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2019年6月16日実技part1

2019年6月16日実技part1

part1 問題文

●設 例●
株式会社X社(非上場会社・金属製品製造業)は、代表取締役社長Aさん(75歳)が40年前に設立した会社である。X社は高い技術力で取引先からの信頼が厚く、業績は堅調に推移している。X社では、現在、2年前に大手メーカーを退職してX社の専務取締役に就任した長男Bさん(45歳)を中心に、取引先のさらなる開拓を進めている。X社の余剰資金は6億円以上あり、経営は安定している。

【X社の事業承継に関して】
Aさんは、自身の年齢のことを考えると、事業承継について早期に道筋をつけたいと思っている。Aさんは、2〜3年後をめどに社長職を辞し、長男BさんにX社を承継する予定としているが、X社株式をどのように移転するのがよいのか悩んでいる。

【Aさん自身の資産承継に関して】
長男Bさんは、大手メーカー勤務時代に購入した持家に妻と2人の子で暮らしており、妻の仕事や子の進学のことを考えると、現在の自宅に住み続ける予定である。
長女Cさん(42歳)は、会社員の夫と結婚後、長男(9歳)を授かったが、3年前に離婚した。現在は長男とともに、X社が保有する社宅でAさんと同居し、Aさんの身の回りの世話をしている。
Aさんは、所有財産のうち、長男BさんにX社株式・X社本社土地/建物を承継し、長女Cさんに相応の金融資産および賃貸アパートを相続させようと考えている。また、現在住んでいるX社の社宅を将来も長女Cさんが住居として利用できないかと考えている。
Aさんは、社宅を購入した場合、金融資産が少なくなるため、相続税の支払に一抹の不安を感じているが、長男Bさんと長女Cさんは仲がよく、遺産分割で揉めることはないと安心している。

【Aさんの家族構成(推定相続人)】
長男Bさん(45歳):X社専務取締役。妻と2人の子で戸建て住宅(持家)に住んでいる。
長女Cさん(42歳):無職。離婚後、長男(9歳)とともに、Aさんと同居している。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
現預金   : 1億5,000万円(役員退職金は考慮していない)
X社株式  : 8億円
X社本社土地: 1億2,000万円(400u)
X社本社建物: 9,000万円(年間家賃800万円)
賃貸アパート: 8,000万円(土地(200u)5,000万円、建物3,000万円)

合計 : 12億4,000万円

※Aさんの相続に係る相続税額は、約5億1,500万円(小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

【X社の概要】
資本金 :5,000万円
会社規模:大会社
従業員数:130人
売上高 :25億円
経常利益:8,000万円
純資産 :10億円
株主構成(発行済株式総数10万株):Aさん100%
株式の相続税評価額:類似業種比準価額8,000円/株、純資産価額1万3,000円/株

【親族関係図】

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part1 ポイント解説

1.納税資金の不足、相続税の軽減対策

(1) 生命保険・金庫株の活用
(2) 役員退職金支払い(法人税の低減、退職所得控除による所得税低減効果も有り)
(3) 自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
(4) 小規模宅地の特例の活用
(5) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度の活用
(6) 法人への不動産の売却

2. 遺産分割対策・事業承継対策

(1) 遺言の作成
(2) 遺留分に関する民法の特例の活用
(3) 相続時精算課税制度・直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度の活用
(4) 孫への教育資金贈与の非課税措置の検討
(5) 金庫株を用いた長男Bから長女Cへの代償分割

3. 事業承継税制の特例の活用とタイミング・スケジュール

X社株式については、非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用により、税負担なく移転することが可能。
平成30年度税制改正により、適用対象の株式数の上限が撤廃され全株式が適用対象となっており、また、納税猶予割合も100%に拡大したため、承継時の税負担はゼロになっている。

非上場株式等についての贈与税の納税猶予・免除を受けるには、会社・後継者(経営承継受贈者)それぞれの適用要件を満たした上で2023年3月31日までに特例承継計画を都道府県知事に提出して確認を受け、経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の認定を受けることが必要(株式の贈与は2027年12月31日までに実施)。

4. X社の社宅を将来も長女Cが住居として利用する方法

社宅の場合、あくまでその会社の役員・従業員のための住居であるため、その役員・従業員が退職・解雇・死亡等により、その会社の構成員ではなくなった場合、同居していた家族も一定期間後に退去を求められることになる。

AさんがX社から社宅を買い取った場合、金融資産が減少し相続税の納税資金が不足する可能性が高くなる。そのため、Aさんが保有するX社株式をX社が金庫株として買い取る方法が提案できる。
ただし、個人が非上場株式をその発行会社に譲渡した場合、買い取ってもらった金額のうち資本金等の額を超える分については、「みなし配当」(配当所得)となり、総合課税として累進税率が適用される。

なお、社宅の買い取り時には適正な時価よりも低額で譲渡される場合もあるが、法人が所有する不動産等を役員に低額譲渡した場合、法人側では時価で譲渡したものとされ、時価と売買価額の差額が役員給与として損金不算入となる。役員側では時価と売買価額との差額は、給与所得として課税される。

5. 相続人間の平等な相続方法

長男BさんがX社を承継することにより、長男Cさんの相続分が多くなる可能性が高いため、長女Cさんを受取人とした生命保険や、X社本社建物の賃料を原資とした代償分割(相続後に分割払い)による、ある程度均等な相続も必要と思われる。
さらに、教育資金の非課税特例や、相続時精算課税制度・直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度の活用により、積極的な長女Dへの生前贈与も検討できる。

●FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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