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2016年6月11日実技part1

2016年6月11日実技part1

part1 問題文

●設 例●
<X社に関する事項>
Aさん(73歳)は、自身が設立して大きくしてきたX社(年商11億円/経常利益3,000万円/従業員数30名)の代表取締役社長を3年前に役員退職金を受け取って勇退した。勇退時に、Aさんが所有するX社株式を当時専務取締役(現在は代表取締役社長)であった長女Bさん(46歳)に「非上場株式等についての贈与税の納税猶予の特例」を最大限活用して移転している。納税猶予額の基礎となる株式評価額は約2億1,000万円であり、その結果、通常の贈与等による移転を含め、長女BさんはX社株式を100%所有している。
Aさんは、先日、長女Bさんから「6〜7名の従業員が退職することになりそうだ」との話を聞いた。

<Aさんおよび家族に関する事項>
Aさんは、長女Bさんと同居しており、収入面を含め、現在の生活には満足している。最近、経営者仲間だった友人から相続対策を兼ねて、都心のタワーマンションを購入したらどうかと勧められている。都心には、二女Cさん(43歳)が暮らしており、セカンドハウス(あるいは賃貸物件)としてタワーマンションを購入してもよいのではないかと考えている。
長女Bさんは、独身で子どもがいないため、Aさんは二女Cさんの息子(13歳・三男)を養子にして、ゆくゆくはX社の後継者にしようと考えている。この考えには、長女Bさんも賛成している。なお、姉妹間の関係は良好である。
また、Aさんは、「ふるさと納税」に興味を持っており、やってみたいと思っているが、どのようにすればよいかわからない。

【Aさんの家族構成(妻はすでに他界している)】
Aさん (73歳) :大都市圏近郊のM市内に所在する自宅で長女Bさんと同居している。
長女Bさん(46歳):Aさんと同居。今のところ結婚の予定はない。
二女Cさん(43歳):上場企業に勤務する夫および3人の息子の5人家族である。
都心のマンションで暮らしており、生活は安定している。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
現預金 : 2億円
上場株式: 2億円
自宅土地(600u): 6,000万円
自宅建物(築35年):500万円
賃貸アパート
(1)敷地(600u): 5,000万円
(2)建物(15戸) :1,500万円(年間収入1,000万円)
合計 : 5億3,000万円
※Aさんの相続に係る相続税額は、約2億6,500万円(相続税の納税猶予および小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

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part1 ポイント解説

1. 贈与税・相続税の軽減対策

(1) 生命保険・金庫株の活用
(2) 小規模宅地の特例の活用
(3) 非上場株式の贈与税の納税猶予制度の適用継続と相続税の納税猶予制度の活用

2. 遺産分割対策

(1) 遺言の作成
(2) 遺留分に関する民法の特例の活用
(3) 養子にしない孫に対する、相続時精算課税制度による生前贈与、教育資金贈与、結婚・子育て資金贈与の非課税措置の検討

3. 非上場株式の贈与税の納税猶予の取消リスク

非上場株式の贈与税の納税猶予は、雇用の8割以上を5年間平均で維持することが必要。
X社の従業員数は30名であり、従業員の7名以上が退職すると、雇用の8割以上維持の要件を満たせず、納税猶予が取り消しとなる恐れがある(30名×0.8=24名で、6名までは減少可能)。
納税猶予取消となった場合、猶予されている税額と利子税を納付する必要がある。
納税猶予継続のためには新規採用等の検討が必要になってくるが、同時に中途退職者が複数発生していることは、X社に何かしらの問題が発生している可能性も有る。
経営を承継したとはいえ、今後の相続に密接に関わることでもあるため、Aさんに本件について長女BやX社関係者から現状確認することを提案する。

4. タワーマンションによる相続税対策のメリット・デメリット

タワーマンションとは、一般的には、階数20階以上で高さ60m以上のマンションのことで、高額物件が多いことが特徴である。
タワーマンションでは、眺望や日照により高層階ほど高額(時価)となるが、建物の相続税評価額=固定資産税評価額×1.0であり、固定資産税評価額では眺望は考慮されないため、時価評価よりも低い相続税評価額となり、節税効果が見込める。また、土地に関してもタワーマンションは大規模戸数であり、戸数が多いほど敷地全体の綿製における持分割合が少なくなり、小規模なマンションよりも低い相続税評価額となる。

ただし、現在国税庁で課税強化を検討しているため、将来の相続発生時には見込んでいた節税効果が得られない可能性も想定される。

5. 孫養子のメリット・デメリット

子が生存していて孫を養子にすると、法定相続人が1人増えるため、相続税の基礎控除額は増えるものの、被相続人の直系卑属がその被相続人の養子となっている場合は、相続税の2割相当額加算の対象孫養子という)。
本問の場合、二女Cの三男を将来の後継者とすることを明確にできるメリットはあるものの、将来の三男本人の承継意思が不明確であることや、他の兄弟間との争いに発展しかねないため、孫養子は慎重に検討することを提案する。

6. ふるさと納税の説明

ふるさと納税は、任意の自治体に寄附した場合、所得税と住民税から一定の控除を受けることができる制度。「ふるさと」とあるが、自身の出身地に限らず、任意の自治体に寄附可能で、寄附額に応じた返礼品を配布する自治体も多い。
平成27年4月以降、ふるさと納税ワンストップ特例により、確定申告不要な給与所得者等に限り、ふるさと納税による寄附先が5団体以内であれば、確定申告不要で寄附金控除申請が可能となっている。
ふるさと納税を利用する場合、インターネット上のポータルサイトを利用するのが最も簡単であるが、本問のAさんの場合は不動産収入があり確定申告が必要であると思われるため、確定申告時に寄附控除の申請を行うことで適用される。

FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・事業承継対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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