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2018年6月16日実技part1

2018年6月16日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(75歳)は、総合病院に勤務する医師だったが、10年前に退職し、現在は個人で不動産賃貸業を営んでいる。Aさんは、7年前に妻を亡くし、長女Cさん(45歳)と自宅で同居している。長女Cさんは5年前に仕事を辞めてから無職の状態が続いている。Aさんは、独身である長女Cさんの将来の生活について、不安を抱いている。
Aさんは、長女Cさん以外に2人の子がいる。長男Bさん(47歳)は、医学部を卒業後、母校の附属病院に勤務医として働いており、現在は、妻と子2人で病院近くのマンション(持家)に暮らしている。二男Dさん(41歳)は、海外の企業に勤務しており、現地で居を構えている。今のところ、日本に戻る予定はないようである。
Aさんは、老朽化した現在の自宅を二世帯住宅に建て替えて、長男家族と同居する方法を検討している。また、自宅の敷地が大きいことから、長男一家のために自宅の敷地に新居を建ててあげてもよいとも考えている。長男Bさんからは「将来のことを考えると、親父(Aさん)のそばで暮らしたほうがよいと思っている。今住んでいるマンションは住宅ローンが少し残っているが、売却すれば建築費用を工面できる。マンションを売却すると1,500万円程度の譲渡損失が発生するみたいだが、それは致し方ないと思っている」とのことであった。Aさんはどちらの方法(二世帯住宅あるいは別棟の新居)を選択するのか、建物の名義は誰にするのか、建築時期はいつがよいのか等、その判断がつかないでいる。
なお、Aさんは所有する駅前の賃貸マンションの1階部分(テナント)に長男Bさんが医院を開業してくれないかと期待している。

【Aさんの推定相続人】
長男Bさん(47歳):勤務医。妻と子2人で病院近くのマンション(持家)に住んでいる。
長女Cさん(45歳):無職。Aさんと同居している。
二男Dさん(41歳):海外の企業に勤務する会社員。妻と現地に住んでいる。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
1.現預金 : 8,700万円
2.自宅土地(450u) : 8,000万円
3.自宅建物(築40年): 300万円
4.駅前の賃貸マンション
 (1)土地(500u) : 1億8,000万円
 (2)建物 : 7,500万円(年間収入2,000万円)
5.青空駐車場(200u): 5,000万円(年間収入100万円)
6.海外投資マンション : 5,000万円(年間収入300万円)

合計 : 5億2,500万円

※Aさんの相続に係る相続税額は、約1億4,000万円(小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

【親族関係図】

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part1 ポイント解説

1. 納税資金の不足、相続税・所得税の軽減対策

(1) 生命保険の活用(法人契約だとより軽減効果有り)
(2) 小規模宅地の特例の活用
(3) 長女を代表取締役とした法人の設立と法人への不動産の譲渡

2. 遺産分割対策・事業承継対策

(1) 遺言の作成
(2) 相続時精算課税制度による生前贈与の活用
(3) 孫への教育資金贈与、結婚・子育て資金贈与の非課税措置の検討

3. 法人設立による相続税・所得税の軽減対策

Aさんが現在多額の賃貸収入を得ており、また不動産の評価額も多額であるため、所得税・相続税の負担が大きいと考えられる。よって、法人の設立による税負担の軽減対策を提案する。

(1)長女を代表取締役とした法人の設立
法人設立による所得移転・資産分散効果を最大限に活かすため、出資者・役員は推定被相続人となる親ではなく子を中心とすることが望ましい。
建物の所有権の移転手続きや不動産取得税等の移転コストがかかるが、家賃収入が法人に入るため、所得移転効果が高い。また、法人税の比例税率と所得分散による所得税・相続税低減効果有り。
また、現在独身で無職状態が続いている長女の将来についても、一定の収入と肩書を用意することが可能。

(2)法人への不動産の譲渡
設立した法人に対し、賃貸建物のみを簿価で譲渡することで、譲渡損益を発生させずに不動産を個人から法人に移転させることが可能。
買い取り資金がない法人であっても、利息無しの長期分割払いとすることで対応可能となる。

(3)土地の無償返還に関する届出書の提出
法人側での借地権の認定課税を避けるため、土地の無償返還に関する届出書を提出するか、相当の地代を支払うこととする。

4. 長男の自宅マンションの譲渡損失の取扱い

住宅ローンのある住宅をそのローン残高を下回る価格で譲渡した場合、特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除により、損失の損益通算や繰越控除が可能
ただし、本問の場合「住宅ローンが少し残っているが、売却すれば建築費用を工面できる。」とあるため、売却価格はローン残高を上回っている可能性が高い。

また、二世帯住宅や別棟の新居を建築する際、長男が建築費用を負担して長男名義の新居として取得した場合、居住用財産の買換え時の譲渡損失の損益通算・繰越控除により、譲渡損失とその年の他の所得との損益通算が可能で、損益通算後も控除しきれない損失は、譲渡年の翌年以降3年以内での繰越控除が可能
ただし、適用要件として、買換えた新居の住宅ローン(適用年の12月31日時点で10年以上)があることが必要。

後述の小規模宅地の特例の活用を考慮すると、二世帯住宅や新居を長男名義とすることは得策とは言い難いため、買換えよりもAさん負担・Aさん名義の住宅とする方がよいと思われる。

5. 二世帯住宅と別棟の新居の選択、建物の名義、建築時期等の判断

小規模宅地の特例において、二世帯住宅については、内部が独立していても特定居住用宅地として適用可能であるため、将来Aさんに相続が発生した場合、長男が自宅敷地を相続する際も同居親族として特例適用対象となる。
これに対し、別棟の新居を建築した場合、同じ敷地内の建物であっても、同居親族とはみなされないため、長男が自宅敷地を相続する際は、建物がAさん名義であっても特例の適用対象外となってしまう。また、現在同居の長女が相続する場合には、同居親族として自宅敷地は特例の適用対象となるが、長男の新居については土地の名義は長女となり、トラブルの原因となりかねない。
よって、相続税だけを考慮するならば、二世帯住宅とし、名義はすべてAさん名義としておくことを勧める(1階は父名義で2階は長男名義といった、区分所有登記が設定されていと小規模宅地の特例の適用対象外)。

また、建築時期については、平成30年10月1日より消費税が8%から10%に増税されるため、平成31年(2019年)10月1日以降に引渡しを受ける住宅は、新税率10%が適用されることから、建築時期によっては税負担が重くなる。ただし、注文住宅など請負契約を行う住宅については、経過措置により、平成31年3月31日までに請負契約を締結した住宅は、10%への消費税引上げ後(10月1日以降に引渡し)でも、改正前の税率(8%)が適用される。

本問の場合、二世帯住宅の建築は注文住宅として請負契約になると思われるため、消費税負担が重くならないよう、平成31年3月31日までの契約締結を目指すことを勧める。

6. 所有する不動産における長男の開業

長男から賃料を取らずに賃貸マンションの1階部分(テナント)を使用貸借させる場合、個人間の使用貸借として原則贈与税はかからないが、相続時には自用地評価となることに注意が必要。

また、前述のように法人を設立して所得分散を図った場合、建物の所有者が法人になると、本来徴収されるはずの通常の賃貸料相当額が、長男の所得税の課税対象となる恐れがある。

●FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・事業承継対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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