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2021年9月26日実技part2

2021年9月26日実技part2

part2 問題文

●設 例●
Aさん(66歳)は、S市内の自宅で妻Bさん(65歳)と2人で暮らしている。昨年末、長年勤めた会社を退職した。Aさん夫妻には、S市内の高校で教師をしている長男Cさん(36歳)と、他県で家族と暮らしている長女Dさん(34歳)の2人の子がいる。
Aさんは、自宅のほかに、5年前に親から相続した賃貸アパート(甲土地・甲建物)を所有しており、年金収入のほかに家賃収入を得ているが、賃貸アパートは築後42年が経過し、住宅設備等の老朽化が激しいため、建て替えることを考えている。現在、全8室のうち5室を賃貸しているが、2年前から建替えの告知をしていたこともあり、来年3月末までに退去することですべての賃借人から書面で合意を得ている。
甲土地(地積300u)は、S市中心駅から徒歩約12分の住宅地にある。静かで住環境は申し分ない。しかし、駅から若干距離があるため、周辺アパートでは空室が目立ち始め、他の賃貸アパートの管理も難しくなってきたとテナント管理の不動産会社から聞いている。
Aさんは、先日、甲建物の建替案として、アパートの建築を得意とするX社と、戸建て住宅の建築を専業とするY社から、それぞれ下記の提案を受けた。

【X社の提案内容】
・軽量鉄骨造2階建て、延べ面積320u、専有面積40u(1LDK、2DK)8室
・建築費総額(諸経費、消費税込)は8,000万円
・予定月額賃料は1室平均9万円
・満室時の経費率は賃貸収入の約14%(このうち、固定資産税・都市計画税と損害保険料の経費率が合計約10%)
・サブリースを希望する場合は、当初10年間、満室想定賃料の80%相当額を保証する。それ以後の賃料は、市場賃料を踏まえて協議のうえ決定する。

【Y社の提案内容】
・木造2階建ての戸建て3棟、1棟の延べ面積95u(4LDK)、3棟合計285u
・建築費総額(諸経費、消費税込)は1棟1,700万円、3棟合計5,100万円
・予定月額賃料は1棟17万円、3棟合計51万円
・満室時の経費率は賃貸収入の約10%(固定資産税・都市計画税と損害保険料の経費合計、その他管理費は計上していない)
・サブリースの取扱いはない。

Aさんは預貯金を6,000万円程度保有しているが、今後の暮らしを考えると預貯金の多くを建築費に充当せず、できるだけ金融機関からの借入金で賄いたいと思っている。また、今後、賃貸住宅市場は年々貸主側に厳しくなっていくと感じており、将来の相続時、子どもたちを困らせたくないと考えている。
賃貸管理会社の話では、甲土地近くにある専有面積75uのマンションが月額賃料16万円で直近成約しており、延べ面積95u、4LDKの戸建て住宅であれば予定月額賃料17万円での賃貸は十分可能とのことである。
Aさんは、甲土地の有効利用(建設投資)として、X社の提案とY社の提案のどちらがより望ましいか、FPであるあなたに相談してきた。

(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)Aさんから直接聞いて確認する情報
(2)FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.Aさんが甲土地の有効利用(建設投資)を決定するために、どのような判断基準をアドバイスしますか。
3.あなたはX社の提案とY社の提案のどちらを勧めますか。その理由とともに教えてください。
4.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

【甲土地の概要】

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part2 ポイント解説

1. アドバイスに当たって必要な情報

(1) Aさんから直接聞いて確認する情報
今回の不動産投資でAさんが希望する利回りや、引き受け可能なリスクについて、確認することが必要。
また、子2人が将来の相続発生時にどのような物件を望むかも本件の対処に大きく影響するため、本人たちの意向を確認しておきたい。

(2) FP自身が調べて確認する情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地・建物の物理的状況を、実際に確認することが必要。
また、用途地域・地方自治体の都市計画等を確認し、今後の開発予定・環境変化を把握することや、X社・Y社の財務内容・評判等についても、周辺の不動産業者や官報による確認が必要。

2. 甲土地の有効利用(建設投資)を決定するための判断基準

不動産の投資判断手法の1つとして、資産が生み出す将来の収益の現在価値の合計から、初期投資額を差し引いて、投資の適否を判定するNPV法(正味現在価値法)がある。
本問の場合、経費率を考慮してサブリースを活用することを前提とすると、X社とY社のプランは多少の差はあっても同程度の収益を期待できるものであるといえる。

また、借入金を活用して不動産投資をする場合、借入金により自己資金に対する投資利回りを上昇させるレバレッジ効果があるため、空室の上昇等といった運用の失敗時にはリスクも大きくなる。
本問の場合、Aさんが保有する甲土地に対する建築資金(借入金)の割合はX社の提案の方が高く、満室時の予定月額賃料は高いものの、空室時のリスクも高いといえる。

3. X社の提案とY社の提案のどちらを勧めるか

不動産投資は10年以上の長期スパンで適否を判断すべきものであるが、経費率を考慮してサブリースを活用することを前提とすると、X社とY社のプランは多少の差はあっても同程度の収益を期待できるものであるといえる。
このため、中心駅から徒歩約12分の静かな住宅地という立地と、周辺アパートでは空室が目立ち始めているという現況をどのように判断するかがポイントと思われる。

X社の提案であるアパート投資の場合、周辺に同様の賃貸アパートが建築されており、今後もそれらとの競争にさらされるほか、賃貸アパートは入退去のスパンも短い傾向にある。
これに対し、Y社の提案である戸建て賃貸の場合、通常戸建て賃貸の供給は少なめであり競争にさらされる可能性は低く、一度入居すると10年以上入居を継続する可能性も高い。
Aさんは66歳であり、今後の老後の賃貸収入を安定させる目的として不動産投資を行うならば、戸建て賃貸を選択することは十分に検討に値すると思われる。

4. 関与すべき専門職業家

甲土地の建物の建て替えにおける建物滅失登記と建物表題登記については土地家屋調査士、建て替え後の建物の所有権保存登記等については司法書士、不動産所得の課税上の取扱いに関する具体的な税務相談については税理士、不動産賃貸の媒介等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、宅地建物取引士が適当。

◆この試験問題の公開体験談

【note】mokumoku FP1級実技試験 Part2

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