2021年2月14日実技part2
2021年2月14日実技part2
part2 問題文
●設 例●
Aさん(50歳)は、大都市圏N市にある甲土地上の自宅で妻(45歳)、長女(14歳)および叔母Bさん(75歳、父親の妹)と4人で暮らしている。Aさん家族と同居していた父親は、昨年12月に急逝した。独身である叔母Bさんとは、Aさんが生まれたときから、この自宅で暮らしているが、妻と叔母Bさんとの関係は良好とはいえず、Aさんの悩みの種である。
【甲土地および自宅の建物の概要】
甲土地(地積:1,000u)は、N駅から徒歩5分程度に位置し、周辺は店舗・商業施設・マンション等が建ち並ぶ地域である。自宅(延床面積:250u)は、築50年の木造の大きな古家であり、周辺の建物と比べると、場違いな存在となっている。また、N市には歴史的建造物が多く、休日は観光客が自宅周辺まで押し寄せてくる状況にある。
甲土地および自宅の建物は、父親と叔母Bさんが25年前に祖父の相続により共有(50:50)で取得したものである。昨年12月に急逝した父親の持分は、一人息子であるAさんが相続により取得する予定である。なお、父親の相続に係る法定相続人は、Aさん1人である。
【各人の意向等】
妻は老朽化した大きな家での生活に不便さを感じており、マンションに移り住みたいと言っている。Aさんは、先祖代々の土地に住み続けたいが、妻の希望を叶えてあげたいとも思っている。叔母Bさんは、マンションでの1人暮らしを望んでおり、自宅を売却して早期に現金化したい意向を持っている。
Aさんは、近所の友人が数年前に自宅(乙土地、地積:1,000u)を売却してN駅前のタワーマンションを購入した話を思い出し、早速、不動産開発業者に価格を打診してみた。乙土地は4億円で売却したと聞いていたが、今回不動産開発業者が提示してきた金額は、現況のままの明渡し条件で2億5,000万円であった。Aさんは、地積が同じなのに乙土地の売却価格と大きな差が生じることに納得できずにいる。叔母Bさんは、提示された価格でもよいと考えており、「あなた(Aさん)が売却しないのであれば、私の持分だけでも別の業者に買い取ってもらおうかしら」と言っている。Aさんは、叔母Bさんの奔放な性格からすれば、勝手に持分を売却しかねないと危惧している。
なお、不動産開発業者は、来期の売上計画の都合上、引渡し希望を7月末としている。Aさんは、話の展開が性急すぎることに戸惑っている。
(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)Aさんから直接聞いて確認する情報
(2)FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.甲土地は、地積が等しい乙土地と比べて、なぜ低い価格が提示されたと思いますか。
3.叔母Bさんが持分を第三者に売却した場合、どのような問題が生じますか。
4.Aさんに甲土地の売却を勧めますか。7月末までに売却した場合、不利益が生じることはありませんか。
5.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。
【甲土地・乙土地の概要】
part2 ポイント解説
1. アドバイスに当たって必要な情報
(1) Aさんから直接聞いて確認する情報
甲土地・建物は相続で取得しているが、相続により財産を取得した場合、その取得日・取得費を引き継ぐことから、当時の状況の詳細が分かる資料があるかという確認が必要。
また、土地は先祖代々から受け継いできたものであることから、地積が実測値であるかや遺跡等の埋蔵文化財がある可能性の有無も確認しておきたい。
(2) FP自身が調べて確認する情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地・建物の物理的状況を、実際に確認することが必要。
本件の場合、特に不動産開発業者から提示された売却価格の妥当性について、不動産業者等の協力を仰ぎながら確認することが必要。
2. 地積が等しい乙土地と比べ、甲土地に低い価格が提示された理由
まず、建築物の敷地が、建ぺい率の異なる2つ以上の地域にわたる場合、敷地全体の建ぺい率は、各地域の建ぺい率を加重平均、つまり各地域の建ぺい率に、各地域面積の敷地面積に対する割合を乗じたものを合計して計算する。
また、容積率も、建ぺい率と同様、上限が異なる地域にまたがって建物を建てる場合には、加重平均される。
従って本問の場合、土地全域が建ぺい率80%・容積率400%である乙土地に比べ、甲土地は第一種住居地域部分が建ぺい率・容積率ともに乙土地よりも低いため、その分建築面積や延べ面積の上限が小さくなり、土地活用に制限がかかることが予想される。
また、甲土地はAさんと叔母Bさんとの共有物件であるため、今後の売却交渉においてAさんとBさんの意見が対立すると、スムーズに売却が進まなくなる可能性もある。
以上の理由から、不動産開発業者は乙土地よりも低額な価格提示をしたと思われる。
3. 叔母Bが持分を第三者に売却した場合に生じる問題点
共有持分となっている不動産について、持分だけの売却や抵当権設定は可能。よって、叔母Bさんが自身の持分について売却したり、抵当権を設定することについて、Aさんは拒否することは出来ない。
分割無しの第三者への持分売却の場合、購入する第三者は、土地の利用形態・形質の変更、建築などについて、他の共有者全員の同意を得ることが必要となるため、通常の土地取引と比較して購入しても自由度が低くなる。従って、叔母Bさんの持分売却後、Aさんが自身の持分だけを売却しても、買い手が限られ評価額も下がってしまう可能性がある。
また、Aさんに買い手を選ぶ権利は無いため、購入した第三者とトラブルになる可能性もある。
4.甲土地の売却の是非と、7月末までに売却した場合の不利益の有無
まず、容積率から算出される延べ面積の上限は、乙土地4,000u、甲土地3,200uである。この延べ面積に対して乙土地は4億円で売却されたことを考慮すると、甲土地は3.2億円程度の評価額となることが想定される。従って、不動産開発業者の提示価格2.5億円は非常に低いものであると言わざるを得ないため、顧客に本件を勧めることは難しい。
さらに、被相続人の同居親族が取得した場合、特定居住用宅地として小規模宅地の特例を受けるには、申告期限まで継続居住・保有が必要であり、相続税の申告期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内である。
よって本問のように、昨年12月の相続開始から8ヶ月後である7月末に自宅を譲渡した場合、小規模宅地の特例の適用を受けられず、大幅な相続税負担が発生する可能性が高い。
5. 関与すべき専門職業家
甲土地・建物の売却における、土地・建物の所有権移転登記等については司法書士、課税上の取扱いに関する具体的な税務相談については税理士、不動産売買の媒介等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、宅地建物取引士、土地の正確な測量と境界の明示については土地家屋調査士、測量結果に基づく適正な不動産価格の算定は、不動産鑑定士が適当。
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