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2021年6月12日実技part1

2021年6月12日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(64歳)は、大都市圏F市に所在する株式会社X社/株式会社Y社の代表取締役社長である。X社は、Y社株式を100%保有しており、将来の事業展開を見据えた効率的なグループ経営を図るため、以前にAさんが100%出資して設立した持株会社である。
X社には、Y社の間接部門(経営企画部門)を集約しており、主な収入源はY社からの配当金および間接業務の業務委託料である。Aさんは、今後のM&A戦略等を見据え、相応の資金をX社に集中させておきたいと考えている。また、X社株式の対策のために、X社にY社所有の本社兼工場土地および建物を移転することを検討している。
X社/Y社の専務取締役である長男Cさん(30歳)は、経験不足が否めないが、最近は後継者としての自覚が芽生え、仕事に打ち込んでいる。

<X社(持株会社)>
資本金 :1,000万円
会社規模:小会社
従業員数:5名
役員構成:代表取締役Aさん/専務取締役長男Cさん
株主構成:Aさん100%
※従業員5名は、Aさんおよび長男Cさんの同族関係者ではない。
※総資産に占めるY社株式の割合は50%以上である。

<Y社(食料品製造業)>
資本金 :2,000万円
会社規模:大会社
従業員数:90名
売上高 :25億円
経常利益:8,000万円
純資産 :6億円
役員構成:代表取締役Aさん/専務取締役長男Cさん
株主構成:X社100%

【Aさん自身の資産承継】
Aさんは、妻Bさんと暮らしている自宅の老朽化が激しいため、建替えを検討しており、長男Cさん家族との同居も考えている。自宅の土地は、先祖代々の土地であるため、長男Cさんに承継させる予定であるが、その際に配偶者居住権を活用できないかと思っている。
他県に暮らす長女Dさん(40歳)は、住宅ローンと子の教育費の負担が大きく、Aさんに支援を求めている。長女Dさんは、日頃から「会社の資産や不動産はいらないけど、娘として財産の一部をもらう権利はある」と言っている。Aさんは、遺言書を準備する必要性を感じており、自筆証書遺言の保管制度を利用することを検討している。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
現預金  : 2億円(役員退職金は考慮していない)
X社株式 : 5億円
自宅土地 : 6,000万円(500u)
自宅建物 : 500万円
テナントビル土地 : 8,000万円(300u)
テナントビル建物 : 1億5,500万円(注)

合計 : 10億円
※Aさんの相続に係る相続税額は、約3億6,000万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。
(注)1階にX社が入居し、2階〜5階は一般の事業会社に賃貸している。

【親族関係図】


【Aさんの推定相続人】
妻Bさん :専業主婦。Aさんと自宅で同居している。
長男Cさん:X社/Y社専務取締役。妻と子の4人で賃貸マンションに住んでいる。
長女Dさん:パート従業員。会社員の夫と子の4人で夫所有の持家に住んでいる。

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part1 ポイント解説

1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策

(1) 生命保険の活用
(2) 役員退職金支払い(法人税の低減、退職所得控除による所得税低減効果も有り)
(3) 自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
(4) 直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度の活用
(5) 小規模宅地の特例の活用
(6) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度の活用
(7) 株式保有特定会社としての評価見直し(子会社の資産移転)

2. 遺産分割対策・資産承継対策

(1) 遺言の作成
(2) 遺留分に関する民法の特例の活用
(3) 相続時精算課税制度・直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度の活用
(4) 孫への教育資金贈与の非課税措置の検討
(5) 配偶者居住権の設定

3. 株式保有特定会社としての評価見直し詳細(子会社の資産移転)

会社の会社の総資産価額に占める株式保有割合(相続税評価額ベース)が50%以上の場合、株式保有特定会社とされ、純資産価額方式またはS1+S2方式により評価される(納税者が選択可能)。
※S1+S2方式:株式の要素を除外した金額と株式を純資産価額で計算した金額との合計
純資産価額方式の場合、類似業種比準方式よりも評価額が高くなりがちなため、相続税負担も大きくなる。
株式以外の資産保有額を増やすことや、子会社との合併・子会社からの事業譲受・子会社からの配当受取等により、株式保有割合が低下すれば、株式保有特定会社としての評価から外れることが出来る。
本問の場合、子会社株式の保有割合が総資産の50%を超えているため、株式保有特定会社として評価される。子会社であるY社所有の本社兼工場土地・建物を親会社であるX社に移転することで、株式保有特定会社としての評価から外れれば、X社株式の評価額の減額に効果があると思われる。

なお、グループ法人間での資産(帳簿価格1,000万円以上)譲渡の損益は、税務上繰延べられるため、本問の場合も現時点での税負担は発生しないと思われる。

4.今後のM&A戦略を踏まえた事業承継

安定した企業経営の継続のためには、贈与税の納税猶予特例・金庫株・後継者の役員給与の増額等による株式譲渡といった対策を組み合わせ、できるだけ後継者に株式を集約させることが望ましい。

ただし、非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度については、認定後の5年間における組織再編は納税猶予の打ち切りとなる場合があるため、今後のM&A戦略に基づいて慎重に検討することが必要と思われる。

5. 相続人間の平等な相続方法

(1) 長男の相続分(X社株式、自宅土地・建物)
X社株式を後継者である長男に集中させることが、円滑な事業承継上重要である。
また、自宅土地・建物についても、先祖代々の土地を承継させたいAさんの意向を踏まえ、長男が相続する方が望ましい。
なお、長男家族との同居の同意が得られれば、自宅を建て替える際に長男に住宅資金贈与の非課税特例を適用し、相続時には小規模宅地の特例の適用も可能と思われる。

(2) 配偶者の相続分(配偶者居住権・テナントビル土地建物)
配偶者には配偶者居住権を設定することで、自宅の所有権を長男に相続させた場合でも居住継続できるようにすることを提案する。
また、相続発生後の安定的な生活を維持するため、テナントビル土地建物を相続させ、賃貸収入を得られるようにすることを提案する。

(3) 長女の相続分(現預金)
住宅ローンと子の教育費の負担が大きい長女に対しては、現預金を中心として相続させることを提案する。ただし、長女が現預金のみの相続では不満が出る可能性がある。また、事業承継上遺産の大半を長男が相続すると、長女の遺留分を侵害する可能性がある。
そのため、相続時精算課税や孫への教育資金贈与の特例等の生前贈与の活用や、長男から長女への代償分割も検討することが必要と思われる。

6. 配偶者居住権や自筆証書遺言の保管制度の説明

●配偶者居住権
配偶者短期居住権は遺産分割で他の相続人が自宅を相続した場合にも、配偶者は最低6ヶ月間無償で居住を継続可能となる権利であるの対し、配偶者長期居住権は遺産分割や遺贈で定めることにより、配偶者自身が亡くなるまで有効な居住権であり、自宅の所有権と居住権を分けて評価することで、自宅の所有権は他の相続人が取得しても、配偶者は居住権を取得することで居住を継続可能とし、同時に居住権は所有権よりも評価額が低くなると想定されることから、金融資産の相続もしやすくなる

●自筆証書遺言の保管制度
自筆証書遺言とは、遺言者が遺言の全文、日付および氏名を自書して印を押すものだが、自筆証書遺言の財産目録についてはパソコン作成や代筆、通帳のコピー添付も可能(遺言本文は手書き)となっている。
また、法務局に保管した自筆証書遺言は、公正証書遺言と同様に検認不要

遺言には秘匿性の高い秘密証書遺言や、公証人に口授する公正証書遺言もあるが、前者は家庭裁判所での検認が必要であり、後者は費用と証人2名を要する等の手続が煩雑というデメリットもあるため、自筆証書遺言を選択する場合には、法務局への保管申請を行うことを提案する(ただし、遺言者本人の出頭が必要)。

●FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、法令の遵守(コンプライアンスの徹底)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)、能力の啓発の6つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・事業承継対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

◆この試験問題の公開体験談

【note】ガパオライスちゃん 2回目のPART1(2021年6月12日の問題)

【note】ゆるふわ 2021年6月12日 FP1級実技試験partI

【note】ハル 6/12 FP1級実技試験part1

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