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2021年10月9日実技part1

2021年10月9日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(68歳)は、大都市圏近郊でXクリニック(一般内科・糖尿病外来)を個人で営んでいる。Xクリニックは開業から30年が経ち、地元住民からの評判も良好で、地域医療の中核を担っている。
Aさんは、将来、長男Cさん(38歳)に医業を承継してもらいたいと考えており、長男Cさんもそのつもりでいる。先日、医師会主催の医業承継セミナーに参加したところ、承継の方法として医療法人化や個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度の話を聞いた。Aさんは、どのような方法で長男Cさんに承継すればよいのか、今のうちに整理しておきたいと思っている。
また、Aさんは、社会保険診療報酬が5,000万円を超えていることから所得税の負担が大きいと感じており、何か軽減する方法がないかと考えている。

【Xクリニックの概要】
・年間収入額は1億円。
・従業員は受付・看護師(社会保険加入済)の計7名。他に管理栄養士2名、内科医1名と契約している。
・建物の一部を調剤薬局に賃貸している。家賃は月額20万円。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
1.現預金:1億円
2.自宅
(1)土地(400u):1億5,000万円
(2)建物:5,000万円
3.Xクリニック
(1)土地(400u):1億4,000万円(貸付の用に供している部分は50u)
(2)建物:1億円
4.医療機器:3,000万円
5.未収入金:1,500万円(社会保険診療報酬)

合計:5億8,500万円
※Aさんの相続に係る相続税額は、約1億7,000万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

【Aさんの推定相続人】
・妻Bさん(65歳) :青色事業専従者としてXクリニックの経理を担当している。Aさんと自宅で同居している。
・長男Cさん(38歳):私立大学医学部を卒業後、母校の附属病院で勤務医として働いている。妻と子2人(10歳、7歳)の4人家族で、病院近くの賃貸マンションで暮らしている。ゆくゆくはXクリニックを継ぐとの自覚があり、病院を辞めた後は両親との同居を考えている。
・二男Dさん(36歳):上場企業に勤務している。妻と子1人(4歳)の3人家族で、賃貸マンションで暮らしている。長男CさんがXクリニックを継ぐことに異論はないが、相続財産は均等に分割してもらいたいと思っている。

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part1 ポイント解説

1. 納税資金の不足・所得税と相続税の軽減対策

(1) 医療法人の設立(法人税の比例税率と所得分散による所得税低減効果有り)
(2) 生命保険の活用
(3) 医療法人の設立後の役員退職金支払い(法人税の低減、退職所得控除による所得税低減効果も有り)
(4) 医療法人の設立後の前向きな設備投資(診療所の建替え等による法人税の低減効果)
(5) 個人版事業承継税制(個人事業用資産の贈与税・相続税の納税猶予・免除)の活用

2. 遺産分割対策・資産承継対策

(1) 遺言の作成
(2) 相続時精算課税制度・直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度の活用
(3) 孫への教育資金贈与の非課税措置の検討
(4) 配偶者居住権の設定

3. 個人版事業承継税制(個人事業用資産の贈与税・相続税の納税猶予・免除)に関する説明

個人版事業承継税制(個人事業用資産の贈与税・相続税の納税猶予・免除)では、2019年1月1日〜2028年12月31日までの相続・贈与が対象で、土地・建物や機械・器具備品、車両・運搬具、乳牛や果樹等の生物、特許権等の無形償却資産といった事業用資産の承継における、相続税や贈与税の全額が納税猶予され、後継者の死亡といった一定の事由により、納税免除される。

法人の事業承継税制と同様に、先代事業者・後継者(経営承継受贈者)それぞれの適用要件を満たした上で2024年3月31日までに個人事業承継計画を都道府県知事に提出して確認を受け、経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の認定を受けることが必要(事業用資産の贈与は、最初の贈与の日から1年経過日までに実施)。

ただし、個人版事業承継税制(個人事業用資産の贈与税・相続税の納税猶予・免除)は、既存の事業用小規模宅地の特例との選択制であるため、併用できないことに注意が必要。

4.事業承継と併せた法人化の検討

法人設立による所得税負担の軽減は、個人所得が900万円程度以上ないと十分なメリットを享受できないが、クリニックの年間収入は1億円であり、十分な税負担の軽減効果を期待できると思われる。
また、2017年4月1日以降に設立許可が下りる医療法人は、全て持分の定めのない医療法人(持分の定めがない=出資比率による責任・分配の規定がない)であり、そのうち基金拠出型医療法人の設立が法人税や相続税の負担を抑える効果がある。
基金拠出型医療法人とは、「基金制度」により資金調達を行う、持分の定めのない医療法人で、個人医院を基金拠出型医療法人に移行させる場合、「個人医院の資産」⇒「医療法人の資産」となり、オーナーは所有していた個人医院の資産を、基金として医療法人に対する債権(利息なしの貸付金)で保有する形態に移行する。これにより、医療法人の資産が利益の蓄積により増加したとしても、基金の価値は増加せず、相続時は基金のみが相続税の課税対象となる(利益の蓄積(利益剰余金)は相続税の課税対象外)。
◆ メリット
  ・医療法人の内部留保が相続税課税の対象外
◆ デメリット
  ・都道府県に対する手続きが必要
  ・解散時の残余財産が国庫等に帰属

なお、個人版事業承継税制(個人事業用資産の贈与税・相続税の納税猶予・免除)の適用後、最初の贈与税・相続税の申告期限の翌日から5年経過後に、納税猶予された事業用資産の現物出資により法人成りした場合、引き続き納税猶予を受けられる。
従って、事務負担を考慮すると、まずは個人版事業承継税制の手続きを進め、後継者である長男の意向も踏まえつつ、事業承継が確実に進んでから医療法人化を検討していくことを提案する。

また、社会保険診療報酬が年間5,000万円以下であれば租税特別措置法における概算経費率が適用可能であるが、事業承継前後で前任者と後継者の社会保険料収入がそれぞれ5,000万円以下とすることができれば、それぞれに概算経費率が適用可能であり、一般的には概算経費は実際にかかった経費を上回ることが多いため、所得税の軽減効果も期待できると思われる。

5. 相続人間の平等な相続方法

(1) 長男の相続分(Xクリニック、医療機器、未収金)
X社株式を後継者である長男に集中させることが、円滑な事業承継上重要である。
また、自宅土地・建物についても、先祖代々の土地を承継させたいAさんの意向を踏まえ、長男が相続する方が望ましい。
なお、長男家族との同居の同意が得られれば、自宅を建て替える際に長男に住宅資金贈与の非課税特例を適用し、相続時には小規模宅地の特例の適用も可能と思われる。

(2) 配偶者の相続分(配偶者居住権・現預金)
配偶者には配偶者居住権を設定することで、自宅の所有権を二男に相続させた場合でも居住継続できるようにすることを提案する。
また、相続発生後の安定的な生活を維持するため、現預金を中心に相続させることを提案する。

(3) 二男の相続分(自宅)
相続財産の均等な分割を希望している二男に対しては、自宅を中心に相続させることを提案する。なお、特定居住用宅地等として小規模宅地の特例を受けるには、配偶者以外が取得する場合、取得する別居親族は、相続開始前3年以内に自宅を所有していないことと、相続開始からの申告期限まで継続保有すること等が必要であるため、同居していなくてもこれらの要件を満たせば適用可能(家なき子特例)。
ただし、二次相続が発生するまで二男はキャッシュフローを得ることができないため、調剤薬局への賃貸料を原資とした長男から二男への代償分割も検討することが必要と思われる。

●FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、法令の遵守(コンプライアンスの徹底)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)、能力の啓発の6つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・事業承継対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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