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2022年2月13日実技part1

2022年2月13日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(70歳)は、電気機械器具製造業を営むX株式会社(非上場会社)の創業社長である。X社は、設立から40年近くが経ち、その技術力は取引先から高く評価され、業績は順調に推移してきた。X社の余剰資金は5億円以上あり、経営は安定している。
Aさんは、昨年体調を崩し、入退院を繰り返したこともあり、専務取締役の長男Cさん(45歳)に事業を承継し、第一線から退く決意をした。長男Cさんは、昨年、Aさんが不在のときも問題なく経営を代行し、社員からの人望も厚く、後継者として何ら心配していない。ただ、長男CさんにX社株式をどのように移転するのがよいのか悩んでいる。Aさんは、経営者仲間だった知人が、事業承継にあたり、事業承継税制と遺留分に関する民法特例を活用した話を聞き、その仕組みと手続について知りたいと思っている。
Aさんと妻Bさん(70歳)には、長男Cさん以外に2人の子がいる。Aさんは、それぞれに相応の資金援助をすることによって、長男Cさんに事業を承継することについて理解を得たいと考えている。
長女Dさん(40歳)は、会社員の夫と2人の子の4人で借上げ社宅に暮らしており、そろそろ住宅を購入したいと思っているが、今後の教育費の負担を考え、購入をためらっている。Aさんは、所有している賃貸アパートを長女Dさんに譲れば、その家賃収入が助けになるだろうと考えている。勤務医である二男Eさん(36歳)は、妻との2人で賃貸マンションに暮らしているが、まもなく第一子が誕生する予定である。
Aさんは、子3人の仲は悪くないと感じているものの、相続が起こった際に遺産分割でもめることのないように、何らかの準備はしておきたいと思っている。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
1.現預金 : 1億8,000万円(退職金予定額1億円を含む)
2.X社株式 : 5億円
3.自宅
 (1)土地(280u) : 7,000万円
 (2)建物(築10年) : 2,000万円
4.X社本社土地(400u) : 1億4,000万円(注)
5.賃貸アパート
 (1)土地(250u) : 5,000万円
 (2)建物(築20年、8室) : 3,000万円(年間収入約800万円)

合計 : 9億9,000万円
※Aさんの相続に係る相続税額は、約3億3,000万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。
(注)X社は土地の無償返還に関する届出書をAさんと連名で税務署に提出し、Aさんに通常の地代を支払っている。

【X社の概要】
資本金 :2,000万円
会社規模:大会社
従業員数:110人
売上高 :30億円
経常利益:3億円
純資産 :8億円
株主構成(発行済株式総数4万株):Aさん100%
株式の相続税評価額:類似業種比準価額12,500円/株、純資産価額20,000円/株
※X社株式は譲渡制限株式である。

【Aさんの家族構成】
妻Bさん(70歳) :専業主婦。Aさんと自宅で同居している。
長男Cさん(45歳):X社の専務取締役。妻(44歳)と子(16歳)の3人で戸建て住宅(持家)に住んでいる。
長女Dさん(40歳):パート従業員。会社員の夫(40歳)と2人の子(15歳、12歳)の4人で借上げ社宅に住んでいる。
二男Eさん(36歳):勤務医。妻(30歳)との2人で賃貸マンションに住んでいる。まもなく第一子が誕生予定である。

【親族関係図】

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part1 ポイント解説

1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策

(1) 生命保険・金庫株の活用
(2) 役員退職金支払い(法人税の低減、退職所得控除による所得税低減効果も有り)
(3) 自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
(4) 小規模宅地の特例の活用
(5) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度の活用

2. 遺産分割対策・資産承継対策

(1) 遺言の作成
(2) 遺留分に関する民法の特例の活用
(3) 相続時精算課税制度・直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度の活用
(4) 孫への教育資金贈与の非課税措置の検討
(5) 配偶者居住権の設定

3. 事業承継税制の特例の活用の留意点

X社株式については、非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度の活用により、全株式を税負担なく移転可能(納税猶予割合100%)

ただし、非上場株式等についての贈与税の納税猶予・免除を受けるには、会社・後継者(経営承継受贈者)それぞれの適用要件を満たした上で2023年3月31日まで(2022年4月以降は2024年3月31日まで)に特例承継計画を都道府県知事に提出して確認を受け、経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の認定を受けることが必要(株式の贈与は2027年12月31日までに実施)。

本問の場合、長男には資質に問題はなく、一定の経営代行経験もあることから、早めに特例適用の準備を進めていくことを提案する。

4. 遺留分に関する民法の特例の活用の留意点

CさんがX社を承継することにより、妻Bさん・長女Dさん・二男Eさんの遺留分を侵害してしまう可能性が高いため、まずは遺留分に関する民法の特例を活用し、後継者に生前贈与された自社株式について、遺留分算定基礎財産価額に算入する価格を固定する固定合意や、後継者に生前贈与された自社株式を、遺留分算定基礎財産価額に算入しない除外合意を行うことを勧める。

ただし、合意後に後継者が対象株式を譲渡したり、対象会社の代表者を退任した場合には、後継者以外の推定相続人は、他の推定相続人と共同して合意を解除したり、後継者に対して金銭の支払を請求する等の、あらかじめ合意時に定められた措置をとることが可能。

つまり、合意時は対象会社の安定的な存続を目的に、後継者以外の推定相続人は除外合意・固定合意をしているため、株式の譲渡や代表者の退任により、合意時と異なる状況となった場合には、合意の解除や金銭支払い等により後継者以外の推定相続人にも公平な遺産分割となるように、あらかじめ合意時に取り決めておくことが、経営承継円滑化法上に定められている。

本問の場合、長男は事業承継後もX社の経営を継続して担っていく可能性が高いが、合意後にM&A等が発生した場合には、著しく長男に偏った生前贈与となってしまうため、合意の解除や金銭支払い等、合意時にあらかじめ取り決めておくことが必要である。

5. 相続人間の平等な相続方法

長男は遺産の大部分を占めるX社株式を受け取ることになるため、妻と子2人の相続配分を検討することが必要になる。

妻BさんについてはAさんの相続発生後も確実な住まいと収入源の確保のため、自宅土地・建物とX社本社土地を相続させる。
小規模宅地の特例は、特定居住用宅地で330u、特定事業用宅地や特定同族会社事業用宅地等で400uまで完全併用可能であり、最大730uまで80%減額可能。
ただし、特定同族会社事業用宅地等は、相続税の申告期限においてその法人の役員であることが必要であるため、妻BさんにはX社の役員に就任させておくことが必要となる。

また、住宅の購入希望がある長女Dさんには、直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度や教育資金贈与の非課税制度により計画的に生前贈与を実施し、相続時には賃貸アパートを相続させることで、安定的な収入が得られるようにする。

さらに、勤務医であり第一子が誕生予定である二男Eさんには、現時点で収入面ではそれほど不安は少ないと思われるため、直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度や教育資金贈与の非課税制度により計画的に生前贈与を実施し、相続時には現預金を中心に相続させることが適当と思われる。

●FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、法令の遵守(コンプライアンスの徹底)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)、能力の啓発の6つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な所得税・相続税の軽減対策・資産承継対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

◆この試験問題の公開体験談

【note】melody (2022/2/13)FP1級実技レポートPART1

【note】はいはい 2022年2月13日 FP1級実技 part1

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