権者の同意のもと親権者代理人に選定されている場合には、祖父母が代理して運用することも可能。
通常のNISA同様、ジュニアNISAの非課税期間は5年間であるため、80万円×5年=400万円が非課税対象となり、後述の教育資金の非課税特例と併せることで、孫が大学進学する頃に多くの財産を遺すことが可能となる。

6. 教育資金贈与の非課税措置の説明

教育資金の非課税特例では、直系尊属から教育資金を一括贈与された場合、受贈者ごとに1,500万円まで非課税となる(学校等に直接支払われる入学金や授業料等ついては1,500万円まで、学校等以外の者に支払われる金銭については500万円まで)。
教育資金として、信託銀行等の取扱い金融機関に預け入れ、教育資金管理契約を締結することが必要なほか、受贈者が30歳になると教育資金管理契約が終了し、終了時に非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額がある場合(非課税口座にお金が残っている場合)には、その残額はその年の贈与税の課税価格に算入(贈与税が課税)される。
資金の使用使途が限定されており、自由度は低くなるが、孫に対して確実に教育資金を無税で贈与可能であることから、他の相続税対策も踏まえつつ、検討に値すると思われる。

7. 生前贈与による相続税支払いの不安への説明

生前贈与の各種特例を活用すると、相続開始前3年以内に贈与された財産であっても、相続税の生前贈与加算の対象外となる。
できるだけ計画的に生前贈与を進めることで、相続税負担を軽減することができるため、税理士に詳細な試算をしてもらいつつ、生命保険も活用することで、より確実な納税資金を確保することを提案する。

FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・事業承継対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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