問59 2018年1月応用
問59 問題文
所得税の青色申告および消費税に関する以下の文章TおよびUの下線部(1)〜(3)のうち、最も不適切なものをそれぞれ1つ選んでその番号を記入し、その適切な内容について簡潔に説明しなさい。
〈所得税の青色申告〉
T 「 不動産所得、事業所得または山林所得を生ずべき業務を行う居住者は、納税地の所轄税務署長の承認を受けた場合、確定申告において青色申告書を提出することができる。その承認を受けるにあたって、(1)青色申告承認申請書は、原則として、青色申告の適用を受けようとする年の3月15日までに提出しなければならない。ただし、その年の1月16日以後、新たに業務を開始した場合は、その業務を開始した日から2カ月以内に提出しなければならない。
青色申告者は、あらかじめ所定の届出をすることにより、(2)青色事業専従者に対して支払った給与やその者が事業に従事しなくなったときの退職金について、届出した金額の範囲内で、かつ、その労務の対価として適正な金額であれば、支払った年分における事業所得等の必要経費に算入することができる。また、事業所得等の金額の計算上、青色申告特別控除を控除することができる。
さらに、青色申告者は、棚卸資産の評価方法について、あらかじめ所定の届出をすることにより、(3)原価法のうちいずれかの方法によって評価した価額とその年12月31日における価額とのうちいずれか低い価額をもって棚卸高とする方法を選定することができる」
〈消費税〉
U 「 消費税の課税対象は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等および外国貨物の引取りであるが、これらの取引であっても、(1)土地の譲渡や土地・住宅の貸付け(一時的に使用させる場合等を除く)は非課税取引とされている。
個人事業者の場合、前々年の課税売上高が1,000万円以下の場合、原則として、その課税期間の消費税の納税義務は免除される。ただし、前々年の課税売上高が1,000万円以下であっても、(2)前年の1月1日から6月30日までの期間における課税売上高および給与等支払額の合計額がいずれも500万円を超えていた場合は、その課税期間は消費税の課税事業者となる。
消費税の課税事業者のうち、基準期間の課税売上高が5,000万円以下で、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を事前に提出している事業者は、実際の課税仕入れ等の税額を計算することなく、課税売上高から仕入控除税額の計算を行うことがで
きる。簡易課税制度において仕入控除税額を計算する際に用いるみなし仕入率は、事業区分ごとに定められているが、(3)2種類以上の事業を営む事業者で、そのうち1種類の事業の課税売上高が、全体の課税売上高の75%以上を占める場合、その事業のみなし仕入率を、他のすべての事業に対しても適用することができる」
問59 解答・解説
所得税の青色申告・消費税に関する問題です。
T
(1)は、適切。青色申告承認申請の期限は、青色申告をする年の3月15日までです。ただし、その年の1月16日以後新たに業務を開始し青色申告を行う場合は、その業務を開始した日から2ヶ月以内に青色申告承認申請書を納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
(2)は、不適切。個人事業主の事業所得の計算上、青色申告することで、青色事業専従者給与として、同一生計の配偶者や親族に支払った給与を必要経費に算入できますが、青色事業専従者に対する退職金は、必要経費に算入できません。
(3)は、適切。青色申告の特典として、棚卸資産の評価方法の低価法選択(取得原価と時価を比較していずれか低い価額を棚卸資産の期末評価額とする)があります。
これにより、売却前に、資産の時価減少を損益に反映することができるというメリットがあります。
U
(1)は、適切。土地・借地権の譲渡や、貸付期間1ヶ月以上の土地・借地権の貸付けは消費税の非課税取引です(駐車場等のように、アスファルト舗装や駐車スペースの区切り、車止め等が整備されている場合、それらの施設・設備を利用することが前提のため、単なる土地の貸付けではないとして課税取引となります。)。
(2)は、不適切。消費税は、基準期間となる前々事業年度(個人は2年前)の課税売上高が1,000万円以下であれば、今年の納税義務が免除されますが、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、特定期間(前事業年度開始から6ヶ月間)の課税売上高と給与等支払額の合計額が、いずれも1,000万円を超えると、消費税の課税事業者となります。
(3)は、適切。消費税の簡易課税制度は、実際に仕入れ等で支払った消費税額を計算せずに、一定のみなし仕入れ率で控除対象仕入れ税額を計算できる制度ですが、簡易課税制度では、業種を第1種〜第5種までの5つに区分しており、それぞれみなし仕入れ率が異なります。2種類以上の事業を兼業している場合、1つの事業の課税売上高が全体の課税売上高の75%以上を占めていれば、その事業のみなし仕入率を他の事業に対しても適用可能です。
以上により正解は、
T:(2) 退職金は、その労務の対価として適正な金額であるかどうかにかかわらず、事業所得等の必要経費に算入することはできない。
U:(2) 前年の1月1日から6月30 日までの期間における課税売上高および給与等支払額の合計額のいずれも1,000 万円を超えている場合は、その課税期間は消費税の課税事業者となる。
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