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2019年6月15日実技part1

2019年6月15日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(61歳)は、パン・洋菓子X堂を営む個人事業主である。X堂は、Aさんの父親(既に他界)から承継したものである。父親の時代は2〜3名の従業員を使用する規模の小さい店であったが、現在は無借金経営を続けながら、年商2億4,000万円/従業員20名を超えるまでの優良店にした。今後は地元百貨店に出店することを計画している。妻Bさん(58歳)は青色事業専従者として給与を受け取っている。

【事業承継に関するAさんの意向】
Aさんは、有名洋菓子店で働く長男Cさん(31歳)を後継者として考えている。長男Cさんは、昨年結婚し、2月に第1子が生まれた。先日、Aさんが長男Cさんに店の事業承継、実家での同居などを相談したところ、長男Cさんから「近い将来、X堂に戻って、店を大きくしたいけれど、今の職場でもう少し経験を積みたいと思っている。同居について、妻は賛成している」と言われ、後継者問題にはめどがついたと安心している。Aさんは、先日、個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度の話を聞いたところであるが、この制度が店の事業承継に活用できるものなのか、よくわからない。
他方、Aさんは所得税の負担が重いことをかねてから気にしており、所得税対策として法人成りが有効であるという話を聞いたことがある。X堂を法人化したうえで長男Cさんに事業承継したほうがよいのか、検討したいと思っている。

【Aさん自身の資産承継に関するAさんの意向】
妻Bさんの生活の安定を第一に考えているが、将来的には、長男Cさんに全財産を引き継がせたいと思っている。一方、東京都内の大手商社に勤務する二男Dさん(29歳)に財産を承継させることは不要であると考えている。長男Cさんと二男Dさんは子どもの頃から仲がよく、Aさんは2人の子が遺産分割で揉めることはないと信じている。

【Aさんの家族構成】
妻Bさん (58歳) :青色事業専従者。Aさんと自宅で同居している。
長男Cさん(31歳):会社員。勤務先の借上げ社宅に妻と子の3人で住んでいる。
二男Dさん(29歳):会社員。独身。東京都内の持家(マンション)に住んでいる。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
1.現預金 : 8,000万円
2.店舗
 (1)土地(800u) : 1億5,000万円
 (2)建物(床面積500u) : 7,000万円
 (3)内装 : 3,000万円(簿価)
3.自宅土地(500u) : 9,000万円
4.自宅建物 : 1,000万円

合計 : 4億3,000万円

※Aさんの相続に係る相続税額は、約1億円(配偶者の税額軽減および小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

【親族関係図】

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part1 ポイント解説

1. 納税資金の不足、相続税・所得税の軽減対策

(1)生命保険の活用(法人契約だとより軽減効果有り)
(2)小規模宅地の特例の活用
(3)個人版事業承継税制(個人事業用資産の贈与税・相続税の納税猶予・免除)の活用
(4)長男を代表取締役とした法人の設立と法人への不動産の賃貸

2. 遺産分割対策・事業承継対策

(1) 遺言の作成
(2) 相続時精算課税制度の活用

3. 個人版事業承継税制(個人事業用資産の贈与税・相続税の納税猶予・免除)に関する説明

個人版事業承継税制(個人事業用資産の贈与税・相続税の納税猶予・免除)では、2019年1月1日〜2028年12月31日までの相続・贈与が対象で、土地・建物や機械・器具備品、車両・運搬具、乳牛や果樹等の生物、特許権等の無形償却資産といった事業用資産の承継における、相続税や贈与税の全額が納税猶予され、後継者の死亡といった一定の事由により、納税免除される。

法人の事業承継税制と同様に、先代事業者・後継者(経営承継受贈者)それぞれの適用要件を満たした上で2024年3月31日までに個人事業承継計画を都道府県知事に提出して確認を受け、経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の認定を受けることが必要(事業用資産の贈与は、最初の贈与の日から1年経過日までに実施)。

ただし、個人版事業承継税制(個人事業用資産の贈与税・相続税の納税猶予・免除)は、既存の事業用小規模宅地の特例との選択制であるため、併用できないことに注意が必要。

4. 所得税対策としての法人化と事業承継

妻Bさんが青色事業専従者として給与を受け取っており、ある程度所得税負担は軽減できているが、法人化することでさらに税負担の軽減を図ることが可能。

○メリット
・ 社会的信用の向上(法人会計による適正な財務管理)
法人税の比例税率による所得税負担の軽減
親族を役員にすることによる所得分散効果
・ 役員退職時の役員退職金の損金算入 等

○デメリット
・ 法人会計による決算業務等の事務負担の増加 等

⇒法人設立による所得税負担の軽減は、個人所得が900万円程度以上ないと十分なメリットを享受できないが、Aさんの場合年商2.4億円であり、従業員数を考慮しても多額の所得を得ていると思われ、税負担のメリットを享受できると思われる。

なお、個人版事業承継税制(個人事業用資産の贈与税・相続税の納税猶予・免除)の適用後、最初の贈与税・相続税の申告期限の翌日から5年経過後に、納税猶予された事業用資産の現物出資により法人成りした場合、引き続き納税猶予を受けられる。
従って、事務負担を考慮すると、まずは個人版事業承継税制の手続きを進め、後継者である長男Cさんの意向も踏まえつつ、事業承継が確実に進んでから法人化を検討していくことを提案する。

5.二男Dが納得する遺産分割対策

長男Cさんと二男Dさんは子どもの頃から仲がよいとはいえ、遺産の大半を長男Cさんが相続するとなると、遺産トラブルに発生する可能性がある。
そのため、二男Dさんを受取人とした生命保険や、相続時精算課税の活用による積極的な生前贈与による、ある程度均等な相続も必要と思われる。
また、Aさんの妻の相続発生時(二次相続時)に、二男Dにより多くの遺産を相続させることも検討可能(遺産分割協議の中でこれらを記した公正証書遺言や贈与契約書の内容を検討することが望ましい)。

なお、X堂を法人化した際は、店舗関連の不動産をX社に賃貸する形式とすることで、後継者である長男Cさんが賃貸収入を受け取り、将来の相続発生時の代償分割の原資とすることも検討できると思われる。

●FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・事業承継対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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