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2016年6月12日実技part1

2016年6月12日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(50歳)は、日本料理店甲乙屋の事業主である。甲乙屋は、Aさんが他店で修業した後に父親(すでに他界)から承継したもので、現在は無借金経営を続けながら、年商1億5,000万円を超えるまでの優良店にした。今後は店を数店舗増やすことも計画している。店では、妻Bさん(48歳)も手伝っており、青色事業専従者として給与を受け取っている。
Aさんは、自身の相続が発生した場合の相続税については、税理士から「現時点において納税資金は足りている」と聞いているので、それほど心配していないが、所得税については申告所得が3,000万円を超え、税負担が重いことを悩んでいる。所得税対策として法人成りが有効という話を聞いたことがあるが、どのようなことを検討して進めるべきか、アドバイスがほしいと思っている。また、Aさん夫妻は、老後の生活設計として、所得税額の軽減効果がある小規模企業共済や確定拠出年金(個人型年金)を始めようと考えている。
Aさん夫妻には、子が2人いる。有名ホテルで料理人として働く長男Cさん(25歳)は、昨年結婚し、今年の8月には第1子が生まれる予定である。Aさんは、近い将来、長男Cさんを甲乙屋に入れて、本格的に後継者として鍛えたいと考えている。長女Dさん(19歳)は、私立大学の医学部医学科に在籍しており、Aさんはその将来を大いに期待している。

【Aさんの家族構成】
妻Bさん(48歳) :Aさん、長女Dさんと自宅で同居している。
長男Cさん(25歳):会社員。勤務するホテル近くの賃貸アパートで妻と2人暮らし。昨年結婚し、8月には第1子が生まれる予定である。
長女Dさん(19歳):大学生(医学部)。Aさん、妻Bさんと同居している。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
1.現預金 : 8,000万円
2.店舗
 (1)土地(500u) :1億2,000万円
 (2)建物 : 3,000万円
 (3)内装 : 2,000万円(簿価)
3.自宅
 (1)土地(300u) : 5,000万円
 (2)建物 : 2,000万円       
合計 :3億2,000万円

※Aさんの相続に係る相続税額は、約6,400万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

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part1 ポイント解説

1. 所得税・住民税の軽減対策

(1) 法人の設立(法人税の比例税率と所得分散による所得税軽減効果有り)
(2) 法人の設立後の役員退職金支払い(出資金軽減効果、退職所得控除による所得税軽減効果有り)
(3) 親族への役員報酬の支払いによる所得税軽減効果
(4) 小規模企業共済・確定拠出年金(個人型)による所得税軽減効果

2. 遺産分割対策

(1) 遺言の作成
(2) 遺留分に関する民法の特例の活用(法人化した場合)
(3) 長女Dに対する、相続時精算課税制度による生前贈与、教育資金贈与、結婚・子育て資金贈与の非課税措置の検討

3. 法人設立のメリット・デメリット

◆ メリット
 ・ 社会的信用の向上(法人会計による適正な財務管理)
 ・ 法人税の比例税率による所得税負担の軽減
 ・ 親族を役員にすることによる所得分散効果
 ・ 役員退職時の役員退職金の損金算入 等
◆ デメリット
 ・ 法人会計による決算業務等の事務負担の増加 等
⇒法人設立による所得税負担の軽減は、個人所得が900万円程度以上ないと十分なメリットを享受できないが、Aさんの所得は多額であり、税負担のメリットを享受できると思われる。

4. 小規模企業共済・確定拠出年金への加入

(1) 小規模企業共済の概要説明
小規模企業共済の掛金は、月額1,000円から7万円の範囲内(500円単位)で、全額が小規模企業共済等掛金控除として、所得税・住民税に係る所得控除の対象。
ただし、小規模企業共済の加入条件は、常時使用する従業員数が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の個人事業主または法人の役員で、個人事業の場合だと共同経営者も2人まで加入可能。
よって、Aさんの事業が対象外となる場合は、別途長期平準定期保険等の経営者向けの保険契約が必要となる。

(2) 確定拠出年金(個人型)の概要説明
確定拠出年金の個人型の掛金の上限は、国民年金基金の掛金と合わせて月額68,000円で、全額が小規模企業共済等掛金控除として、所得税・住民税に係る所得控除の対象(小規模企業共済にも同時加入可能)。
なお、確定拠出年金の加入者期間が、合算して10年以上あれば、60歳から老齢給付金を受給可能だが、10年に満たない場合は60歳よりも遅れて支給される。50歳のAさんの場合、60歳よりも遅れて支給される可能性があることに注意が必要。

5. 円滑な遺産分割対策

(1)二次相続も考慮した遺言の活用
法人化した場合の株式や店舗は安定した経営のためにも長男Cに相続させることが望ましいが、相続割合が大幅に偏ってします。そのため、長女には二次相続も考慮して、将来的に自宅の土地建物と現預金を相続させることで、おおむね平等な相続を実現できる(法人化した際の役員退職金については、二次相続まで見越した納税資金として考えておく)。
具体的には、まずは妻が自宅と現預金の一部を相続することで、老後の安定的な生活を得ることができる。その後、ニ次相続で長女に相続させるよう予め妻には長女に自宅を相続させる旨の公正証書遺言を作成させる。

(2)生命保険の活用
生命保険の契約者と被保険者が同じで、保険金受取人が異なり、受取人が相続人となる場合、支払われる死亡保険金は、みなし相続財産として、相続税の課税対象となるが、「500万円×法定相続人の数」までは非課税
本問の場合、Aさんが生命保険未加入のため、金融資産の一部を生命保険とすることは、納税資金対策や相続税の軽減対策のほか、遺産分割対策としても有効(死亡保険金は相続財産ではなく、保険金受取人の固有の財産とされるため、相続を放棄しても受け取り可能であり、民法上の相続財産に含まれず、遺産分割協議の対象とならない)。
不動産に関しては二次相続発生時まで長女に渡らないとする場合、まずは生命保険により長女は一定の金融資産を手にすることができるため、不公平感の軽減が期待できる。

FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な税負担の軽減対策や、法人設立のメリット・デメリットをきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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