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2019年6月9日実技part2

2019年6月9日実技part2

part2 問題文

●設 例●
Aさん(78歳)は、首都圏近郊の戸建て住宅(敷地200u、敷地の相続税評価額3,000万円、建物の固定資産税評価額500万円)に妻Bさん(73歳)と2人で暮らしている。Aさん夫妻には1人息子の長男Cさん(45歳)がいる。長男Cさんは、大学卒業後、東京都内の会社に就職し、現在は妻と子2人で10年前に購入した戸建て住宅(持家)に住んでいる。長男Cさんが勤務する会社の事業環境は良好とはいえず、賃金は上がっていない。Aさんは、長男Cさんの求めに応じて、数年前から年間数十万円程度の資金援助をしている。

【Aさんの相談内容】
Aさんは、父親から相続した金融資産を活用して8年前に賃貸アパートを取得した。Aさんは、サブリース業者のX社にアパートを一括賃貸し、X社は入居者と転貸借契約を締結している。先日、X社から保証賃料の減額請求があり、Aさんは15%の減額に応じた。X社からは、今後についても市場環境を踏まえて、保証賃料の改定をお願いする可能性がある旨の話があり、Aさんは不動産賃貸業の難しさを実感している。
Aさんは、いずれ賃貸アパートの経営を長男Cさんに引き継ぐ意向を持っているため、資金援助を兼ねて、現時点において、賃貸アパートを長男Cさんに生前贈与し、X社との契約を長男Cさんに承継しようと考えている。Aさんが不動産会社出身の知人に相談したところ、下記の2つの方法があると提案されたが、よくわからないため、FPであるあなたに相談することにした。

I案 :賃貸アパートの建物のみを長男Cさんに贈与する。
II案:賃貸アパートの建物および土地を長男Cさんに贈与する。

Aさんは預貯金を5,000万円程度保有しており、Aさん夫妻の年金収入は合わせて月額30万円である。賃貸アパートの収入がなくなっても、生活に大きな不安はない。

【Aさんが所有する賃貸アパートの概要】
・軽量鉄骨造2階建て、敷地面積200u、延べ床面積240u、総戸数6戸、築8年
・最寄駅から徒歩7分
・1戸平均月額8万円で現在5戸賃貸中、AさんがX社から受領している敷金は48万円
・X社に一括賃貸(普通建物賃貸借)して、管理を委託しており、減額改定後の月額保証賃料は32万円(年間384万円)で、固定資産税・都市計画税、修繕費、火災保険料などの諸費用を控除した後にAさんの手元に残る金額は年間300万円程度である。
・賃貸アパートに係る借入金はない。
・敷地の相続税評価額2,800万円(自用地価額、前面道路の路線価140C)
・建物の固定資産税評価額2,000万円

(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、どのようなことを確認・調査すべきですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)Aさんから直接聞いて確認する情報
(2)FPであるあなた自身が調べて確認する情報(特に、X社からの賃料の減額請求に対応するためには、どのようなことを確認しなければなりませんか)
2.賃貸アパートを贈与した場合の課税関係について教えてください。また、賃貸アパートの建物のみを贈与する場合の税務上の留意点を説明してください。
3.Aさんの相談に対して、どのような提案をしますか。
4.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

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part2 ポイント解説

1. アドバイスに当たって必要な情報

(1) Aさんから直接聞いて確認する情報
X社とのサブリース契約が適切なものであるか確認するため、契約書面の有無やその内容を確認することが必要。
また、賃貸アパートの生前贈与を受けることになる場合、サブリース業者との契約や確定申告等の事務手続き負担が発生するため、長男Cさん自身の意向を確認しておくことが必要。

(2) FP自身が調べて確認する情報(X社からの賃料の減額請求に対応する方法)
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地・建物の物理的状況を、実際に確認することが必要。
また、サブリース業者であるX社が今後安定して事業を継続していくことが可能か、周辺地域で同様の保証賃料の減額請求があるかどうかや、用途地域・地方自治体の都市計画等を確認し、今後の開発予定・環境変化を把握することが必要である。
さらに、近隣の不動産相場を確認し、現在のX社とのサブリース契約が適切な相場であるかや、弁護士に相談してAさんのケースが賃料減額請求として判例上認められる程度のものであるかを確認することも必要である。

2. 賃貸アパートを贈与した場合の課税関係と、建物のみを贈与する場合の税務上の留意点

賃貸アパートの土地・建物を両方生前贈与した場合、相続時の評価額は当然貸家建付地となるが、贈与時には相続時精算課税を適用しても、贈与税負担が発生する。

これに対し、建物だけの贈与であれば相続時精算課税の2,500万円特別控除の範囲内のため、贈与税負担を回避できる。
ただし、通常、親子や親族間で土地を使用貸借している場合、その土地を第三者に貸し付けていても、相続税評価額は自用地として評価されてしまう。
しかし、建物を生前贈与した後に相続が発生し、建物の借主が贈与以前から相続時まで変わっていなければ、使用貸借していても貸家建付地として評価減することが可能
よって、賃貸アパートの建物だけを長男Cさんに贈与し、土地は使用貸借とすれば、生活資金に余裕のない長男Cさんは家賃収入を得られ、相続時まで借主が変わらなければ、相続時の評価額も貸家建付地となる。

3. 相談に対する提案方法

賃貸アパートの贈与については、I案の「建物のみを長男Cさんに贈与」することを提案する。
これにより、建物の贈与については相続時精算課税を適用することで贈与税負担を回避することが可能。また、使用貸借により賃貸アパートの敷地は自用地評価となってしまうが、相続開始までサブリース業者との契約が継続していれば、貸家建付地として評価減することが可能となる。

なお、X社とのサブリース契約による保証賃料は今後も減額が予想されるため、管理会社への管理業務委託や自主管理も視野に入れていくことが必要と思われる。

また、長男Cさんへの資金援助額は現在年間数十万円程度であることを考慮すると、将来発生する相続税の納税資金を確保できた段階で、賃貸アパートを売却して債券中心の金融資産に組み替えることで、必要以上のリスクを取らずに利子・配当等で安定した収入を得ることも提案できる。

4. 関与すべき専門職業家

賃貸アパートの贈与における、土地の所有権移転登記等については司法書士課税上の取扱いに関する具体的な税務相談については税理士が適当。
また、今後サブリース契約の解除等も視野に入れていく場合、具体的な法律事務や法律判断に基づく権利関係の処理については弁護士宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、不動産業者やデベロッパーが適当。

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