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2021年2月20日実技part1

2021年2月20日実技part1

part1 問題文

●設 例●
大都市圏F市に所在する株式会社X社(非上場会社・運送業)は、代表取締役社長のAさん(68歳)が30年前に設立した会社である。病院・調剤薬局向けの医薬品配送を手掛けるX社の業績は堅調に推移している。現在、得意先の荷主から新たな荷役業務の依頼があり、AさんとX社専務取締役の長男Cさん(40歳)は、長期にわたり安定した受注を確保するために、X社駐車場の一部を利用して倉庫の建設を検討している。

【X社の事業承継に関して】
Aさんは、体力・気力が充実しており、当面の間、経営に関与したい気持ちもあるが、他社の事業承継で多額の相続税を支払った旨の話を聞いており、X社株式の移転が進んでいない状況には不安を感じている。Aさんと長男Cさんは、事業承継の道筋をつけておきたいと考えている。

【Aさん自身の資産承継に関して】
Aさんと長男Cさんは、事業承継の対策を講じる前に、会社資産と個人資産をできるだけ区分しておきたいと考えている。Aさんが経営者仲間に相談したところ、AさんのX社への貸付金1億円について、X社所有の社宅(時価7,000万円)と引換えに返済(貸付金7,000万円)を受け、残りを資本金に振り替えることもできるとアドバイスされたが、その意味がわからない。
Aさんは、所有財産のうち、X社株式を長男Cさんに承継させる予定であるが、妻Bさん(65歳)と離婚後に戻ってきた長女Dさん(36歳)の生活の安定のために、2人に相応の財産を残したいと考えている。Aさんは、兄妹の日頃の関係から遺産分割で争うことはないと思っている。

【Aさんの家族構成(推定相続人)】
妻Bさん :専業主婦。Aさん・長女Dさん・孫とX社所有の社宅で同居している。
長男Cさん:X社専務取締役。妻と子の3人で持家に住んでいる。
長女Dさん:X社従業員(総務担当)。離婚した3年前からAさん夫妻と同居している。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
現預金 :1億5,000万円(役員退職金は考慮していない)
X社株式:4億円
X社への貸付金:1億円
X社本社土地(500u):1億2,000万円
X社本社建物 :8,000万円
X社駐車場(800u) :1億5,000万円(敷地はアスファルト敷き)

合計 : 10億円
※Aさんの相続に係る相続税額は、約3億6,000万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

【X社の概要】
資本金 :2,000万円
会社規模:中会社の大
従業員数:60人
配当  :毎期50円/株
売上高 :14億円
手元資金:3億円(設備投資等に備えてある程度は確保したい)
株主構成(発行済株式総数4万株):Aさん100%
株式の相続税評価額:類似業種比準価額9,000円/株、純資産価額19,000円/株
社宅  :土地200u(簿価8,000万円、時価6,000万円)、建物(簿価・時価1,000万円)
借入金 :過去に運転資金1億円をAさんから借り入れ、返済を行っていない。
※X社株式は譲渡制限株式である。

【親族関係図】

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part1 ポイント解説

1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策

(1) 生命保険・金庫株の活用
(2) 役員退職金支払い(法人税の低減、退職所得控除による所得税低減効果も有り)
(3) 自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
(4) 小規模宅地の特例の活用
(5) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度の活用

2. 遺産分割対策・事業承継対策

(1) 遺言の作成
(2) 遺留分に関する民法の特例の活用
(3) 相続時精算課税制度の活用
(4) 孫への教育資金贈与の非課税措置の検討
(5) 金庫株を用いた長男から長女への代償分割
(6) 配偶者居住権の設定

3. 事業承継税制の特例の活用

X社株式については、非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度の活用により、全株式を税負担なく移転可能(納税猶予割合100%)

ただし、非上場株式等についての贈与税の納税猶予・免除を受けるには、会社・後継者(経営承継受贈者)それぞれの適用要件を満たした上で2023年3月31日までに特例承継計画を都道府県知事に提出して確認を受け、経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の認定を受けることが必要。
ただし、非上場株式の贈与税の納税猶予・免除における特例承継計画には、会社概要や先代経営者・後継者の氏名、後継者の承継時までの経営計画と、承継後5年間の経営計画を定めることが必要。

また、雇用の8割以上を5年間平均で維持することが必要(下回ると理由を記載した報告書の提出が必要)であり、税務署への特例適用の継続届出書の未提出等により納税猶予取消となった場合、猶予されている税額と利子税を納付する必要がある。

つまり、メリットとしては税負担なく全株式を移転できるが、デメリットとして、事務負担の増大と、特例適用の継続届出書の提出等の納税猶予条件を満たせなかった場合の猶予税額と利子税の納付が必要という点が挙げられる。

4. 会社資産と個人資産の区分(会社への貸付金と社宅の引き換え、資本金振替)

●会社への貸付金と社宅の引き換えによる返済(代物弁済)
会社への貸付金=役員借入金を解消するために、会社の債務について、金銭ではなく不動産等のモノで代物弁済することで、会社の資金繰りに影響を与えることなく、多額の役員借入金を解消することが可能である。特に簿価よりも時価が低い不動産の場合、含み損が顕在化するため、損金算入可能となる。

●会社への貸付金の資本金振替(DES)
会社への貸付金=役員借入金や未払い家賃等の会社の債務を、資本金に振り替えて株式に交換するデット・エクイティ・スワップ(DES)を行うことで、それまでの貸付金は譲渡制限のある株式として評価されることから、相続税評価額を抑える効果が期待できる。ただし、債務者である会社側の財政状態が悪化しており、時価評価した債権が額面を下回っている場合には、差額が債務免除益として法人税の課税対象となることに注意が必要。

5. 相続人間の平等な相続方法

(1) 長男の相続分(X社株式と本社土地・建物・駐車場)
X社株式を後継者である長男に集中させるだけでなく、X社本社土地についても長男に相続させることが、円滑な事業承継上重要である。

(2) 配偶者の相続分(現物弁済された社宅の配偶者居住権と現預金)
長男と長女の相続財産のバランスを考慮すると、配偶者に社宅そのものを相続させた場合に長女の割合が非常に少なくなってしまう恐れがあることから、社宅に配偶者居住権を設定して妻の居住権を安定させた上で長女の相続分を増やすことを提案する。

(3) 長女の相続分(現物弁済された社宅と現預金)
現物弁済された社宅と現預金を中心に相続させるが、それだけでは割合が少ないため、相続時精算課税制度・孫への教育資金贈与の非課税制度を活用し、贈与税負担を軽減しながら生前贈与を行うことも検討できる。

以上の分割では、長男の相続分が多くなる可能性が高いため、金庫株やX社本社建物・駐車場の賃料を原資とした代償分割(相続後に分割払い)により、ある程度均等な相続が可能と思われる。
また、妻の相続発生時(二次相続時)に、長女により多くの遺産を相続させることも検討可能(遺産分割協議の中でこれらを記した公正証書遺言や贈与契約書の内容を検討することが望ましい)。

●FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、法令の遵守(コンプライアンスの徹底)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)、能力の啓発の6つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・事業承継対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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