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2020年9月26日実技part2

2020年9月26日実技part2

part2 問題文

●設 例●
Aさん(80歳)は、三大都市圏に所在するS市内の自宅で妻Bさん(75歳)と大手メーカーに勤務する長男Cさん(52歳)家族と暮らしている。同居している長男Cさんの一人息子の孫Dさん(27歳)は近々結婚の予定があり、現在、S市内の新居を探している。

【甲土地の概要および売却の検討】
A家は、代々の農家であり、Aさんは先代の相続により取得したS市内の甲土地(地積:6,000u、現況:山林)を所有している。甲土地はクヌギ・コナラなどが茂る林地であり、S市の緑地保全条例による緑地保護地区に指定(申請により解除可)され、固定資産税等は免除されている。周辺住民の苦情が多い落ち葉の清掃や、下刈り、枝払いなどの管理をAさんが行ってきたが、最近は体力的に厳しくなってきた。
Aさんは、長男Cさんと相談のうえ、甲土地の売却を検討しているものの、以前、地元の不動産会社の社長から「甲土地は最寄りのS駅に比較的近く、戸建て住宅の用地としては適地であるが、甲土地を宅地造成するには大きな欠点がある」と言われたことがある。

【甲土地の形状およびその周辺の概要】
甲土地は、高低差が約7mあり、北側から南側にかけて緩やかに傾斜している。甲土地の最有効使用は140u程度の区画に細分化し、戸建て住宅にすることである。造成後は、南ひな壇の良好な住宅地になると思われる。
甲土地の北側一帯は古くからの旧家が建ち並ぶ地域である。南側は、20年以上前に旧日本住宅公団が土地区画整理事業により開発した大型の住宅団地である。また、東側および西側の住宅地は、甲土地と同様の山林であったが、3年前と5年前に地元の不動産会社が開発・分譲したものである。現在では、甲土地だけが取り残されている。
南側市道内には、市営水道管・公共下水管・雨水排水管・都市ガス管が埋設されている。他方、旧家が建ち並ぶ北側市道内には、市営水道管・雨水排水管のみが埋設されている。

【甲土地の南側に隣接するEさん宅】
Aさんは、先日、S駅前にあるX住宅販売店(大手不動産会社のチェーン店)の営業担当者からEさん宅が売りに出されていることを聞かされた。Eさん宅(地積:165u、間口12.5m・奥行13.2m、築20年、延床面積130u)の販売価格は3,500万円、建物はリフォームしたばかりで綺麗とのことである。最寄りのS駅は、Eさん宅から西側の方向に徒歩7分の位置にある。Aさんは、Eさん宅が孫Dさんの新居によいのではないかと思っている。

(FPへの質問事項)
1.甲土地を宅地造成する際の大きな欠点とは何だと思いますか。それは、Eさん宅を購入することで解決することはできますか。
2.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報(確認)が必要ですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)Aさんから何点か具体的に確認したいことがありますが、どのようなことですか。
(2)FPであるあなたが確認しておくべきことは、どのようなことですか。
3.現時点において、Aさんの相続が開始した場合、甲土地の相続税評価額はどのように計算しますか。
4.Aさんにどのようなアドバイスをしますか。甲土地の売却、Eさん宅の購入の可否など、あなたの考えを教えてください。
5.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

【甲土地および周辺の概要】


<甲土地の概要>
地積6,000u(間口60m×奥行100m)、地目:山林
平均斜度3.2度(高低差7m、北側から南側にかけて緩やかに傾斜)
第一種低層住居専用地域、宅地造成工事規制区域
緑地保護地区(解除申請により、無条件で解除することができる)
指定建蔽率50%、指定容積率100%

<S市の開発指導要綱による規制>
公園(開発面積の3%以上)、道路幅員6m以上、最低区画120u
20区画以上の場合、集中浄化槽の設置が必要

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part2 ポイント解説

1.甲土地を宅地造成する際の大きな欠点とEさん宅の購入による解決可否

甲土地が直接面している北側市道内には、市営水道管・雨水排水管のみが埋設されており、公共下水管や都市ガス管が埋設されていないことから、単純に甲土地を宅地造成しようとしても、そうしたインフラを整備するか、もしくはその分を割り引いた価格での販売を想定することが必要となる。
資料の図面から、甲土地を宅地造成すると24区画程度になると思われるが、S市の開発指導要綱により「20区画以上では集中浄化槽の設置が必要」とあり、南側の公共下水管に接続できなければ、下水処理は集中浄化槽を用いることになる。
※集中浄化槽:下水等の生活排水をバクテリアで分解する装置で、集中浄化槽は集合住宅等の数十人規模の排水処理が可能。設置後も維持費用の負担が発生する。
また、都市ガス管が使用できなければプロパンガス等を設置することになるため、ガス使用料は割高となる。

仮にEさん宅を購入した場合、Eさん宅敷地に下水管やガス管を埋設して、南側の公共下水管・都市ガス管にバイパスすることで、インフラの問題を解決することが出来ると思われる。

2. アドバイスに当たって必要な情報

(1) Aさんから直接聞いて確認する情報
甲土地は広大な土地であり、売却後に宅地造成等の開発を行う場合には周辺にも影響が大きいため、S市の管轄部署や周辺住民(自治会)等、関係する方面に売却と開発についてどの程度伝えているかの確認が必要。特に緑地保護地区であり公園とも隣接しているため、環境問題に発展する可能性が無いか周辺住民の利用度合いも確認しておきたい。
また、孫Dさんに関し、新居として賃貸・購入のどちらを希望しているか、購入の場合戸建て・マンションのどちらかといった、本人とその配偶者の希望を確認することが必要。

(2) FP自身が調べて確認する情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地・建物の物理的状況を、実際に確認することが必要。
また、地元の不動産会社社長から改めて宅地造成に問題と考える点を確認するほか、用途地域・地方自治体の都市計画等を確認し、今後の開発予定・環境変化を把握することが必要である(北側一帯の旧家部分にインフラ整備の可能性があるか)。

3. Aさんの相続が開始した場合の甲土地の相続税評価額

地積規模の大きな宅地とは、土地面積が広すぎて道路や公園等の公共公益的施設の設置が必要となる宅地のことで、そのままでは土地活用が難しいことから、三大都市圏では500u以上、三大都市圏以外の地域では1,000u以上の宅地について、規定された規模格差補正率により減額評価される(路線価地域では、普通商業・併用住宅地区と普通住宅地区が適用対象)。
※普通商業・併用住宅地区や普通住宅地区とは、相続税評価における地区区分で、このほかビル街や繁華街といった宅地の目的別の区分により、相続税評価の補正率を定めている。

本問の場合、甲土地は地積6,000uと非常に広大な土地であるため、地積規模の大きな宅地として減額評価を受けられる可能性がある。

また、甲土地が緑地保全条例による緑地保護地区に指定されていることから、都市緑地法の特別緑地保全地区に指定され管理協定が締結されれば、最大で8割減の評価額となる可能性もある。

4. 甲土地の売却やEさん宅の購入の可否等におけるAさんへのアドバイス

●甲土地の売却について
甲土地は非常に広大な土地であり、落ち葉の清掃、下刈り、枝払いなどの管理が負担であるならば、売却は妥当と思われる。ただし、売却により多額の譲渡所得税の負担が発生し、また相続税評価額も現預金では減額評価されず、相続税の負担も大きくなる。
よって甲土地を売却するならば、将来の相続を視野に入れた生前贈与等の相続対策を実施することをアドバイスする。

●Eさん宅の購入について
甲土地の宅地造成を視野に入れた場合、Eさん宅を購入すれば、下水管やガス管のバイパス工事を行うことでインフラが整備され、甲土地を高値で売却できると思われる。他方、宅地上の建物を取り壊さずに工事を実施することは困難と思われるが、宅地を道路として南側市道に直結させることで、甲土地は最寄り駅から徒歩7分の好立地として評価額は向上すると思われる。
従って、甲土地を売却する場合、同時にEさん宅を購入することはメリットが多いとアドバイスする。

5. 関与すべき専門職業家

甲土地の売却に関する課税上の取り扱い等の、不動産の取引に関する課税上の取扱いに関する具体的な税務相談については税理士が適当。
また、甲土地の売買契約等における宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、不動産業者やデベロッパーが適当。
なお、甲土地の売買における、土地の正確な測量と境界の明示については土地家屋調査士、測量結果に基づく適正な不動産価格の算定は、不動産鑑定士土地の所有権移転登記等については司法書士が適当。

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