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2020年10月3日実技part2

2020年10月3日実技part2

part2 問題文

●設 例●
Aさん(65歳)は、相続により取得した大都市圏X市に所在する甲土地上に、乙ビル(築30年、店舗・事務所)を建築し、不動産賃貸業を営んでいる。建築費用は、自己資金と金融機関からの借入金を充てたが、借入金は既に完済している。将来は、不動産賃貸業を地元企業に勤務する長男Cさん(39歳)に承継する予定である。

【甲土地および乙ビルの現況】
甲土地は、北側の幹線市道(幅員8m)に面しており、現況道路から25mの区域が商業地域(容積率500%)、25mより南側が第二種住居地域(容積率200%)に指定されている。北側の幹線市道は、約40年前に幅員が5m拡幅される都市計画決定がなされていたが、このほど駅前の再開発の進展に伴い、都市計画道路が事業決定された。
乙ビルは、計画道路部分(I部分:延床面積200u)と計画道路外(II部分:延床面積2,600u)からなる一体の建物で、道路拡幅後もU部分は部分改修のうえで利用できる構造としている。II部分の賃貸面積は2,000uで空室率は15%である。近隣の新しいビルに比べ賃料を安くせざるを得ず、手取収入は年間3,500万円である。
都市計画道路の事業決定に伴い、X市から道路拡幅による甲土地(計画道路内100u)の対価補償金として5,000万円が支払われる予定である。

【道路拡幅後の賃貸経営】
Aさんは、乙ビル(II部分)の建物を継続して運用(1案)する予定としているが、先日、地元の建設会社Y社から、新しいビルに建て替える案(2案)を提示された。
1案:乙ビル(II部分)の建物を継続して運用する。乙ビル(II部分)の部分改修、設備の更新および大規模修繕には1億円の支出が必要であるが、対価補償金5,000万円を含む自己資金1億円を充当する。
2案:対価補償金5,000万円を含む自己資金2億円と金融機関からの借入金により、新しいビルに建て替える。Y社の提案内容は、以下のとおりである。
(1)新しいビルに建て替えた場合、容積率の上限となる延床面積は2,400uになり、賃貸面積は1,900uである。建築費の単価は30年前の1割増となる見込みである。
(2)新しいビルの賃料単価は、現在の賃料単価と比べて2割増となる見込みである。

Aさんは、現在、1案・2案のどちらを選択すべきか迷っており、FPに相談することにした。Aさんは中長期的な不動産運用を重視した内容を希望している。

(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)Aさんから直接聞いて確認する情報
(2)FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.乙ビルの延床面積(T部分200u+U部分2,600u)、新しいビルの延床面積(2,400u)はどのような計算の結果ですか。考え方を教えてください。
3.1案と2案のどちらを勧めますか。推奨する案のメリットと推奨しない案の問題点をそれぞれ複数項目挙げてください。
4.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

<甲土地の概要>

○甲土地の面積:700u
(内訳)商業地域の面積 :500u(うち計画道路内100u、計画道路外400u)
    第二種住居地域の面積:200u

<甲土地上の乙ビルの概要(横から見た図)>
○I部分の建物
S(鉄骨)造2階建て
延床面積:200u
○II部分の建物
RC(鉄筋コンクリート)造5階建て
延床面積:2,600u

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part2 ポイント解説

1. アドバイスに当たって必要な情報

(1) Aさんから具体的に確認したいこと
Aさんは将来不動産賃貸事業を長男Cさんに承継させようとしているが、本人の意向や専業とするか現在の勤務先との兼業とするか(勤務先の副業規定の確認も必要)の確認が必要。
特に、1案・2案ともに多額の自己資金や借入金を伴う賃貸事業であるため、事前に十分な説明や事業承継のサポートが必要となる。

(2) FP自身が調べて確認する情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地の物理的状況を、実際に確認することが必要。
また、用途地域・地方自治体の都市計画等を確認し、今後の開発予定・環境変化を把握することが必要である(駅前の再開発の進展に伴う人口予測等も確認)。

2.乙ビルと新しいビルにおける延床面積の計算の考え方

●乙ビルの延べ床面積(I部分200u+II部分2,600u)の計算
延べ面積の上限=土地面積×その土地の容積率 だが、建ぺい率同様、建築物の敷地が、容積率の異なる2つ以上の地域にわたる場合、敷地全体の延べ面積の上限は、「各地域の面積×各容積率」の合計となる。
ただし、容積率は、前面道路の幅が12m未満の場合に、用途地域によって制限される。
住居系用途地域の場合……前面道路幅×4/10
その他の用途地域の場合…前面道路幅×6/10
この計算式結果と指定容積率を比べて、小さいほうが容積率の上限となる。
よって商業地域部分の容積率は、前面道路が8mであるため、
8m×6/10=480% < 指定容積率500%。よって商業地域部分の容積率は480%。
次に第二種住居地域部分の容積率は、前面道路が8mであるため、
8m×4/10=320% > 指定容積率200%。よって第二種住居地域部分の容積率は200%。
よって延べ面積の上限は、
商業地域部分:25m×20m×480%=2,400u
第二種住居地域部分:10m×20m×200%=400u
土地全体の上限:2,400u+400u=2,800u
よって、将来的に計画道路部分となるI部分は延べ床面積200uとし、残りの延べ面積上限2,600uをII部分に充当したと思われる。

●新しいビルの延べ床面積(2,400u)の計算
道路拡幅により前面道路は幅員13mとなるため、前述の前面道路幅12m未満の用途地域による制限は適用されず、各用途地域の指定容積率が適用される。
商業地域部分:(700u−100u−10m×20m)×500%=2,000u
第二種住居地域部分:10m×20m×200%=400u
土地全体の上限:2,000u+400u=2,400u

3. 1案と2案について推奨する案のメリットと推奨しない案の問題点

●推奨する案のメリット
2案を推奨するとして、メリットは以下の通り。
・道路拡幅に伴う容積率の制限について、上限2,400u以内の適法物件とすることができるため、資産価値の上昇が期待できる。
賃料単価が2割増となり新しいビルで空室率の改善も見込めることから、中長期的な収益増が期待できる。
・多額の自己資金の投資と借入金が必要とはなるが、投資した自己資金は賃貸物件として減額評価され、借入金は将来の相続時に債務控除として相続財産から控除できることから、相続税負担の軽減効果がある。

●推奨しない案の問題点
1案を推奨しないとして、問題点は以下の通り。
・道路拡幅に伴う容積率の制限について、乙ビル(U部分)の延べ床面積は2,600uと上限2,400uを超過しており、既存不適格物件となってしまうことから、資産価値評価が下がってしまう。
・賃料は近隣の新しいビルに比べ賃料を安くせざるを得ず、今後空室率も悪化する可能性が高い。
・設備更新と大規模修繕の支出は自己資金で賄うが、資産価値の維持には寄与するものの、投資した自己資金に対する相続税評価上の減額評価は期待できない

4. 関与すべき専門職業家

2案を採用する場合の、甲土地の建物の建て替えにおける建物滅失登記と建物表題登記については土地家屋調査士、建て替え後の建物の所有権保存登記等については司法書士、不動産賃貸業の承継における課税上の取扱いに関する具体的な税務相談については税理士、不動産賃貸の媒介等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、不動産業者やデベロッパーが適当。

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