問41 2018年9月基礎
問41 問題文
借地権の設定に際して権利金を支払う取引上の慣行のある地域において、賃貸マンションおよび敷地である甲土地を所有しているAさんは、不動産管理会社の設立を検討している。Aさんが、設立した不動産管理会社に対して、賃貸マンションの建物を売買により移転し、甲土地を貸し付けた場合、「土地の無償返還に関する届出書」に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1) 不動産管理会社が、権利金や地代を支払わず、甲土地を使用貸借契約により借り受けた場合は、「土地の無償返還に関する届出書」を提出しなくても、不動産管理会社に対して借地権が認定課税されることはない。
2) 不動産管理会社が、権利金や地代を支払わず、甲土地を使用貸借契約により借り受け、「土地の無償返還に関する届出書」を提出した場合において、Aさんに相続が開始したときは、相続税額の計算上、甲土地の価額は「自用地価額×80%」の算式により評価される。
3) 不動産管理会社が、権利金を支払わず、甲土地を通常の地代による賃貸借契約により借り受け、「土地の無償返還に関する届出書」を提出した場合において、Aさんに相続が開始したときは、相続税額の計算上、甲土地の価額は「自用地価額×(1−借地権割合)」の算式により評価される。
4) 不動産管理会社が、権利金を支払わず、甲土地を通常の地代による賃貸借契約により借り受け、「土地の無償返還に関する届出書」を提出した場合において、Aさんに相続が開始したときは、相続税額の計算上、所定の要件を満たせば、甲土地は「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」の対象となる。
問41 解答・解説
法人と役員間の取引における課税に関する問題です。
1) は、不適切。法人が役員保有の土地を建物の所有を目的として賃借する場合、法人から役員へ権利金や相当の地代の支払がなく、「土地の無償返還に関する届出書」についても提出がないときは、法人側では原則として借地権の受贈益が認定課税(権利金の慣習がある地域の場合は権利金相当額)されます。
また、地主が個人の場合、認定課税はされません(役員側では課税なし)。これは、個人の場合、法人と違って必ずしも経済的利害だけで取引が行われるとは限らないため、無償による資産の譲渡や役務の提供は収入があるとみなさないためです。
2) は、不適切。借地権が設定されている土地で、「土地の無償返還に関する届出書」が税務署長に提出されている場合、その土地の借地権の価額は、評価せず0円とします。
借地権を設定していても、借りている土地を無償で返還する(借地権の買取なし)ことになるため、土地の使用権は経済的価値が極めて低いと考えられ、相続税評価上はゼロとなるためです。
ただし、借地権の評価が0円とはいえ、実際に土地が使用されていれば、借地人への法的保護も発生しますし、地主にとっては賃貸借契約により土地利用が制約されるため、権利金や相当の地代を支払う賃貸借契約では、貸宅地について「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている場合は、借地権割合を20%として、その土地の相続税評価額を算出(自用地価額×80%)しますが、権利金や相当の地代の支払がない使用貸借の場合には、相続税評価上も借地権割合は考慮されず、自用地として評価されます。
3) は、不適切。法人が役員保有の土地を建物の所有を目的として賃借する場合、法人から役員へ権利金や相当の地代の支払がないときでも(通常の地代のみの支払いを含む)、「土地の無償返還に関する届出書」を提出すれば、法人側では借地権の認定課税がないことから、相続税評価額も自用地として評価されます。
4) は、適切。使用貸借している土地は小規模宅地の特例の適用対象外ですが、法人が役員保有の土地を建物の所有を目的として賃借する場合、法人から役員へ権利金や相当の地代の支払がないときでも(通常の地代のみの支払いを含む)、「土地の無償返還に関する届出書」を提出すれば、法人側では借地権の認定課税はなく、通常の地代を支払うことで、賃貸借契約として小規模宅地の特例の適用対象となります。
よって正解は、4
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