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2018年6月10日実技part1

2018年6月10日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(73歳)は、皮革製品の輸入販売を営む株式会社X社(非上場会社)の代表取締役社長である。最初は地元の商店街の一角で妻Bさん(71歳)と雑貨小売店から身を起こしたが、ヨーロッパブランドの皮革製品にいち早く着目し、百貨店向けの卸売で急成長を遂げた。現在ではオリジナルブランドを立ち上げ、業績は順調に推移している。
Aさんには3人の子がいる。長男Cさん(48歳)は、大手百貨店で8年間勤務した後にX社に入社し、商品開発に手腕を発揮する一方、専務取締役として販路拡大に取り組んでいる。また、長女Dさん(46歳)の夫Fさん(46歳)は、アパレルメーカーの財務部門に勤務していたが、長女Dさんとの結婚を機に、X社に入社し、今では常務取締役として管理部門の責任者を務めている。長男CさんおよびFさんの関係は良好であり、実質的には2人を中心とする経営体制が確立している。二女Eさん(44歳)は地方公務員の夫と子2人で戸建て住宅(持家)に暮らしているが、住宅ローンと子ども(17歳・14歳)の教育費の負担が大きく、Aさんに支援を求めている。
Aさんは、数年以内には長男Cさんに社長の座を譲るつもりであるが、マネジメント能力の高いFさんにも引き続き経営に参画してほしいと思っている。しかし、長女DさんまたはFさんに自社株式を承継すべきかについて迷っており、最終的な株主構成を描くことができず、対策に着手できていない。Aさんは、先日、商工会議所の事業承継セミナーに参加した際に紹介された事業承継税制の特例にメリットを感じたため、その内容について詳しく知りたいと思っている。
他方、Aさんは、銀行/生命保険会社/リース会社/不動産会社の営業担当者からさまざまな提案を受けており、X社や自身にとって有用な提案であれば採用したいと考えている。
なお、一次・二次ともに法定相続分どおりに相続した場合の相続税の総額は、一次相続では約3億8,000万円(役員退職金支給前・配偶者の税額軽減適用前)、二次相続では約2億6,000万円である(一次・二次ともに小規模宅地等の評価減適用前の税額であり、妻Bさんに自社株式以外の固有の財産はないものとする)。

【X社の概要】
資本金 :2,000万円
株主構成:Aさん60%、妻Bさん40%
従業員数:40人
会社規模:大会社
年商  :20億円
経常利益:1億円

【Aさんの家族構成】
妻Bさん (71歳) : Aさんと自宅で同居している。
長男Cさん(48歳) : 専務取締役。妻と子2人でマンション(持家)に住んでいる。
長女Dさん(46歳) : 専業主婦。夫と子1人で戸建て住宅(持家)に住んでいる。
二女Eさん(44歳) : 専業主婦。夫と子2人で戸建て住宅(持家)に住んでいる。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
現預金:2億円(退職金は考慮していない)
自宅 :1億円(土地(300u)9,000万円、建物1,000万円)
賃貸マンション:2億円(土地(400u)1億2,000万円、建物8,000万円)
X社株式   :4億円(X社株式の60%部分)
X社本社土地 :2億円(400u、無償返還方式・通常の地代にて賃貸している)

合計11億円

【親族関係図】

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part1 ポイント解説

1. 納税資金の不足、所得税・住民税・相続税の軽減対策

(1) 生命保険・金庫株の活用
(2) 役員退職金支払い(法人税の低減、退職所得控除による所得税低減効果も有り)
(3) 自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
(4) 小規模宅地の特例の活用
(5) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用

2. 遺産分割対策・事業承継対策

(1) 遺言の作成
(2) 遺留分に関する民法の特例の活用
(3) 相続時精算課税制度の活用
(4) 孫への教育資金贈与の非課税措置の検討
(5) 金庫株を用いた長男Cから長女D・二女Eへの代償分割

3. 事業承継税制の特例(平成30年度改正)の説明

X社株式については、非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用により、税負担なく移転することが可能。
平成30年度税制改正により、適用対象の株式数の上限が撤廃され全株式が適用対象となっており、また、納税猶予割合も100%に拡大したため、承継時の税負担はゼロになっている。
また、親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者(最大3人)への承継も適用対象になったため、本問のように、先代経営者とその配偶者から、後継者である子や娘婿(いずれも代表権を有し、議決権割合の10%以上かつ上位3位までの同族関係者)に贈与する場合も適用可能となっている。

さらに、5年間で平均8割以上の雇用を維持する要件を未達成の場合でも、納税猶予を継続可能になった(経営悪化等が理由の場合、認定支援機関の指導助言が必要)。

4. 長女Dの夫Fとの関係性を考慮した株主構成

株式の後継者以外への承継は、将来の株式散逸のリスクが高まるが、本問のように後継者以外の親族・従業員でも、経営陣の一員として株式を承継することは、先代経営者の引退後の経営体制を強化するメリットもある。
ただし、後継者以外にも株式を承継する場合には、後継者が承継する株式数の議決権割合を、株主総会の特別決議事項であっても単独で成立可能となる67%(3分の2)以上とし、会社の支配権を確立しておくことが必要。

また、突然の相続発生による株式散逸のリスクに備えるため、該当株式分を金庫株として自社で買い取り可能な余裕資金を用意しておくことも必要である。

5. 子・孫への生前贈与による遺産分割対策・資金援助

長男CさんがX社を承継することにより、長男Cさんの相続分が多くなる可能性が高いため、長女Dさん・二女Eさんを受取人とした生命保険や、X社本社建物の賃料を原資とした代償分割(相続後に分割払い)による、ある程度均等な相続も必要と思われる。
また、Aさんの妻の相続発生時(二次相続時)に、長女D・二女Eにより多くの遺産を相続させることも検討可能(遺産分割協議の中でこれらを記した公正証書遺言や贈与契約書の内容を検討することが望ましい)。

さらに、教育資金の非課税特例や相続時精算課税制度の活用により、積極的な長女D・二女Eへの生前贈与も検討できる。

6. 各社の営業担当者からの積極的な提案の採否

各社の提案は、いずれも相続税対策や退職後の資金運用対策として、以下のようなものと考えられる。

●銀行    :遺言信託商品や投資信託等の金融商品
●生命保険会社:死亡保険金の非課税枠を利用した保険商品や運用も加味した保険商品
●リース会社 :航空機や船舶等を複数者で購入し、航空会社等にリースすることで、減価償却による利益圧縮を図るオペレーティング・リース
●不動産会社 :不動産の相続税評価額減額を目的とした不動産購入

いずれの提案も、AさんやX社に対して適合すると思われる自社商品等を紹介していると思われるが、どの担当者も原則として自社商品に関してのみ提案するに止まるため、これらの提案を総合的に勘案し、採否をアドバイスをすることはできない。
FPとしては、各社の提案内容を総合的に勘案し、必要に応じて提案内容について担当者にもヒアリングした上で、Aさんに提案の採否のアドバイスを行うことが必要。

●FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な所得税・相続税の軽減対策・事業承継対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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