2018年2月17日実技part2
2018年2月17日実技part2
part2 問題文
●設 例●
Aさん(59歳)は、大手企業に勤める取締役である。現在、妻(55歳)および長女(28歳)の3人で横浜市内の自宅マンションに居住している。
Aさんの実家は、東京都23区内にあり、母親Bさん(82歳)が1人で暮らしている。実家の土地(甲土地)は、地主Xさんからの賃借であり、土地の権利は旧借地法に基づく借地権である。Bさんの所有財産は、自宅(Aさんの実家)のほかに、預貯金が1,500万円程度ある。
【Bさんが所有する自宅(甲土地および建物)の概要】
・土地300u、建物(木造2階建て)延床面積160u、昭和53年築
・父親の死亡後(3年前)、相続により取得した。
【甲土地について】
・約60年前からの借地であり、現在の建物は39年前に建て替えたものである。
・当初、権利金の支払はなく、現在の地代は月額8万円である。
・借地契約は、近いうちに更新時期を迎える。
・甲土地のある地域は、都心へのアクセスが良く、昔から閑静な住宅エリアとして人気がある。借地権付き建物の取引も多く、借地権の取引慣行のある地域である。
Aさんは、Bさんの今後の生活や月額地代・更新料の負担等を考慮し、地主Xさんの土地を管理している不動産会社Y社に借地権と底地を交換できないかと相談したところ、Xさんからは「底地を売ることはしたくないが、借地権と底地の交換には応じてもよい」との回答だった。甲土地を敷地中央で乙土地と丙土地に2分割(50:50の比率)し、乙土地をBさんが取得するという借地権と底地の交換の提案である。同時にY社からは、Bさんが借地権を譲渡する意思があれば、相続税路線価評価額の50%相当の金額で、Xさんが当該借地権を買い取ることも可能であるとの提案もあった。
Aさんには、大阪で暮らす弟Cさん(57歳)と名古屋で暮らす妹Dさん(55歳)の2人の弟妹がいるが、2人とも当地で生活基盤を築いており、いずれも実家に戻る予定はない。Bさんは、交換後の乙土地で暮らすことを希望しているが、将来的には有料老人ホーム等に入所する必要性も理解している。Aさんは、土地交換で完全所有権になることがよいと考えているが、分割ラインに引っ掛かる実家の建物をどうしたらよいか迷っている。
(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)Aさんから直接聞いて確認する情報
(2)FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.「固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例」の概要について教えてください。
3.固定資産の交換で乙土地を取得するにあたり、実家の建物はすべて取り壊して建て替えますか。それ以外に何か方法がありますか。建物を取り壊して建て替えた場合、Bさんの相続開始時における税務上の問題点を整理してください。
4.あなたは、Aさんに対して、固定資産の交換と借地権の譲渡のどちらを勧めますか。
(正しい選択がどちらであるかとの回答を求めているのではありません)。
5.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか
【母親Bさんが所有する自宅(甲土地および建物)の概要】
(現在)
注:1階のバス・トイレおよび2階部分は、下記の乙土地側にある。
(固定資産の交換後(地主Xさんの提案))
part2 ポイント解説
1. アドバイスに当たって必要な情報
(1) Aさんから直接聞いて確認する情報
地主との交渉はAさんが主体的に行うことが必要であるため、地主との関係とこれまでのトラブルの有無の確認が必要。
また、母親Bさんの今後の生活や月額地代・更新料の負担等について、遠方に居住するAさんの管理の手間等も勘案して、Aさん家族との同居の可能性や有料老人ホームへの入居時期等、今後のライフプランを確認する。
(2) FP自身が調べて確認する情報
乙土地・丙土地に分割する際の境界確認のため、甲土地の公図を法務局で取得しておくことが必要となる。公図は、一般的には、土地の大まかな位置や形状を表すものとして利用されており、すべての土地の区画が明確にされておらず、現況とは大きく異なる場合があるものの、境界確認の参考資料にはなる。
また、顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地の物理的状況を、実際に確認することが必要。
2. 固定資産の交換の特例の概要
固定資産の交換の特例は、土地や建物などの固定資産を同じ種類の固定資産と交換したときは、譲渡がなかったものとする特例(土地と借地権の交換も適用対象)。
固定資産の交換の特例では、交換で譲渡する資産と取得する資産は、いずれも1年以上保有していたものであることが必要。
また、固定資産の交換の特例では、互いの交換する固定資産の差額が、時価の高い方の固定資産の20%以内であることが必要。
なお、固定資産の交換の特例では、資産の一部分は交換・他の部分は売買とした場合、実態としてはその資産全体を売買代金とともに交換していることになるため、売買代金を交換差金等として、交換の特例の適否を判定する(高い方の20%以内か)。
3. 固定資産の交換取得時の建物取壊し・建替えの是非と、相続発生時の税務上の問題点
◆固定資産の交換取得時の建物取壊し・建替えの是非
地主Xさんの提案に沿う場合、建物が分割ラインをまたいでしまい、また建物も築40年であり、母親Bさんの今後の生活を考慮すると、バリアフリーの自宅建替えも検討に値する。
一方、将来的な有料老人ホーム入居を見据え、82歳というBさんの年齢を考慮すると、全面建替えした自宅で過ごす時間はあまり長くない可能性も高いため、生活の利便性・安全性を考慮し、分割ラインを超過している部分や2階部分を除去する「減築」リフォームも、全面建替えよりは費用負担を抑えられ、将来の有料老人ホームの入居費用を残しておけるため、検討すべきと思われる。
◆建物取壊し・建替えによる相続発生時の税務上の問題点
底地を交換取得して建物の建て替えた後に、所有者であるBさんに相続が発生した場合、相続財産は乙土地・建物と預貯金となる。
本問の場合、Aさん・Cさん・Dさんの子3人はいずれも母親Bさんと別居であり、当地で生活基盤を築いていることから、相続発生時には代償分割か換価分割により遺産分割する可能性が高い。
同居親族が取得しないことから、小規模宅地の特例も3000万円特別控除も適用できない可能性が高く、譲渡所得税負担が大きくなると思われる。
4. 固定資産の交換と借地権の譲渡を比較した際の選択提案
借地権の譲渡は、まとまった現金を取得できる利点があるが、母親Bさんは新たな住居を探すか、Aさん家庭と同居するか等、新たな住環境を模索することが必要となる。また、借地権の譲渡は現在の自宅とともに譲渡できれば3,000万円の特別控除が適用できるが、地主側の了承を得ることは難しいと思われ、譲渡所得税の負担も重い。
Bさんの希望を踏まえれば、固定資産の交換の特例を用いて乙土地を完全所有権とし、現在の自宅については減築リフォームする方が、課税を繰り延べしつつ、住み慣れた土地で余生を過ごす方が良いと思われる。
また、交換後は毎月の地代負担8万円が無くなるため、各種民間の見守りサービスと契約することで、遠方に居住する親族を安心させることも可能と思われる。
5. 関与すべき専門職業家
不動産取引に係る具体的な税金の質問等に関しては税理士、甲土地の分割時の正確な測量と境界の明示・分筆登記については土地家屋調査士、測量結果に基づいた適正な不動産価格の算定は、不動産鑑定士、土地の所有権移転登記等については司法書士が適当。
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