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2019年2月10日実技part1

2019年2月10日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(73歳)は、N市において個人で不動産賃貸業を営んでいる。Aさんは、妻Bさん(68歳)および地元企業に勤務する長男Cさん(42歳)家族と同居している。大手企業に勤務する二男Dさん(40歳)は、東京都内の自宅マンションに居住しているが、本人は結婚するつもりはないらしく、地元のN市に戻る予定もないようである。長女Eさん(38歳)は、夫と子2人で大阪府内の社宅に暮らしている。

【義母の相続手続】
2カ月前、1人暮らしをしていた義母(88歳)が他界した。妻Bさんが義母の相続財産を調べたところ、定期預金等が複数の金融機関に合計で3,000万円程度あることが判明した。義母が1人で暮らしていた自宅の敷地・建物(妻Bさんの実家)および実家に隣接する賃貸アパート1棟の評価額を加えると、相続財産の合計額は1億円以上になると思われる。Aさん夫妻は、四十九日の法要が終わったこともあり、そろそろ義母の相続手続等に着手しなければならないと思っている。

【Aさんの資産承継】
Aさんは、自身の相続について、自宅を含む相続財産のすべてを長男Cさんに承継させ、先祖代々の土地を守ってもらいたいと思っている。妻Bさんは「長男に家を守ってもらいたい。私は母の相続で相応の財産を取得したため、あなた(Aさん)の財産はいらない。空き家となった実家は売却して、現金化したいと思っている。このまま、長男家族と穏やかに暮らすことができればよい」と言っている。また、Aさんは、先日、金融機関の渉外担当者の訪問を受けた際に、配偶者居住権や自筆証書遺言に関する民法の改正案が成立した旨の話を聞いており、これらの制度等の概要を知りたいと思っている。
なお、二男Dさんは、妻Bさん・長男Cさんと折り合いが悪く、義母の葬儀で帰省した際にも言い争いがあり、Aさんの悩みの種である。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
1.現預金 : 7,000万円
2.自宅土地(450u) :9,000万円
3.自宅建物(築40年):300万円
4.自宅に隣接する賃貸マンション2棟
(1)甲マンション :1億3,000万円(土地(400u)1億円、建物3,000万円)
(2)乙マンション :1億2,500万円(土地(300u)7,500万円、建物5,000万円)

合計 :4億1,800万円

※Aさんの相続に係る相続税額は、約9,000万円(小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

【親族関係図】

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part1 ポイント解説

1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策

(1) 生命保険の活用
(2) 小規模宅地の特例の活用
(3) 法人への不動産の売却

2. 遺産分割対策・資産承継対策

(1) 遺言の作成
(2) 相続時精算課税制度・直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度の活用
(4) 孫への教育資金贈与の非課税措置の検討

3. 相続財産の名義変更手続き・相続税の申告手続き

相続財産の名義変更手続きは、預金の名義変更手続き(銀行の相談コーナー等)や、不動産の名義変更手続き(法務局で相続登記)が必要となる。いずれも、被相続人・相続人全員の戸籍謄本や遺言書・遺産分割協議書のほか、不動産については登記簿謄本等が必要。
また、財産の名義変更ではないものの、公的年金については未支給年金の請求届出、クレジットカードの未払い分の支払い手続き等が必要になる。

相続税の申告・納付の手続きは、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内に行うことが必要。なお、相続税の申告書の提出先は、財産を取得した相続人の住所地の所轄税務署ではなく、被相続人の住所地の所轄税務署となる。
申告と納税は相続人自身でも可能だが、相続人が被相続人の住所地とは離れて暮らしている場合には、税理士に申告と納税手続きの代行を依頼することを提案する。

4.配偶者居住権や自筆証書遺言に関する民法の改正

●配偶者居住権の創設
遺産分割の結果、被相続人と同居していた配偶者が自宅を相続すると、金融資産を相続できずにその後の生活に支障をきたす等の事態を避けるため、被相続人と自宅で同居していた配偶者が、相続後も自宅に住み続けられるように、「配偶者居住権」が創設され、2020年4月以降に発生する相続が対象となる。
配偶者居住権には短期と長期があり、配偶者短期居住権は遺産分割で他の相続人が自宅を相続した場合にも、配偶者は最低6ヶ月間無償で居住を継続可能となる権利であり、配偶者長期居住権は遺産分割や遺贈で定めることにより、配偶者自身が亡くなるまで有効な居住権であり、自宅の所有権と居住権を分けて評価することで、自宅の所有権は他の相続人が取得しても、配偶者は居住権を取得することで居住を継続可能とし、同時に居住権は所有権よりも評価額が低くなると想定されることから、金融資産の相続もしやすくなる

●自筆証書遺言の要件緩和
2019年1月より、自筆証書遺言の財産目録についてはパソコン作成や通帳のコピー添付も可能(遺言本文は手書き)となっており、2020年7月からは、法務局に保管した自筆証書遺言は、公正証書遺言と同様に検認不要となる予定

5. 相続人間の平等な相続方法

妻Bさんには、母親から十分な資産を相続しており、Aさんの相続が発生しても財産を希望していないことから、自宅については長男に相続させ、妻Bさんには配偶者長期居住権を定めて引き続き自宅に居住できるようにする。

長男CさんがAさんの不動産賃貸業を承継する場合、他の相続人の遺留分を侵害してしまい、折り合いの悪い二男Dさんはもちろんのこと、長女Eさんとの間にも相続トラブルが発生する可能性がある。従って、二男Dさんや長女Eさんを受取人とした生命保険の加入や、長男が相続した賃貸マンションを担保とした不動産ローンにより金融機関から融資を受け、それを原資とした代償分割も必要と思われる。
また、Aさんの妻の相続発生時(二次相続時)に、二男Dや長女Eにより多くの遺産を相続させることも検討可能(遺産分割協議の中でこれらを記した公正証書遺言や贈与契約書の内容を検討することが望ましい)。

さらに、教育資金の非課税特例や、相続時精算課税制度・直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度の活用により、積極的な二男D・長女Eへの生前贈与も検討できる。

●FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・資産承継対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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