問59 2022年5月応用
問59 問題文
《設例》の〈Aさん(白色申告者)の2021年分の収入等に関する資料〉に基づいて、次の(1)〜(3)のAさんの2021年分の所得金額を、それぞれ求めなさい(計算過程の記載は不要)。〈答〉は万円単位とすること。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。また、Aさんは所得金額調整控除の適用対象者に該当していない。
(1)総所得金額に算入される一時所得の金額
(2)雑所得の金額
(3)総所得金額
問59 解答・解説
総所得金額に関する問題です。
総所得金額は、大雑把に言うと、総合課税の所得を合計し、損益通算した後の金額です。
本問では、給与所得と不動産所得、雑所得(老齢基礎年金・確定拠出年金の老齢給付・個人年金)、一時所得(平準払養老保険の満期保険金)は全て総合課税の対象ですが、一時払の終身保険や変額個人年金保険の解約返戻金や、株式の譲渡所得は分離課税のため、総所得金額には含めません。
※一時払の養老保険や個人年金保険・変額個人年金などを契約から5年以内に解約(満期による契約満了含む)した場合、金融類似商品として受取差益に20.315%の源泉分離課税となります(復興特別所得税を含む)。
ただし、金融類似商品の対象条件の一つとして、死亡保険金額が満期保険金額の一定倍率以下とされていますので、満期のない終身保険は該当しません。
従って、一時払終身保険を5年以内に解約した場合、解約返戻金は一時所得の収入金額として総合課税の対象です。
また、一時所得同士は内部通算できるため、本問のようにある保険で損失が出た場合に、総合課税の対象となるものであれば、別の一時所得となる保険の差益から差し引くことが可能です。
さらに、一時所得は、総所得金額を算出する際に、その2分の1が合算対象です。
よって本問の場合、一時払終身保険の解約返戻金と、契約から解約まで5年超である平準払養老保険の満期保険金が、一時所得の収入として総合課税の対象です。
一時所得=収入額−収入を得るために支出した額−特別控除50万円 ですので、
一時所得=(970万円+850万円)−(1,000万円+700万円)−特別控除50万円=70万円
よって、(1)総所得金額に算入される一時所得の金額=70万円×1/2=35万円
次に、雑所得は公的年金等によるものと、その他の雑所得とで分けて計算します。
本問では老齢基礎年金と確定拠出年金が公的年金等に該当し、個人年金はその他の雑所得に該当します。
公的年金等の雑所得=年金収入−公的年金等控除額ですが、65歳以上で受け取る公的年金は、年110万円までは公的年金等控除により所得ゼロとなります。
Aさんの年金収入の合計は、老齢基礎52万円+確定拠出30万円=82万円<110万円 ですので、公的年金等の雑所得は0円です。
その他雑所得=収入額−収入を得るために支出した額
=個人年金100万円−必要経費60万円=40万円
よって、(2)雑所得の金額=公的年金等の雑所得0円+その他雑所得40万円=40万円
次に、不動産所得=不動産収入額−必要経費 ですので、
Aさんの不動産所得=600万円−680万円=▲80万円となっており、不動産・事業・山林・譲渡所得の損失は、給与所得や一時所得等の他の所得と損益通算できます。
ただし、不動産所得の損失のうち、土地取得に要した負債の利子相当部分は、他の所得と損益通算できません(建物取得用なら損益通算可)。
つまり、借金して土地を購入した場合、その年は収入より支出が上回って不動産所得が損失となっても、借金の利子分は損益通算の対象外ということです。
よって、土地取得に要した負債の利子20万円は、不動産所得の損失▲80万円から除かれ、▲60万円となります。
ここで、所得税の損益通算は、経常グループ(利子・配当・不動産・事業・給与・雑)と、臨時グループ(譲渡・一時)の各グループ内で損益通算し、控除しきれない損失は各グループ同士で控除し、その後は山林⇒退職の順に控除していきます。
さらに、山林所得の損失は、経常⇒臨時⇒退職の順番に控除します。
以上により、
経常グループの損益通算=給与所得+不動産所得+雑所得
=1,300万円+▲60万円+40万円
=1,280万円
総所得金額=1,280万円+総所得金額に算入される一時所得の金額
=1,280万円+35万円=1,315万円
以上により正解は、(1)35(万円) (2)40(万円) (3)1,315(万円)
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